S,M,L,XL /Rem Koolhaas



世界的に活躍する建築家の主著がついに邦訳された。
背表紙の厚さが約8センチに及ぶ巨大な原著は辞書のような作品集であり、文字と図版の組み合わせも斬新。



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モノとしてカッコいいために、どこのデザイン系の事務所に行ってもこの本があった。
が、著者はすぐれた書き手でもある。
かつてル・コルビュジエが膨大な著作を通じてモダニズムの理念を広げたように、20世紀末以降、コールハースの論考が大きな影響を及ぼしている。






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現在、グローバル都市やショッピングモールの商業空間を論じることは珍しくなくなったが、いち早く目をつけたのは彼だろう。
獰猛な資本主義が空間をいかに変容させるか。
従来の良識的な建築家はそれを非人間的だと批判し、懐古的になるのに対し、コールハースはあえて否定せず、むしろそれがもたらす新しい現実を直視し、挑発的な建築・都市論を提示する。





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さて、今回の邦訳は、著者の意向からいきなり文庫として出版された。
原著『S、M、L、XL』の装丁を維持した日本語版は困難と判断し、コールハースお気に入りの日本のコンパクトな本の形式を選び、図版を外して、文章中心の本に変えたという。

すなわち、XLの原著からSサイズの文庫版である。
その際、原著以降の主要な論考を幾つか加え、思想家としての彼に焦点を当てた。
邦訳された文章を通読すると、都市の観察と調査にもとづくノンフィクションでありながら、巧みな表現によって、SF小説を読んでいるような気分になる。
建築が巨大化すると今までのデザイン手法が無効になるという「ビッグネス」、歴史保存と解体が同時進行する「クロノカオス」ほか、「ジェネリック・シティ」、「ジャンクスペース」など、新しい概念を示す言葉や造語も豊富だ。







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シンガポール、ドバイ、ラゴス、アトランタ、そして東京など、急激な都市化や開発が続く場所、あるいはスマートシティ、ソビエトやベルリンの壁などに出現した人工的な空間をとりあげ、彼は「建築家」の終焉や近代的な都市計画の不可能性を指摘する。







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本書はユートピア的な都市計画を提案したメタボリズムの建築運動に言及しているが、最近、その中心メンバーである黒川紀章の伝記『メディア・モンスター』も刊行された。
日本でもっとも有名だった建築家の知られざるエピソードも拾いながら、ていねいにまとめた労作である。






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彼がメディアを利用し、晩年まで建築家として本気で東京を改造しようとしたことがうかがえるだろう。
だが、もはや一人のスター建築家が巨大都市を計画することは不可能だった。
ここに両者の認識の違いがある。
コールハースは建築家もさらに変容する未来を見据えている。

(2015.06.14朝日新聞〈評〉五十嵐太郎より抜粋)






あらためて、レム・コールハースについてみてみよう。


レム・コールハース(Rem Koolhaas、1944年11月17日 - )は、オランダのロッテルダム生まれの建築家、都市計画家。
ジャーナリストおよび脚本家としての活動の後、ロンドンにある英国建築協会付属建築専門大学(通称AAスクール)で学び建築家となった。
彼は自分の建築設計事務所OMA(Office for Metropolitan Architecture)とその研究機関であるAMOの所長である。
またハーバード大学大学院デザイン学部における“建築実践と都市デザイン”の教授でもある。





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彼は実際の建築物より著作物の方が知られている。
代表作である『錯乱のニューヨーク』や、1995年にグラフィックデザイナーのブルース・マオと競作した『S,M,L,XL』など、建築理論に関する影響力の強い本は有名である。

『錯乱』で「マンハッタニズム」という都市理論を提唱し、摩天楼が具体的な例として取り上げた。






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彼は建築作品や著作物において、一方では建築の素材を生かすこと・ヒューマンスケールの維持・注意深く練られた建築意図などヒューマニストとしての理想を守るために戦うという規範を守ろうとしている。
しかし他方では、物質経済・人間のサイズをはるかに超えたスケールの建築・雑然とした設計意図の建物の乱立など、急速にグローバル化する資本主義社会の流れに興味を持ち、この流れに身を任せようという規範も持っている。
この正反対の規範が起こす矛盾を、断固許容しようという姿勢を彼は貫いている。






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2003年には『content』という安価な雑誌形式の本が出版され、過去十年間のOMAのプロジェクト、試み、動向、そして世界的な経済発展を振り返る内容となっている。






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コールハースは調査と図表を賢明に用いることによって、前例の無い形状や関係へと突き進む都市の絶対的な力について、現代社会の文脈に沿ってまとめている。
プラダのような大規模なブランドを例にして「ショッピング」を知的満足として考察する一方で、珠江デルタなど現代中国の諸都市の無秩序な状態や密集化は「パフォーマンス」、すなわち密度、新しさ、形、大きさ、金銭等の議論の余地ある確実性を伴った変数を含む基準によって分析される。






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容赦ない生の取り組みを通して、コールハースは建築家を死滅した職業という不安から引き抜き、一瞬でも現代の極致に復活させることを望んでいる。
また、1986年のモルガン・スタンレー銀行設計競技(敗退)以降、クンストハルや中国中央電視台本部ビル、サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2006など、セシル・バルモンドとの協働が続いている。







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(wikipediaより抜粋)









☆☆☆やんジーのつぶやき
ル・コルビュジエなきあとの20世紀末におけるコールハースの建築理論の影響力は計りしれないものがある。
急速にグローバル化する資本主義社会の流れに身を任せつつ、彼の言葉に耳をかたむけてみるのも一興。



























































































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by my8686 | 2015-06-15 14:57 | 気になる本 | Trackback(1) | Comments(0)

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