「ブラジルの隈研吾監修木組みゲート」を読み解く

ブラジル・サンパウロの目抜き通り「パウリスタ通り」に5月6日、「ジャパン・ハウス サンパウロ」が開館した。

隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修を務めた。約36mに渡って建物を覆うヒノキ材のゲートが特徴。木組みのゲートは既存建物に設置したものだが、全体として自立する構造体でもあるという。



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あらためて、その内容を読み解いてみよう。


 「ジャパン・ハウス」は、外務省が日本文化を発信する海外拠点として複数整備する施設で、サンパウロがその第1弾に当たる。サンパウロ以降は、2017年度中の開館を目指して英国・ロンドン、米国・ロサンゼルスでも同様の施設整備を予定している。隈研吾建築都市設計事務所は15年夏、創設・運営を担当する電通、設計・施工を担当するブラジル戸田建設などとチームを組んで参加したコンペで、サンパウロのプロジェクトを勝ち取った。

隈研吾氏は、「日本が発信できる一番強いものが、木材だと思った。日本の木材と言ったらヒノキ。質感や香りをブラジルの人に感じてもらいたい」と力を込める。
多目的ホールやセミナールームのほか、日本の伝統工芸品を扱うショップ、和菓子などを提供するカフェ、日本食レストランなどから成る。現地の銀行が所有するビルの地上1階から3階までの一部を改修し、木組みのゲートのほか1階に外土間や坪庭、3階にテラスなどを整備した。





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木組みのゲートは主に、30mm厚のヒノキの板材約620枚を組み上げたものだ。1カ所で地面に接地し、2階レベルの外壁の一部で建物の躯体と接続している。
板材の長さは主に3600mmで、幅は165mmと150mmの2種類を使った。板材が最も深く重なる箇所は、既存建物に向かって奥行き方向に37層にも及ぶ。縦材と水平材はすべて、斜めにかん合している。

 「既存の建物の前にかすみのようなスクリーンをつくるイメージで、薄い材を組み合わせていくことを考えた。繊細さと構造性が両立するという手法は、ほかの国にはない日本らしさだ」(隈氏)






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通りに向かって板材を斜めにかん合することは構造的には不利に働くが、隈氏は「薄い材1つひとつの粒感」を表現することにこだわった。通りからの見え方に加えて、開口部越しの内部からの見え方にも配慮し、意匠と構造の双方向から板材の重なり方を丹念に探っていった。

木組みのゲートの構造設計を担当した江尻建築構造設計事務所の江尻憲泰代表は、「何万m2もの建物と同じくらい解析を繰り返した」と振り返る。




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内部から見た木組み。通りからの見え方に加えて、内部からの見通し具合も同時に検討した
検討が繰り返された理由の1つに、現地の風速の厳しさがあった。東京23区では基準風速34m/秒だが、ブラジル基準では40m/秒。現地の風速に対応するため、地面との接地部分はコンクリートスラブから鋼製板を立ち上げ、その上部に比重の高い南洋材のクマルをかん合して強度を高めた。クマル材は現地で調達した。

「意匠と構造、さらに施工を見越した検討を進めていくなかで、鉄、現地のクマル材、日本のヒノキ材という素材のグラデーションが生まれていった」(江尻代表)

木組みのゲートの足元。鉄製のアンカーボルトにクマル材をかん合し強度を持たせた。上にいくにつれヒノキ材を増やしている(資料:隈研吾建築都市設計事務所)

さらに炭素繊維ロッドの採用がプロジェクトを一気に動かした。片持ちになっている箇所などを中心に炭素繊維ロッドを架け渡し、変形を抑えている。




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意匠性と構造性を両立するデザインが決まった後、プレカットした板材をいったん日本で組み上げて最終確認した。ヒノキの板材1枚1枚に番号を振ってバラし、現地へ搬入。現地では、日本の職人が組み上げて完成させた。建て方には約2週間を要した。

隈氏は「大宰府のスターバックス(2011年竣工)もサニーヒルズ(2013年竣工)も60mm角の木組みだったが、今回は30mm厚に踏み込んだ。原理の感触もつかめた。次は、建築を丸々つくることに挑戦してみたい」と展望を語る。





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木組みのゲートをくぐった外土間の2階外壁は、ブラジル北東部で見られる「コボゴ」から着想を得たオリジナルのブロックで装飾した。隈氏は、「ブラジルの粗さを僕なりに解釈したうえで、日本の繊細さを付け加えた。日本とブラジルの技術の合作でもある」と説明する。

コボゴとは、沖縄の「花ブロック」のように日射を遮りながら風を通すブロックのことだ。オリジナルのブロックは超高強度繊維補強コンクリート製で、700mm角のユニットの端部を隣のユニットの上に重なるパターンとすることで継ぎ目を感じさせずに“面”をつくり出すよう工夫した。

内装の間仕切りや化粧天井には、エキスパンドメタルで和紙をすいたスクリーンを使用した。



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内部の建具などにも日本らしさをちりばめた。エキスパンドメタルで和紙をすき上げ、その質感を残したまま乾燥させた材料を間仕切りや化粧天井材に採用している。「陽の楽屋」(新潟県柏崎市、2000年竣工)などでコラボレーションしてきた和紙職人の小林康生氏が現地入りし、現地の職人とワークショップを開くなどして製作。

「金属が和紙をまとうことで突然、柔らかくて人に優しい質感になるのが面白いと思った」(隈氏)

ジャパン・ハウスの総合プロデューサーは日本デザインセンターの原研哉氏が担当している。
今年度中の開館を予定しているロンドンはワンダーウォールの片山正道氏、ロサンゼルスは乃村工芸社の小坂竜氏、SANDWICHの名和晃平氏がそれぞれデザインを担当する。ロサンゼルスの事業プロデュースにはJTQの谷川じゅんじ氏が参画している。





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☆☆☆やんジーのつぶやき
大宰府のスタバに代表される木組みされた集積のボリューム感とリズム感に官能が酔った記憶がある。研ぎ澄まされたコンクリート打放の無機質な壁に羨望したあの時期から、時は大きく様変わりしたようだ。



























































































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by my8686 | 2017-05-10 11:45 | 挑発する建築&空間 | Trackback | Comments(0)

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