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今こそイタロ・カルヴィーノ

今週はノーベル賞週間。
日本人受賞の可能性も注目される。
第2次世界大戦から「戦後70年」の節目の年で、それが文学賞の選考にどう影響するのか。

世界文学のスタンダードをもう一度考えなおす良い機会となるだろう。

日本と同じく敗戦国だったイタリアで、戦後すぐから活躍した作家イタロ・カルヴィーノにヒントがあるという。



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あらためて、その内容をみてみよう。


大戦後の混迷するイタリア史の中で、文学者として自分の経験の発信の仕方を考えながら書き続けた作家は、急逝しなければ文学賞を受けたとも言われ、敬愛する人は今も多い。

現代イタリアを代表する知識人で、世界的ベストセラー『薔薇の名前』を書いたウンベルト・エーコもその一人。
20年前に米コロンビア大学であったヨーロッパ解放記念行事で、ムッソリーニ政権下の自らの少年時代を振り返りながら、ナチズムは一つしか存在しなかったが、ファシズムは新たな形で現れてくると警告し、指弾する義務がその脅威を知る者にはあると語った(『永遠のファシズム』)。




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エーコが知識人の先達としたカルヴィーノは9歳年上。
大戦末期にファシズムに対抗するパルチザンに参加。
英雄と称えられていた彼らを批評的に捉え、森の寓話のように書いた「くもの巣の小道」で評判を得て、共産党の機関紙などで活動した。
しかし1956年、ブダペストで起きた市民革命をソ連軍が弾圧したハンガリー動乱をきっかけに、ソ連を支持したイタリア共産党を離党する。




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イタリア文学が専門の和田忠彦東京外語大教授は、「一生をかけるに値すると信じた共産党に裏切られた。なぜ自分が間違ったのか。その問いかけの上にカルヴィーノ作品は成り立っている」と語る。

代表作「木のぼり男爵」が端的に表すと指摘。
「主人公は木の上で一生を過ごし、食事も恋も全部木の上ですます。現実社会と距離があっても、作家の想像力は世界を理解できるというメッセージだ」




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カルヴィーノ作品は軽やかなユーモアがありながら辛辣。
戦争で敵の砲弾をあび、「善」と「悪」の二つの体になった子爵が故郷に帰っておこす事件を描いた「まっぷたつの子爵」や、甲冑の中身は空洞である中世の騎士を描いた「不在の騎士」などは、奇想天外だが人間の本質をつく。
他にもマルコ・ポーロが架空の都市を語る「見えない都市」など、作品ごとに文体を変える作風は、戦後の文学史で異彩を放つ。




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「カルヴィーノみたいに書きたい」と作家のいとうせいこうさんは話す。
「リアリズム、懐古的、童話的、寓話的。文体が違うので一見難解だが一人の作家によるヨーロッパ文学全集だと思えばいい」





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カルヴィーノに限らず、ガルシア・マルケスやオルハン・パムクなど、世界文学の優れた書き手たちが、政治と関わり合うのは当たり前とも指摘。
人間の普遍性を描くなら、社会や政治を書くことになる。
「80年代以降の日本では政治を書くことはダサイと思われてきたが、権力構造がむき出しになった東日本大震災をきっかけに、作家も書かざるをえなくなった」





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第1次世界大戦中の100年前、ノーベル文学賞を仏のロマン・ロランが受けた。
受賞理由となった「ジャン・クリストフ」の中で「知識階級は政治家らを軽蔑し、政治家らは知識階級を軽蔑していた」と書いた。
反戦思想を貫いたがゆえに、祖国では反抗者と見られた。
近年にないほど政治的関心が高まる日本。
文学との関係の深まりで、多くの世界基準の文学の誕生が期待される。






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(2015.10.05朝日新聞より抜粋)






☆☆☆やんジーのつぶやき
「戦後70年」節目の年、イタリア文学に注目してみよう。





























































by my8686 | 2015-10-05 14:04 | 徒然なるままに | Trackback | Comments(0)