安倍晋三首相曰「かつて1990年代、新党ブームがあった。この新党ブームが生み出したものは何か。それは残念ながら政治の混乱と経済の低迷でありました。」
安倍首相は3日、栃木県鹿沼市での街頭演説でも「私が当選したころ、新党ブームだった。その結果は混乱と経済の低迷だった」と言及した。
首相が初当選したのは、1993年の衆院選。
その前年に細川護熙氏が結成した日本新党が新党ブームの火付け役になり、翌93年には政治改革などをめぐって自民党が分裂。新党さきがけや新生党も誕生し、同年8月の非自民・非共産の細川連立政権発足につながった。
だが細川政権は連立を組んだ党派の足並みの乱れや、細川首相による唐突な国民福祉税構想発表などで弱体化。8カ月後の94年4月に退陣した。
安倍首相はこうした経緯について9月30日の演説で「政治の混乱」と評した可能性がある。
ただ、安倍首相の言う「経済の低迷」はどうか。日本は当時、バブル経済の崩壊から立ち直れずにいた。
当時の日経平均株価をみると、89年12月に3万8915円の史上最高値を記録した。
しかし、宮沢喜一政権の92年8月には、バブル崩壊のあおりを受けて1万4千円台まで落ち込んだ。経済の低迷は、細川政権の発足前から始まっていた。
細川政権発足後の株価は、米国の景気回復などから回復し、一時は2万円台で推移した。
その後、一時1万6千円台まで下がることがあったものの、新生党の羽田孜氏が首相に就いた94年春ごろも2万円前後を保っている。
自民党が参加した村山富市政権では、再び一時1万4千円台に下落した。
新党の相次ぐ誕生と経済の低迷に直接の因果関係があるとは言えず、安倍首相の主張は正しいとは言えない。
☆☆☆GGのつぶやき
今回の衆院選で、政治家らの発言が事実に即しているか、誤りがないかの「ファクトチェック」を報道関係者は徹底させてもらいたい。
各党の党首や幹部らの記者会見や街頭演説などで、「内容は本当か」という疑問も解き明かしてもらいたい。
「ミスリードかもしれない」という印象を受けたりするような発言も聞き逃すべきではない。