今年2016年、生誕90年を迎える“モダンジャズの帝王”に捧げるトリビュート盤と初の自伝映画サントラが発売された。
土曜日、雨の休日の朝は、この話題をあらためてみてみよう。
マイルス・デイビス生誕90年にして没25年のメモリアル・イヤーとなる2016年、新たな記念碑的プロジェクト2作品が発売された。
マイルス初の自伝的映画『マイルス・アヘッド』のサウンドトラックが4月27日。
そしてグラスパーが手掛けるリミックス最新作『エヴリシング・イズ・ビューティフル』が5月25日に日本先行発売となった。
新世代ジャズ・シーンで鮮やかな活躍を続けるロバート・グラスパーが、マイルス・デイビスの音世界を再創造した『エヴリシング・イズ・ビューティフル』はマイルス・デイビス&ロバート・グラスパー、ダブル名義での発売。
グラスパーが米コロンビア・レーベルのテープ保管庫でセレクトしたマイルスのオリジナル録音をベースにリミックスした意欲作で、今作について以下のようにコメントしている。
「単なるリミックス・アルバムにはしたくなかった。マイルスがどれだけ人々に影響を与え、新しいアートを生み出す源になったのかを伝えたかったんだ。僕たちは今もマイルスのスピリットの中に生きている」
さらに、マイルスの遺伝子を受け継ぐ多彩な顔ぶれのアーティストたち=ビラル、イラ・J、エリカ・バドゥ、フォンテ、ハイエイタス・カイヨーテ、ローラ・マヴーラ、キング、ジョージア・アン・マルドロウ、スティーヴィー・ワンダー、そして実際にマイルスのバンドでも演奏していたギタリスト、ジョン・スコフィールドが参加。
マイルスのオリジナル音源が曲ごとにグラスパーの自由な発想でサンプリングされ、新鮮な驚きが溢れるアルバムが完成した。アートワークはアメリカ現代アート界の旗手フランシーヌ・タークの書き下ろしで、グラスパーがマイルスの音楽を自由にコラージュしたアイディアにインスパイアされている。
もうひとつの作品は、4月1日からアメリカで公開となるマイルス初の自伝的映画『マイルス・アヘッド』のサウンドトラック。
マイルスが一時的に音楽界から引退していた1979年を軸に描かれ、ドン・チードルが主演・脚本・監督を務めている。
ロバート・グラスパーが音楽監督の一人としてクレジットされており、果たしてどんなサウンドが完成するのか?と熱い注目を集めている作品だ。
全24曲76分を越える長時間収録のサントラには、1956年から1981年に発売されたマイルスの代表的ナンバー11曲と、ロバート・グラスパーが映画のために書き下ろした新録5曲が、ドン・チードルの劇中台詞とともに収録されている。まさに、グラスパー・セレクトによる21世紀版マイルス・ベストといってもいい内容に仕上がっている。
特にドン・チードル演じるマイルス・デイビスが、グラスパー、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ゲイリー・クラークJr.、エスペランサ・スポルディング、アントニオ・サンチェスという今の音楽シーンを牽引する豪華アーティストたちと架空の共演を果たした「ワッツ・ロング・ウィズ・ザット」は、マイルスの精神が今も受け継がれていることを証明する象徴的なナンバーとなっている。
映画本編中の演奏シーンで実際にトランペットを吹いているのは、ディアンジェロとの共演でも知られるキーヨン・ハロルド。そして、エンド・タイトルに流れる「ゴーン2015」ではラッパーのファロア・モンチをゲストに迎えている。
映画『マイルス・アヘッド(原題)』は日本公開12月を予定している。
ピアニストとしてプロデューサーとして、自身のトリオと<エクスペリメント>を率いて、R&B~ジャズ~ヒップホップというジャンルの境界線を超越するグラスパー。
若い才能にオープンで変化を恐れない革新的なスピリットをもつマイルス。もしマイルスが生きていたら、共通の志をもつイノベーターの2人はきっと共演していたに違いない。
幻のコラボレーションを聴きながら、改めてマイルスの音楽の懐の深さを思い知る。
☆☆☆やんジーのつぶやき
映画『マイルス・アヘッド』の公開が楽しみである。
学生時代、モダンジャズの洗礼を受けたのが、映画「ジャックジョンソン」のサウンドトラック版のマイルスサウンドだった。学生寮の狭い部屋で聴いた、あの時の鳥肌だった記憶が、今も鮮明に蘇る。