沖縄県の翁長雄志知事は23日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画を巡り、移設関連作業を1週間以内に停止するよう、沖縄防衛局に指示したと発表した。
従わない場合は、埋め立てに必要な岩礁破砕許可を取り消す意向も表明。
国は法的な問題はないとして作業を続ける考えで、両者の対立は決定的となる。
国が停止指示に応じなかった場合には「腹は決まっている。(岩礁破砕の)許可を取り消すことになると思う」と述べた。
取り消しの根拠は、県の岩礁破砕許可条件行使と見られる。
それはさておき、気になっていた日本の写真家であり現代美術家の杉本博司(1948年2月23日 -)を総括してみよう。
「ポストモダン時代を経験したポストモダン以前のモダニスト」を自認する。
あらためて、略歴からみてみよう。
東京都台東区旧・御徒町出身の写真家。
東京及びニューヨークを活動の拠点としている。
作品は厳密なコンセプトと哲学に基づき作られている。
8×10の大判カメラを使い、照明や構図や現像といった写真の制作過程における技術的側面も評価されている。
1976年に『ジオラマ』シリーズを制作して以降、『海景』『劇場』『ポートレート』『蝋人形/恐怖の館』『陰翳礼讃』『建築』など、今日まで制作が続くシリーズを発表し続けている。
一貫して個人の存在を超えた時間の積み重なりや流れをとらえるためのコンセプトや方法を模索している。
■コンセプト
杉本が渡米した1970年代頃のアメリカでは、メディアにおける映像の氾濫により現実が変容した状況が指摘されていた。
「あるがままの世界」を写すというストレートフォトグラフィの理念の失効や、ピクトリアリスムの再評価が主張されるなど、写真においてもモダニズムが問い直されポストモダニズムが勃興する時期だった。
彼はストレートフォトグラフィとピクトリアリスムの対立に対しては、技法では構図や照明の計算により絵画的な画面を実現しピクトリアリスムに接近している。
しかし一方で「ポストモダン時代を経験したポストモダン以前のモダニスト」を自認するなどモダニズムの立場に立ち続けている。
「真実らしさで満ちている世界では、写真が真実を写し出すことはない」としつつも、「写真には嘘をつかせない」というモダニズムの倫理を守ろうとしている。
写真に何かを足したり引いたりして写真に嘘をつかせないために、彼は明らかに人為的で嘘とわかるジオラマや蝋人形を撮影したり、「陰翳礼讃」や「劇場」シリーズのように表象不可能な「時間」を撮影しようとする。
■ジオラマ・蝋人形
最初のシリーズの『ジオラマ』では、ニューヨークのアメリカ自然史博物館の古生物や古代人を再現したジオラマを撮った。
片目を閉じた「カメラの視覚」のもとでは、両目で見ると模型だと分かるジオラマが遠近感の喪失によりリアルに見える、という発見からこのシリーズは始まっている。
精巧なジオラマを本物に見えるよう注意深く撮ったシリーズは、「写真はいつでも真実を写す」と考えている観客には一瞬本物の動物や古代人を撮ったように見えてしまう。
1999年からのシリーズ『ポートレイト』では、マダム・タッソー蝋人形館にある偉人たちや有名人たちの蝋人形を、16世紀の絵画をほうふつさせる照明で撮影し、あたかも生きた本人を撮影したかのような作品に仕上げた。
これらのシリーズは、迫真性をもって撮りながらその写すものは偽物であるということを示す一方で、時間を超えた存在を写すという主題にもつながっている。
■時間
杉本の作品シリーズには、厳密なコンセプトを立ててそれを実現するというコンセプチュアル・アートの影響がある。
人間の見ることのできる共通・普遍の風景を模索した結果、海の水平線へと至り、世界各地の海や湖で同じ風景を撮影してくるというシリーズが始まった。
『海景』のシリーズは「人類が最初に見た風景は海ではなかっただろうか」「海を最初に見た人間はどのように感じたか」「古代人の見た風景を現代人が同じように見ることは可能か」という問題提起を立てている。
大判カメラですべて水平線が中央にくるように(空か海を大きめに取って余計な意味を付加させないよう)撮影された白黒写真のシリーズは、同じ構図を延々と繰り返し制作することにより、個別の海という同一性を奪われる。
闇の中の一本の和蝋燭が燃え尽きるまでを露光した『陰翳礼讃』は、光の帯と影だけという写真の最小限のものだけを写し取った。
『劇場』シリーズは映画を撮影したもので、アメリカ各地の古い劇場やドライブインを訪れ、映画上映中の時間フィルムを露光し、その結果真っ白になったスクリーンとスクリーンに照らされた劇場内部が写っている。
時間の経過によって、「物語」という人為的な不純物の集積が光に蒸発したさまが撮られている。
■観念
『建築』では、人類にとって未曾有の体験であり、生活を大きく変えたモダニズムの誕生と展開を検証しようとするものである。
世界の記念碑的なモダニズム建築を、焦点を無限遠の2倍にして撮影したもので、ぼやけた結果、建築家が現実に妥協した結果付け加わったディテールや夾雑物が取り除かれ、建築家が頭の中で最初に構想したフォルムだけが残されている。
モダニズムの検証というテーマでは、京都服飾文化研究財団が所蔵する近現代の服飾作品を着せたマネキンを撮影した『Stylized Sculptures』シリーズがある。
『Lightning Fields』では、放電現象により生のフィルムの上に像を結ばせたものである。
初期の写真術であるカロタイプを途中まで開発していたウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットが、フランスのダゲレオタイプ開発に対抗し、電磁誘導の実験を中断してカロタイプの研究を再開した故事に基づき、電磁誘導実験を21世紀になって引き継ぎ撮影するというもの。
☆☆☆やんジーのつぶやき
官能を刺激し続ける杉本の作品は、苔のむすまで注目していたい。