日産自動車は6日、全面改良した電気自動車(EV)「リーフ」を公開した。環境規制の追い風を受けるEVは車づくりを変える潜在力を持つが、消費者が受け入れるかはまだ未知数。
本格的普及を狙って投入するリーフの成否は、今後を占う試金石となる。
6日、千葉市の幕張メッセで、日産の西川社長は「世界が本格的にEVへ動き出した。このタイミングで届けられるのはすばらしいチャンス」と述べた。日本では10月2日から、来年1月からは世界の60以上の市場で販売する。
2010年発売のリーフは累計約28万台を販売し、世界で最も売れているEVである。
ただ、カルロス・ゴーン会長が当初描いた目標には及ばなかった。EVに本腰を入れる自動車大手が少なく、価格の大半を占める電池の費用削減があまり進まなかったのが誤算だった。
だが、ここにきて米国、中国、欧州でEVの普及を促す政策が相次いで打ち出され、独フォルクスワーゲンなどの大手も大胆にEVに軸足を移し始めた。高級EVで急成長する米テスラも市場の可能性を広げた。
初の全面改良となった新型リーフには、日産が7年間集めた利用者の声を反映させた。
1回のフル充電で走れる航続距離は初代モデルの2倍の400キロ。
価格は315万360~399万600円で、国の補助金40万円も受けられる。
15年に一部改良したモデルより約2万8千~13万5千円安く、部分的な自動運転機能などの先端技術を盛り込みつつ、価格は抑えた。日産の「打倒トヨタ」の悲願を背負う戦略車でもある。
1990年代の経営危機やルノーとの提携による再建期、日産はトヨタ自動車にハイブリッド車(HV)で先を越された。トヨタが重点を置かない分野から逆転しようと経営資源を集中させたのがリーフだった。
日産幹部は「ルノーという『黒船』が来て、しがらみを捨てた日産だからこそできた。成功しか知らない会社とは違う」と話す。
トヨタもEV開発を担う社長直轄組織を発足、8月に資本提携を発表したマツダとEVの基本構造の共同開発を進める。ダイハツ工業やスバル、提携協議中のスズキにも協力の範囲を広げ、巻き返す戦略を描く。
「ものすごく意識はしている」。新型リーフについてトヨタ幹部は話す。
一方で「少し時間をおいてもトヨタらしいEVを出した方が良い。それくらいの時間の余裕はある」。
新型リーフの売れ行きは、その「時間の余裕」を見定めるための重要な手がかりになる。
☆☆☆GGのつぶやき
EVのあのサイレンサーに違和感を感じるクルマ好きは多い。
鼓動という人間の野生に迫る躍動感を忘れることはできない。
欧州でもEV化は方向性の指標段階であるだけに、様子見のトヨタの出方が見ものでもある。