書評『アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし』を読み解く

日曜の朝は、ベッドの中で書評を斜め読みするのが定例となった。老眼が進んで読書量が極端に減ってしまったが、気になる本はネットで図書館の蔵書を検索し貸出をする。気に入った本は別途購入して手元に置くこともあるが、基本的に整理して貯めない主義である。


そんな朝、久しぶりにウォーホルの名前に官能が反応した。
ウォーホルになりすました横尾忠則の語り口に思わず微笑んでしまった。





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あらためて、その書評を読み解いてみよう。



■アートってなんだと思う?

ボクはアンディ・ウォーホル。芸術家になるために前歴のイラストレーターを闇に葬って、見事芸術家になりすまして大成功した。ところが芸術家としての名声を手に、評価が決定的になった頃、かつての隠蔽していたイラスト作品を公開した。





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「この野郎!」と思ったのは評論家と学芸員だったろうな。というのは埋葬したはずのイラストを再発掘することで、逆にイラストを芸術作品として昇華させる作戦にでたからだ。ピカソが(若い内に成功しちゃえば、あとは何でもありさ)と言ったその教訓に従ったボクの作戦勝ちということさ。






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そんなボクのしたたかさを見せつけたのがこの絵本さ。出版社も読者もボクの戦略にまんまと騙されちまったよ。大方の人間はこの本のイラストはボクの1950年代のイラストレーター時代の作品だと信じているに違いない(笑)。ところがこれは63年作で、ボクはこの頃すでにミスター・ポップアートなんて呼ばれるスターになってたわけさ。






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あの有名な「ゴールド・マリリン・モンロー」やキャンベルスープ、コカコーラの反復作品、さらに……etcと挙げていくとキリがないさ。この事実に驚いただろう?





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この本のイラスト、いや絵だよね? とにかくよーく見てごらんよ。50年代のボクのイラストと違うだろ? ほら、この書評の書き手のYは「手抜きだよ、アンディ!」と言ったが、「その通り」だよ。だからさ、そのイラストはアートになっているんだよ。つまりYが指摘するように真面目に描くとイラスト、不真面目に描くとアートになるってことさ。ここんとこが面白いだろ? 判るかな?





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さて、本書の主人公は蛇。蛇皮会社がボクに依頼した本さ。ボクにはHigh & Lowの境界がないから通俗だって何だって区別がないんだ。成功者のボクには〈ねばならない〉という大義名分は通用しないさ。ボクは名士になるために社交界に出入りしながら、セレブのリストを増やしていったんだ。







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そんなある日、蛇皮会社の社長が人が嫌う蛇の絵を描ける画家としてボクに目をつけた。ボクって蛇に似てるじゃない? くねくねしてて。他のイラストレーターが描くとヘビメタ(笑)になっちゃうよ。こうして蛇の絵を引き受けたボクはセレブな人間や商品や場所に蛇になって侵入してなぐり描きの絵を描きまくったさ。まあ社長と忖度のお遊びに興じたってわけさ。





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とにかくボクのイラスト時代の絵と見比べてみてよ。やがてボクに騙されている自分に気づくかも。もし見る目があればの話だけどね。芸術って怖いだろう? まるでテロだよね。








☆☆☆やんジーのつぶやき
まざまざと騙されてしまった世代である。
1970年代のあのアメリカンポップアートの熱さが今は懐かしい。




























































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by my8686 | 2017-06-18 12:12 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

「書評:スウィングしなけりゃ意味がない」を読み解く

昨晩は、新入社員の歓迎会がある。
愛車86は、翌日ロードバイクランを兼ねひきとる予定で会社の立体パーキングに停める。
土曜の翌日、雷雨予報の出るなか予想に反して午後からは快晴。太田川沿いのウォーキング&サイクリング専用ロードを走る。片道約25Kmを快適にロードラン。
チェーンをピカピカにクリーニングした効果だろうか、ペダリングがなんとも快適である。



それはさておき、土曜の朝に気になった書評が目についた。

「スウィングしなけりゃ意味がない 佐藤亜紀著」を読み解く。




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■反ナチスの悪ガキがあける風穴
 
ナチスは、青少年を教化し愛国心を育てるため、ヒトラー・ユーゲントを組織した。だがナチス的な規律や美徳に反抗する少年少女もいたようだ。
この史実をベースにした本書は、ナチスが「退廃音楽」として排斥したジャズに熱狂する若者たちを描いている。




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1940年代初頭、ドイツの都市ハンブルク。軍需会社社長の御曹司「ぼく」は、スウィング・ジャズ愛が高じて英語風の愛称エディを名乗り、カフェで仲間と遊ぶ毎日を送っていた。




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アメリカの黒人文化が生んだジャズが大好きなエディは、アーリア人の優越を唱え、ユダヤ人や黒人を劣等民族とするナチスの方針などどこ吹く風、人種的な偏見がない。それどころか、ユダヤ人が何代もアーリア人と結婚し続ければユダヤ人と見なされなくなり、純粋なアーリア人でもユダヤ教に改宗すればユダヤ人になる法律を、ナンセンスと嘲笑っているのだ。

ここには、世界的に広まっている人種差別への批判も感じられる。
著者が、反ナチス的な不良グループの中から「スウィング・ボーイズ」を選んだのも、差別の愚かさを強調するためだったのではないだろうか。





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ゲシュタポの監視をものともせず、女の子と遊び、徴兵を逃れ、海賊版のレコードを作って密売までしているエディたちは、愛国心の欠片もない。
ナチスは嫌いだが反体制運動をするわけでもなく、ただ快楽に忠実に生きるエディたちの悪ガキぶりは痛快である。




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「愛国心はあるか」と聞かれると、「ない」とは答えにくい。
だがこの手の問いにある「国」は、国土のことか、現在の体制のことか判然としていない。
差別を肯定し、国民に特定の思想を押し付ける腐った国など、愛するつもりはない、それどころか滅びてもいいと考えるエディは、国を愛す意味を問い直している。





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それだけに本書は、愛国の同調圧力が社会を息苦しくしている現代の日本に、風穴を開けてくれるだろう。
 






☆☆☆やんジーのつぶやき
ゲシュタポ監視下のもと反抗的にジャズに溺れる主人公の気持ちに共感する自分がいた。
学生時代にジャズ喫茶を彷徨いつつ、体制に抗うことで自分の気持ちを鎮めていたあの時代。
今の息苦しい日本がさらに息苦しくなって行く気配に、風穴をあけてみよう。
























































































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by my8686 | 2017-04-29 18:06 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

Peter Zumthor著『空気感(アトモスフェア)』を読み解く

昨日の日曜日は、午後から映画『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』を観る。
自分の音楽は誰にも渡さない。マイルスの狂気じみた執念にあらためて魂が震えた。

小雨降る月曜日となった今朝、昨日ブログアップしたPeter Zumthorの「山里ヴァルス」が妙に気にかかった。
Peter Zumthorの人となり、さらに彼の「空気感」について触れてみたくなった。



あらためて、この本の訳者のコメントをみてみよう。


2012年に刊行したペーター・ツムトアの邦訳一冊目『建築を考える』から二冊目の著書『空気感(アトモスフェア)』までの間に、ツムトアの手になる新しい建築ヴェルクラウム工芸会館(Werkraumhaus)がオーストリアのブレゲンツヴァルド(Bregenzewald)に完成した。




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ドイツ語Werkraumは直訳すると、「仕事空間」「ワークスペース」。
所在地のブレゲンツヴァルドは、ブレゲンツ美術館からほど近い森林(wald)の地域にある。
この建物は、伝統的手仕事から現代的なデザインまで多様なクラフトマンたちが集まり、交流するための施設である。





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ツムトアの建築には、ディテールの表情・素材感や仕上げの美しさの観点から職人の技術が不可欠である。
ブレゲンツ美術館(97年完成)の建設が始まった90年代から、この地域の職人たちとの交流が生まれ、ツムトア自身が積極的に関わって、伝統的な技術の展示・紹介や職人間の交流を促すプラットフォームとしての施設が実現した。





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日が沈んで間もない時刻、人々が集うこの建物の外観の写真を初めて見たとき、『建築を考える』でツムトアが「私の見映えをよくする」建築、といっていたことを思い出した。建物の光の下に集う人、ひとりひとりが炎をゆらめかす蝋燭のように可憐に輝いている。





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かたや、実現しなかった建築もある。
ブレゲンツの近くにある小さな町isnyの企画として、町のシンボルとなる新しい塔の設計を依頼されていた。





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2010年、ツムトアが発表したデザイン案は、ガラス製の量感のあるレンガを積み上げた二本の脚から成る塊。
まるで地面からのび出てきた生命体のような外観。蛹の抜け殻を連想させる。上部の内側には、木製の大玉が収められ、下部の空間はちょっとしたホールになっている、というものだった。

ツムトアから住民たちに向けて説明会が開かれた。その様子も動画で見ることができる。ツムトアも住民もまなざしは真剣、でもどこか和気藹々とした雰囲気に包まれている。




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ガラス素材を用いた、塔というにはあまりに詩的な佇まいのこの建物の姿は、地元の住民から「ガラスのズボン」とあだ名を付けられた。

住民からは反対の声がわき上がり、盛んに議論がなされたという。街角で反対を呼びかける人たち、地域の新聞紙上には、これからの町の担い手である若者たちこそこの建築をどう見るかと、意見を表わす場がもうけられた。そして2年余にわたる議論の末、住民投票が行われることになる。

結果は――反対72%で否決。ツムトアの作品が建つことで、町に来訪者が増え活性化につながることを期待していた企画者たちも断念せざるをえなかった。

2年間のこのプロセスは、住民たちにとって、町のいまと将来について町をあげて考え議論する、悩ましくも楽しい、充実した経験であったようだ。この門をめぐるプロジェクトの記録は、町の資料としてまとめられ、保管・公開されている。





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本書『空気感(アトモスフェア)』はこのように始められる――「少なくとも私にとって、良質の建築とは、建築のガイドブックに出てくるようなものでもなければ、建築史に登場するとか、あちこちで取り上げられるとかいうものではない。建築の質とは、私にとっては、建物が心に触れるということ、それだけに尽きます」






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建築とは、それが建てられるのは、本質的に建築家のためでも、企画者のためでもない。そこに住まい、その土地に暮らす人々が必要だからつくるのだ。




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その空間を使う人々の心になじまない建築をつくる意味を見つけることは、誰にもできない。





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ツムトアの建築に、沈着、重厚な雰囲気と同時に官能、繊細、あたたかみを感じるのは、その建物で過ごす人たちの気持ちや成長の姿に想いをめぐらせる時間が設計過程に織り込まれているからだろう。






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長い時間をかけて、自身のイメージを実在化・顕在化させる方法を探ってきたツムトアが「自分は何を感じ、見ているのか?」を示そうとしたこの本には、実現しなかったガラス塔のような未完の美をとどめる図版が大事そうに収められている。





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☆☆☆やんジーのつぶやき
「ガラスのズボン」とまで酷評され否決されてしまった未完の建築。
自分の存在感までもが全否定されてしまったかのような、まるで苦行にも似た挫折感であったに違いない。
ものごとすべからく、全てがうまく行くものではない。
ツムトアの言葉「建築の質とは、建物が心に触れるということ、それだけに尽きる」がやけに心に沁みた。


























































































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by my8686 | 2017-02-20 14:29 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

気になる本 小説「1984年」を読み解く

昨日とはうってかわってどんよりと小雨降る日曜日となった。
午後から図書館に寄り、行きつけのスーパー銭湯に行く予定だが・・・・。
さて本日は、先週末から気になっていたジョージ・オーウェルの小説「1984年」の概説をみてみよう。




トランプ新大統領が就任した米国で、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」がベストセラーランキングの上位に浮上しているという。





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米ネット通販大手アマゾンの売り上げランキングでは、24日午前に1984年が6位に浮上。23日のランキングでも5位~7位で推移していた。

近未来の全体主義国家を描いた同小説は1949年に出版され、20世紀有数の影響力を持つ小説と評されている。

全体主義国家「オセアニア」が「ニュースピーク」という言語を使って思考の自由を統制するという筋書きで、政府は監視を張り巡らし、宣伝文句を用いて絶対君主「ビッグ・ブラザー」の正当性を強要する。





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トランプ政権のショーン・スパイサー大統領報道官は20日に行われた就任式の聴衆の規模について、就任式の「期間」としては史上最大だったと発言した。しかし写真や統計が裏付ける現実はその逆だった。





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トランプ大統領側近のケリアン・コンウェイ氏はその後、スパイサー氏が誤った説明をしたことについて「alternative facts(代替的事実)」だったと弁護した。
この発言は、1984年の小説に登場する「真実省」を思い起こさせる。オーウェルによれば、真実省では「うそ」を操っていた。






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注目されたのはトランプ政権のためだけとは限らない。米国内では多くの学校が同小説を必読書と位置付ける。
米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン氏が米政府による国民監視の実態を暴露した2013年にもベストセラーに浮上していた。





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トマス・モア『ユートピア』、スウィフト『ガリヴァー旅行記』、ザミャーチン『われら』、ハクスリー『すばらしい新世界』などのディストピア(反ユートピア)小説の系譜を引く作品で、全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描いている。





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なお、著者などは言及していないが「1984年」という年号は、本作が執筆された1948年の4と8を入れ替えたアナグラム説などがある。これによって、当時の世界情勢そのものへの危惧を暗に示したものとなっている。出版当初から冷戦下の英米で爆発的に売れ、同じ著者の『動物農場』やケストラーの『真昼の暗黒』などとともに反全体主義、反集産主義のバイブルとなった。






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また政府による監視や検閲や権威主義を批判する西側諸国の反体制派も、好んでこの小説を引用する。
1998年にランダム・ハウス、モダン・ライブラリーが選んだ「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」、2002年にノルウェー・ブック・クラブ発表の「史上最高の文学100」に選出されるなど、欧米での評価は高く、思想・文学・音楽など様々な分野に今なお多大な影響を与え続けている。




「あらすじ」を見てみよう。


1950年代に発生した核戦争を経て、1984年現在、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの超大国によって分割統治されている。
さらに、間にある紛争地域をめぐって絶えず戦争が繰り返されている。





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作品の舞台となるオセアニアでは、思想・言語・結婚などあらゆる市民生活に統制が加えられ、物資は欠乏し、市民は常に「テレスクリーン」と呼ばれる双方向テレビジョン、さらには町なかに仕掛けられたマイクによって屋内・屋外を問わず、ほぼすべての行動が当局によって監視されている。





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ロンドンに住む主人公ウィンストン・スミスは、真理省の役人として日々歴史記録の改竄作業を行っていた。





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物心ついたころに見た旧体制やオセアニア成立当時の記憶は、記録が絶えず改竄されるため、存在したかどうかすら定かではない。
スミスは、古道具屋で買ったノートに自分の考えを書いて整理するという、禁止された行為に手を染める。

ある日の仕事中、抹殺されたはずの3人の人物が載った過去の新聞記事を偶然に見つけたことで、体制への疑いは確信へと変わる。





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「憎悪週間」の時間に遭遇した同僚の若い女性、ジューリアから手紙による告白を受け、出会いを重ねて愛し合うようになる。






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また、古い物の残るチャリントンという老人の店を見つけ、隠れ家としてジューリアと共に過ごした。
さらに、ウインストンが話をしたがっていた党内局の高級官僚の1人、オブライエンと出会い、現体制に疑問を持っていることを告白した。

エマニュエル・ゴールドスタインが書いたとされる禁書をオブライエンより渡されて読み、体制の裏側を知るようになる。

ところが、こうした行為が思わぬ人物の密告から明るみに出て、ジューリアと一緒にウィンストンは思想警察に捕らえられ、愛情省で尋問と拷問を受けることになる。






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彼は、「愛情省」の101号室で自分の信念を徹底的に打ち砕かれ、党の思想を受け入れ、処刑(銃殺)される日を想いながら“心から”党を愛すようになるのであった。





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本編の後に『ニュースピークの諸原理』と題された作者不詳の解説文が附されており、これが標準的英語の過去形で記されていることが、スミスの時代より遠い未来においてこの支配体制が破られることを暗示している。

ジョージ・オーウェルは、この部分を修正・削除するように要請された際、「削除は許せない」と修正を拒否した。




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☆☆☆やんジーのつぶやき
図書館にネット予約した「1984年」が入荷したらしい。
近未来というよりも、すでに日本にもあてはまる小説である。
全体主義国家を描いたこの小説を、興味を持って読んでみたいと思う。
















































































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by my8686 | 2017-01-29 14:51 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

気になる本「青木淳ノートブック」を読み解く

日曜日休日。朝から雪が降り積もる。積雪50㎝。
数年前ならば、喜び勇んでスタッドレスタイヤのインプレッションに峠走りを敢行していたのだが、今年は大人しく書斎に籠って、気になる本を読み解いている。


数日前に見つけた「青木淳ノートブック」という図書情報。
定価10,000円の本がなんと中古で200,000円の価格をつけている曰くつきの本である。




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ヴィトンの店舗などで知られる建築家青木淳氏の構想ノート集である。
最初期のメモから詳細なアイデアを込めたスケッチまで、20年にわたって記された104冊のキャンパスノートを一冊に再現したもの。
手にいれることはできないが、中央図書館に唯一出禁本としてあるという。




あらためて、その内容を読み解いてみよう。


脳内のすべてを書き連ねたキャンパスノート。
頭のなかにあるものを、すべて書きだす。

ジャンルにこだわることなく、クロノジカルに。
そこには、夢も現実も並列に存在していた。




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本に使った紙も、実はキャンパスノートと同じような紙にこだわったという。
各ページにキャンパスノート16ページ分がびっしりと、104冊そっくりそのまま収録されている。

文字もスケッチも小さくてよく読めないが…。
最後のべージに拡大用のプリズムレンズがおまけについている。






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一番初めのメモは、当時、一緒に仕事しようと思ってた相手のスケジュール。
次のページは、斜面の図案。
斜面をこのまま使うと予算オーバーだから、どうすればいいかというアイデア・スケッチ。
でさらに次のページは、それを基にした図面。
次は、雑誌で見た軍用機のコクピットにある飛行経路を示すデジタル画面。






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字でも絵でも表でも、何でもこれに書きだした。
時系列にジャンルごとに分けずに、どんどん書いて行ったノートブック104冊分の軌跡である。

A4というサイズ。広げて見開きでA3になる、このサイズがいいという。
そして字だけじゃなく絵も描くから、1冊40枚綴りなくちゃ困るという。

だが、最大の理由は・・・
「キャンパスノートってベーシックなの。使うのに全くストレスがない。おそらくそれを狙って作ってるんだろうけど、本当にスタンダードなんですね。そこが使いやすい。言葉と同じ、と言ってもいいかもしれない。意識しないで便利に使ってるでしょう、言葉って。」と話す。


さらに、現実に完成した建築とあわせて見ていこう。



ルイ ヴィトン/表参道店





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■小さなスケールが集合する
四つの異なる柄のトランクが積み重なるような構成とした。


■スペーサーの構造
立体的あみだくじ状のフレーム構造。箱と箱の隙間が構造体となる。


■シンプルながらもテクスチャーの多い空間
店舗のインテリアはルイ・ヴィトンの設計部がデザインし、七階の多目的ホールを設計した。




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ルイ・ヴィトン/日本初の直営店である特別な「銀座並木通り店」

並木通りに浮かび上がるファサードは光と影が柔らかで美しい。





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空気の固まりが出現したようなものにしたかったというモアレの表現。
最前面のガラスと、その1.2メートル後ろにもパターンが入ったガラスがあって、それが重なるとモアレが起こる。





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ルイ・ヴィトン/松屋銀座店




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ルイ・ヴィトンの象徴的なモチーフを表現した正面デザイン。特殊加工を施した外装の素材は、陰影によってパターンが浮かび上がる仕掛けとなっている。









ルイ・ヴィトン/六本木ヒルズ+α




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ルイ・ヴィトンのデザイナーとイタリア人デザイナー、アウレリオ・クレメンテと青木淳の共同プロジェクト。








潟博物館



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新潟にある水田の広がる平坦な風景の中にすくっと意思を持って建つ建築「動線体」。
建築である以前に移動空間としての装置を試みたという。
最初に道あり、その後に場が現れる。移動するに従い、地表からの高さが変化し、それにつれて外の風景と方位が変化し、次々に新たな景色が現れていくという。









☆☆☆やんジーのつぶやき
幻惑されるモアレの美しさにいつしか官能が反応していた。
建築の皮膚の表情にいつしか酔いしれていた。
また、作品個々について詳細を読み解いてみたいと思った。











































































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by my8686 | 2017-01-15 20:20 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

「ロードスターと旅に出る」が読みたくなった

昼前からバスで久しぶりに市内まで出る。
ぶらぶらと市内探索がてら、昨晩会社の立体Pに停めたままの愛車86を引き取るためである。

昨晩は、会社関係の忘年会に出席し、深夜バスで帰宅する。運賃は、980円。
5000円近くかかるタクシー料金と比べれば格安であり、三越前からこの団地まで直通バスで帰れるのは、ありがたい。
ただし気をつけなければいけないのが、この団地まで上がる便は深夜0時の1本のみということ。
深夜1時最終便は、団地の上まではあがらず、あらぬ方向のバス置場まで行ってしまうのである。


久しぶりに市内の繁華街をぶらぶらとし、旧某デパートの2フロアーを店舗にしている丸善に立ち寄る。




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さすがに専門書関係が充実していて、時間のたつのを忘れさせてくれる。


ここの「車」関係の場所で見つけた「ロードスターと旅に出る」。



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サブタイトルに「この車を相棒にしたからには、一度はやってみたいこと。」とある。
ロードースターを駆り北海道を14日間かけてツーリングした旅行記である。


我愛車86との旅への思いが重なってみえてきた。

毎年、5月の初夏か夏には旅してみたいと思いつつも、いまだに実現できていない。
この86を相棒にしたからには、一度はやってみたいこと、なのである。




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翌朝しばらくググっていると、この本の著者の連載エッセイ「四国編」が目にとまった。

四国カルストは、私も相棒86を駆り訪れた台地である。




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年末にまたまた旅への思いが強まってきた。










☆☆☆やんジーのつぶやき
オープンカーの爽快さはまた格別に違いない。
5月の初夏にウィンドー全開で走った阿蘇スカイラインの想い出が官能を震わせていた。















































































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by my8686 | 2016-12-29 20:29 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

藤原新也「大鮃」広告に官能が疼いた

今朝、新聞広告に藤原新也の「大鮃」という新刊広告が目に止まった。




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つねに同時代を生き、洞察し、リードしてきた著者による人生賛歌、最高傑作の誕生!

「しかし死の扉の前に立つ老いの季節は、絶望の季節ではありません。 落葉もまた花と同じように美しいものです」






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現代社会の情報の海に溺れ、失われつつある真の青年期。そして老年期。
そのふたつが最北の海に出会う、奇跡の一日を描いた物語。
父なき時代の「青年の絶望」とは? そして「老いの豊かさ」とは?





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メメントモリから33年ぶり。






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1972年の処女作『印度放浪』は、青年のインド放浪記として学生時代に衝撃を受けた写真集であった。






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なぜ、あんなに官能が動揺し疼いたのか。



大学を卒業し社会人になり、結婚して2年目の年に「全東洋街道」を書店で手にしていた。
不思議な感慨と動揺があの時と同じ官能の疼きを覚えた。

さらに翌年、「東京漂流」と「メメント・モリ」が発表され、立て続けに衝撃が脳髄を刺激していた。





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藤原新也。

その名前と顔を垣間見る度に、ただならぬ空気が官能を疼いていく。






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老年期にさしかかった自分が、この新刊「大鮃」とどうむきあうのか。






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父なき時代の「老いの豊かさ」をどう読み解くのか、愉しみである。










☆☆☆やんジーのつぶやき
死の扉の前に立つ老いの季節の臭いを嗅ぎはじめた自分。
どうこの本と対峙するのか。
しかし、官能は鎮まるどころか、熱く沸点を超えようとしている。













































































































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by my8686 | 2016-12-26 18:28 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

日曜に読む  書評『バラカ』桐野夏生〈著〉

日曜休日の朝、気になる書評が目にとまった。

原武史氏の書評『バラカ』』桐野夏生〈著〉。




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■震災の暗黒郷を描き、時代を照らし出す

あの日の震災で、福島第一原発がすべて爆発した。
東京は避難勧告地域に指定されて住民は西に逃げた。



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首都機能は大阪に移り、天皇も京都御所に移住した。
2020年のオリンピックは大阪に開催地が変更された。
震災から8年がたち、放射線量が下がってもまだ住民の半分以上が戻らず、東京の空き家では地方から来た若い日本人や外国人労働者がルームシェアしながら住んでいる。



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もちろん、これは現実の出来事ではない。
だが桐野夏生の手にかかると、架空のはずの小説が禍々しい現実感をもって読者の前に立ち現れる。
これまでもそうした作風で、あり得たかもしれない現実を鋭くあぶり出す小説を世に問うてきた著者が、ついにあの震災をテーマとする長編小説に挑んだのが本書である。





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タイトルの「バラカ」は、震災後に警戒区域で発見された一人の少女の名前を意味する。
日系ブラジル人として生まれながら、中東のドバイで人身売買により日本人夫妻の子とされたバラカは、東京で震災にあい、被曝して甲状腺がんの手術を受ける。
そして日本各地を転々とするうち、自分たちの運動のシンボルとして利用しようとする原発推進派や反原発派と次々に遭遇する。
こうしていつしか原発をめぐる生々しい政治の渦中に巻き込まれてゆく。





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興味深いのは、日本という国家自体が西日本と東日本に事実上分断されていることだ。
西日本は大阪を首都として震災前の国家を維持しているのに対して、東日本は震災であたかも別の国家のようになった。
ここには、震災後も東京一極集中が強まり、東京でオリンピックまで開かれようとしている現在の日本に対する強烈な批判が込められている。





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関係者が相次いで消えてゆくなか、バラカはさまざまな人間の欲望や権力の網をくぐり抜け、強靱に生きようとする。
エピローグでは、国家の周縁に当たる北海道の東端でようやく安住の地を見つけたバラカの姿が描かれる。




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古来、洋の東西を問わず、思想家はあるべき政治や社会の理想像を語ってきた。
だが桐野夏生は、ユートピアではなく、ディストピア(暗黒郷)を徹底して描こうとする。
一見正反対なその手法は、現実を逆照射する点で、思想家に通じるものがあると思う。





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かつては松本清張の推理小説が現実との鋭い緊張関係を保っていた。
清張が昭和という時代を照らし出す小説家だったとすれば、桐野夏生もまた平成という時代を照らし出す小説家といえる。
すぐれた小説家は同時にすぐれた思想家でもある。
小説をフィクションとしか見なそうとしない学者にこそ読んでほしい一冊である。




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評:原武史(明治学院大学教授・政治思想史)

(2016.03.27 朝日新聞より抜粋)








☆☆☆やんジーのつぶやき
INESにおいて最悪のレベル7に分類される福島第一原発事故。
炉内燃料のほぼ全量が溶解しているという恐怖。
2015年の宇宙線ミュー粒子を利用した測定検査では1号機の核燃料はほぼ全量が熔融落下していることが確認された。
また2号機での核燃料熔融落下は7割以上あり、その溶け落ちた燃料が圧力容器底部に留まっているかどうかは不明という。
こうした環境下でお祭り騒ぎの果てに、東京オリンピックがさらに開催されようとしている。
北海道の東端が本当に安住の地であるように祈りたい。



































































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by my8686 | 2016-03-27 11:19 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

Geoffrey Bawa

先週の休日、書店を散策中に見つけた本「熱帯建築家: ジェフリー・バワの冒険」。
著者名に隈研吾の文字をみつけて中をチョイ見。




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バワって、何者? アジアにこんなすごい建物を作ったなんて!
海へとつながっていくプール、山に抱かれる建物、巨岩がめり込むロビー、森の庭に開かれたテラス、樹木が突き出た屋根……。
〝モンスーンアジア〞を舞台に築かれた、自然と一体化する独自の建築世界を読み解き、14のホテルとヴィラを徹底取材。
スリランカが生んだ今注目の建築家、バワ作品を楽しむための初のガイドブック誕生!・・・とある。





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14のホテルとヴィラに興味が湧いた。
オノマトペ建築の勉強が終わったら、次はこのバワ建築を勉強してみよう。


ということで、日曜の朝はこのジェフリー・バワについて少し勉強してみよう。



ジェフリー・バワ(Geoffrey Bawa、1919年7月23日 – 2003年5月27日)は、スリランカのコロンボ出身の建築家。




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スリランカを代表する建築家で、トロピカル建築の第一人者として多くのホテル建設を手掛けた。





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ヨーロッパ系の裕福な家庭に生まれ、19歳だった1938年にイギリスのケンブリッジ大学へと留学し英文学を専攻。
大学卒業後に弁護士となるが、1946年にスリランカへ帰国。





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帰国後すぐに1年半にも及ぶ世界旅行の後自分の理想郷をつくろうと、ベントータに土地を購入。





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しかし建築の知識に欠けていたことから、イギリスへと再び留学し、38歳となった1957年より建築家としての活動を始めた。






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彼がベントータに作り上げた理想郷は『ルヌガンガ』と呼ばれ、現在はホテルがそばに立っているほか、彼の墓も小高い丘の上にある。





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ベントータ郊外には彼の弟べヴィス・バワが手掛けた庭ブリーフ・ガーデンがある。





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☆☆☆やんジーのつぶやき
ネパールから帰ってすでに4年が過ぎようとしている。
海外の旅で味わうあの解放感がまた恋しくなってきた。
次の旅は、モンスーンアジアにしようか。







































































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by my8686 | 2016-02-21 08:06 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)

隈研吾 オノマトペ建築

昨日の日曜日、久しぶりに大型書店をぶらつく。
目にとまったのが隈研吾の「オノマトペ 建築」。




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20年以上にわたり、建築の新たな方向を指し示してきた建築家、隈研吾。

近頃は、さらに建築の新たな地平を切り拓くべく、設計現場でのコミュニケーションツールとして、オノマトペを使用している。




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本書では、現在、隈事務所で使用されているものから“ぱらぱら"や“つんつん"といった11のオノマトペをピックアップし、自撰32作品をこれらのオノマトペに関連づけて自ら平易に解説。
これにより、隈作品に新たな光を当てるとともに、建築がいま向かっている方向を明確に指し示す。





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斬新なレイアウトによって、2005年から現在までに至る32作品を全頁カラーで紹介。
ロングインタビュー「建築を粒子化することで、世界と人間をより強く結びつける」も収録。



あらためて、作品のひとつひとつをみてみよう。




■ぱらぱら「ロータス・ハウス」

東日本に建つ別荘
深い山の中の静かな川岸に、自然と建築とが溶け合った状態をつくろうと考えた。
川と住宅との間には水をはり、蓮を植え、住まいが蓮池を媒介にして川へ、そして対岸の森へと連続していく状態を作ろうと考えた。




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建築自体の構成は穴を基本としている。
建築は2棟に分割され、その間に生じた穴の形状をした大きなテラスが、裏側の森と対岸の森とをつなぐ役割をはたしている。





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壁面もまた無数の穴としてデザインされている。
石という重量感のある素材を用いながら、風の吹き抜けるような軽やかな壁面を作った。
20㎝×60㎝、厚さ30㎜の薄いトラバーチンの板を8×16㎜のフラットバーに吊るし、チェッカーボード状のポーラスなパターンを構成するディテールとすることで、石でありながら紙のように、そして蓮の花弁のように軽やかな壁を作ることができた。





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☆☆☆やんジーのつぶやき
ぱらぱら・さらさら・ぐるぐる・ぱたぱた・ぎざぎざ・ざらざら・・・。
官能を刺激するオノマトペ。
その擬態語が立体になるとき官能が疼きはじめる。
しばらく隈作品をひとつひとつ丁寧にみていこう。

































































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by my8686 | 2016-01-18 11:20 | 気になる本 | Trackback | Comments(0)