商空間デザイン「炭火焼肉トラジ」を読み解く

晴れ間のなか、小雪がチラチラと舞う日曜日の朝。

デスクトップ上に置かれたままの画像ファイルの中から、以前から気になっていた「炭火焼肉トラジ」を見なおしてみよう。





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言わずと知れた橋本夕紀夫の代表作である。

2000年代後半、外資系高級ホテルが開業ラッシュを迎える中、ひと際大きな注目を集めた「ザ・ペニンシュラ東京」の日本上陸。
名門ペニンシュラが、世界で8番目にオープンするホテルのデザイナーとして白羽の矢を立てたのが、橋本夕紀夫だった。





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「デザイナーっていうのは、ゼロからつくるのではなく、いろいろな人と出会う中で発見、体験することを自分なりに解釈すればいいのだと体感的に分かった。デザインは自分で考えなくてもいいと思ったら、すごく楽になりました」。

そのため、人も物も自分で探すことを主義とする。





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「インテリアでも建築でも、材料は大手メーカーの品番から選ぶことが多い。しかし、それ以外に面白いものが世の中にはたくさんある。それはやはり自分で求めていかないと見つからない」。





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職人とのコミュニケーションから生まれるアイデアを形にするのが橋本の本領。

それを形成したスーパーポテトでの10年を、「あの時の経験がなかったら、今の自分は存在しない」。





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「デザインとは、何かしら最先端のものを取り込んでいくこと」。

橋本のデザイン流儀に触れたとき、過去の自分の思いが重なっていた。





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そして、2000年に入り、創作料理系の勢いは落ち着き、専門店へと流れが変わっていった。

橋本は焼肉チェーン店「トラジ」の内装も手掛ける。





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新店オープンの準備をしていたある日、外食産業に打撃を与えた狂牛病騒動に見舞われた。

「焼肉店がどんどん潰れる中、『トラジ』は予定通り新店をオープンさせた。






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ほとんどの店舗を閉めることなく、踏ん張った。売上が下がっても、それ以上に接客の向上を含め食の安全を確保する努力をし、その姿勢が結果的に今の業績につながっていた。

ペニンシュラも同じ。香港でSARSが猛威を振るった際、観光客がいなくなったが、人材を大切にし、スタッフを減らさなかった。
つまり、苦しい状況に直面しても瞬間的な判断ではなく、責任をもって乗り越える手段を考えることが大切だと感じたという。

「とにかく真面目が一番。21世紀に入って、さらに強く思うようになった」という。





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開業・廃業のサイクルが激しい日本の飲食店。3年以内の廃業率は約7割といわれている。
そんな厳しい業界において「自分がデザインした全ての店を老舗にしたい」と言う。






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「消費されるものではなく、時間が経つほどに味わいが増すものをつくりたい。1回つくったものは、20年、30年と建築と同じように残り続けてほしい」。

そのためには、新しさと普遍性の両方が必要だと指摘。

「長い歴史の中で構築された伝統スタイルを取り入れただけではつまらないし、我々がつくる意味がない。





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伝統と革新の融合に挑戦し続ける橋本は、日本の伝統文化の楽しさを伝える“ハイパージャパニーズスタイル”を提唱している。

「海外で日本文化を紹介するとき、侘や寂など、高尚なところから説明するから分かりづらくなる。祭りや縁日など、エンターテインメント的な側面から日本の楽しさを伝えたい。」

「雅の世界では色をたくさん使うし、派手なことが好き。漫才や落語も日本独特。やはり、人間の感覚で最上位にあるのは“笑い”です。日々過ごす中で笑いは不可欠です。笑いは難しい世界ですが、デザインにおける一つの表現の手段にしたい」と言う。






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「笑いとは、ある種の刺激から起きるもので、空間デザインにおいても訪れる人に、刺激を与える存在でありたい。居心地がいいというのも刺激だし、逆に使いづらいのも刺激。」

「色あせず、一つの環境として刺激を与え続けられるものが、結果的に魅力のある店舗として残っていくと考えている。」と言う。










☆☆☆GGのつぶやき
橋本の言う「ハイパージャパニーズスタイル」に官能が刺激されていく。
人間の感覚で最上位にあるのは“笑い”だと言い切る橋本の仕事に、これからも注目して行きたいと思った。


























































































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# by my8686 | 2018-02-04 10:25 | 挑発する建築&空間 | Trackback | Comments(0)

「DINING & BAR TABLE 9 TOKYO」を読み解く

2月に入り、日に日に春に近づく気配を感じる土曜の昼。

仮想通貨取引所「コインチェック」の580億円分の巨額流出からわずか1週間。
監督する金融庁は同社の対応がもたつくのを見かねて立ち入り検査に踏み切った。

資料提出や事情聴取で強制力のある異例の措置をとる。問題をいったん沈静化させ、市場の混乱を防ぐ狙いとみられる。
しかし、不正の全容は見えず、返金や出金のめども立たないまま、顧客の不安は募っている。

予想以上に内部統制がなっていない「コインチェック」。
あの若社長の目の泳ぎぶりに、その裏側が透けて見えた顧客も多かろう。



それはさておき、土曜ランチのあとは、昨年12月に品プリ最上階にオープンした「DINING & BAR TABLE 9 TOKYO」を読み解いてみよう。




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品プリは、地上約140mの最上階約2,000平米に、創作西洋料理、グリル&ステーキ、DJブースを備えるバーなど9つのダイニングとバーが融合した「DINING & BAR TABLE 9 TOKYO」を2017年12月13日(水)にオープンした。


「DINING & BAR TABLE 9 TOKYO」は、これまで品プリのレストランで培ってきたノウハウを結集させ、東京の食のエンターテインメントを体感できる最先端スポットとしてオープン。
さらに、DJや世界のウイスキーなどが楽しめるバーを設け、東京の新たな玄関口として国内外のゲストを迎える。




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品川の街で、ナイトタイム需要の獲得を目指すという。


店舗名 / DINING & BAR TABLE 9 TOKYO
開業日 / 2017年12月13日(水)
場所 / 品川プリンスホテル メインタワー39F
席数 / 495席



多彩なシーンに合わせ利用できるよう、提供する料理やサービスの異なる9つのエリアを設定。

地上約140mの店内からは、東京湾、建設中の山手線新駅、東京タワー、東京スカイツリー、富士山など、エリアごとに異なる360°のパノラマが楽しめる。




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■TOKYO FUSION DINING

店内中央にショーキッチンを配した、創作西洋料理のダイニング。


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ディナータイムは、すき焼き、しゃぶしゃぶ、寿司、とんかつなど江戸から続く料理を現代風にアレンジして提供。
音響設備・プロジェクターを完備し、婚礼や貸し切りパーティーにも対応。








■GRILL & STEAK

きめ細かい霜降りと柔らかでとろけるような食感が特徴の黒毛和牛「飛騨牛」とドライエイジングビーフのグリルレストラン。



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店内のグリヤードでグリルした出来立てを堪能できね。
調味料にもこだわり、八丈島の海の恵みから作った自家製の塩を提供。






■AWA LOUNGE

東京湾を眺めるシャンパンラウンジ。



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空気に触れる面積が少ない分、より美味しく熟成するといわれるマグナムシャンパンをバイザグラスで提供。







■SHIZUKU LOUNGE

富士山を眺めながら、日本の酒が楽しめるラウンジ。




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日本酒、焼酎、日本産ワインに加え、日本産ジンを使用したカクテルや、富士山を模した豆腐など和のアレンジを加えたタパスも提供。








■NINE BAR

中央のDJブースを中心とした光の演出が印象的なバー。上質なラウンジミュージックを酒とともに堪能できる。




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■WHISKY BAR

世界のウイスキーを揃えたオーセンティックな雰囲気のバー。



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■COCKTAIL BAR

バーテンダーがすすめるオリジナルカクテルなどを提供。



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■CHEF’S TABLE



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■PRIVATE DINING

20~30名規模の個室。少人数婚礼や二次会などパーティー利用も可能。



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☆☆☆GGのつぶやき
東京での華やいだ特別な夜を過ごすならば、一度は使ってみたい場所でもある。
さて、誰を誘うか・・・。
ゲスト選びに躊躇するほどの輩ならば、最初からご遠慮願いたい。




















































































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# by my8686 | 2018-02-03 14:33 | 挑発する建築&空間 | Trackback | Comments(0)

「TRADING MUSEUM COMME des GARCONS」を読み解く

コム デ ギャルソンが運営する「TRADING MUSEUM COMME des GARÇONS」が生まれ変わった。



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昨年、9月1日に東京ミッドタウンにオープンした国内2店舗目の展開開始に合わせて、2009年に出店したGYREの1号店もリニューアルされた。





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あらためて、その内容を読み解いてみよう。


川久保玲が新たに定義するコンセプト「過去の価値あるもの/今のもので、且つ他に無いもの/洋服に限らずアートや美しいもの/それらをTRADEする場」のもと、相関関係を持ったショップとして展開される。





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新しいトレーディング ミュージアム・コム デ ギャルソンでは、コム デ ギャルソンが展開するブランドとともに、「エッグ(egg)」「ジュディ・ブレイム(JUDY BLAME)」「ネメス(Nemeth)」「モリー・ゴダード(Molly Goddard)」 といった"普遍的な空気を纏う"ブランドのアイテムを世界各国からセレクト。

「TRADING MUSEUM」というネーミング通り、トレンドやファッションを超えた、トレーディングと博物館という2つの概念を組み合わせた空間がコンセプトとなっている。






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既存で行ってきたブランドアーカイブの展示や「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME des GARÇONS SHIRT)」のコレクションから復刻されるパッチワークシリーズの販売などが展開される。
店内のスペースに陳列されたガラスケースには、川久保玲というデザイナーの歴史やブランドの背景が感じ取れる、世界中から集めたアイテムがディスプレイされている。







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新たにオープンする東京ミッドタウン店の敷地面積は、約300平方メートル。
原宿店の内装とリンクし合う造りとなり、空間の一部を不定期でアーティストに提供することで、ウエアのみに留まらない美しさを提供していく。

これらのアイテムのなかには非売品も含まれており、買い物だけが目的となる空間ではなく、何かを観ることで新しいインスパイアが生まれるような刺激的な場所を表現している。




なお、オープニングはアーティスト舘鼻則孝によって飾られた。




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☆☆☆GGのつぶやき
デザイナー川久保玲が唱える「普遍的な空気」の中で、新しくインスパイアされていく。
そんな瞬間を遊びたい。
彼女がCOMME des GARÇONS-仏語で「少年のように」というブランドを立ち上げたのは48年前になる。
彼女の創造力と革新性は、時代に抗う少年のような、純粋さへの標榜とインディペンデンスなのか。
永遠なる独立性と自由を求めて。



































































































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# by my8686 | 2018-02-02 07:49 | デザインに何ができるか | Trackback | Comments(0)

「SALIOTショールーム」を読み解く

「コインチェック」でのNEM巨額流出騒動も謎のホワイトハッカーの出現で想定外の拡散状況に拡大しつつある。
無関係な所有者に無差別に送金を繰り返すことで、NEMの流通システムを混乱させる狙いか。監視網が緩められ、換金するチャンスを虎視眈々と狙っているのか。

これから先の展開は、静観しかあるまい。




それはさておき、今朝は、昨年9月に東京三田でオープンした「SALIOTショールーム」を読み解いてみよう。



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森田恭通のデザインによる、スマート照明SALIOTの最新型ショールームである。






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ミネベアミツミ株式会社が、新型LED照明器具「SALIOT (Smart Adjustable Light for the Internet Of Things、サリオ) 」を常設した。





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「SALIOT」は、2015年より展開する、ミネベアミツミの超精密機械加工技術、光学技術、無線技術を組み合わせ、スマートフォン・タブレットで、配光角・明るさ・色温度・上下左右を簡単にコントロールすることができるという「スマートLED照明」。

従来、大型・高天井に設置される照明の調整は、脚立や調整棒による手作業で行われ、作業に時間と労力、高コストが伴うものであったが、SALIOTはコントローラーひとつで様々な光の照射域・角度を制御。
高所作業やレイアウト変更の負担を軽減しながら、今までにない照明の表現を可能とする、高性能照明器具だという。






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天井高5m、総面積145平米の空間。
これまでの照明器具ショールームとは一線を画すアーティスティックな空間が広がる中、200台を超えるSALIOTの最新機種を設置。

森田恭通による空間デザインとSALIOTの融合により、光と影がおりなす美しいランドスケープが構築された。




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ショールームは、ゴールドの巨大な壁に仕切られた4つのエリアと、コリドー(回廊)で構成されており、それぞれリテールブースや、ギャラリー、スタジオ、ダイニングといったシーンが設定されている。

各エリアに、最新機種を設置し、自由自在に変化するSALIOTの照明性能の総合力を体感できる。





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また今後、ショールームで各種イベントを予定しており、新たな照明の可能性-ライティングイノベーション-を体感できる場として機能させていくという。

この「SALIOTショールーム」オープンをきっかけとして、商業施設(百貨店、ショッピングセンター、アパレル関連)、ショールーム(カーディーラーなど)、博物館・美術館、教育施設、イベントスペース、ホテル等への導入を、本格的に目指していきたいという。









☆☆☆GGのつぶやき
これからのIoT社会において、暮らしの中のデバイスをつなぐ、重要な位置づけになる照明である。
現段階では、スマートフォン・タブレットでの制御範囲であるが、これにAIが組み込まれていけば、さらなる進化がイメージされてくる。
クルマだけではなく、こうした商業施設にもAI機能は導入されていくであろう。
















































































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# by my8686 | 2018-02-01 08:10 | 挑発する建築&空間 | Trackback | Comments(0)

イリヤ・レーピンの「トルコのスルタンへ手紙を書くザポロージャ・コサック」を読み解く

氷点下-2°となった朝。心配した路面凍結はなし。
冬シーズン、早めの出勤とする。

今朝は、コインチェックの580億円分19分で流出したというトップニュース。
口座は特定され、結局は塩漬けか・・・の報道も気にかかるが、昨日に引き続きイリヤ・レーピンの代表作を観てみよう。




「トルコのスルタンへ手紙を書くザポロージャ・コサック」(1880~1893年作製)


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ロシア・トルコ戦争で黒海沿岸部やクリミア半島を領土にしたロシア軍は戦闘部隊としてコサック兵を多用した。決して統率の取れた集団ではなかったが、その戦いぶりは勇猛果敢であった。

この作品のテーブルを囲むコサックの男達は、勝利の美酒に酔い、戦いに敗れたトルコの王(スルタン)に対して手紙を書くため、皆で寄ってたかって好き勝手にしゃべっている、そんな場面である。


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誰も文字が書けないため中央の羽ペンを持った男が代書している。


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全体の構図とコサック兵の表情が素晴らしく、生き生きと躍動感のある作品となっている。



さらに、中野京子女史の講義内容も読み解いてみよう。

1976年、ドニエプル川のそばでウクライナ・コサックが本営を張り国境を守っていると、負けているトルコのスルタン、メフメト四世から「降伏して臣下になれ」と手紙が来た。

それに対しコサックたちが返事を書いている場面である。






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返信の内容は罵詈雑言の嵐。
言いたい放題の悪口。



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「おまえらが悪魔の糞を食おうと知ったことじゃない。ブウブウ音をたれる肛門驢馬野郎め!肉屋の野良犬めが!!」



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文字の書けないコサックが書記を雇って手紙を書かせている。

口述筆記を耳にして周りの皆が大笑いしている場面である。



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MEMO

露土戦争(1877年 - 1878年)は、ロシア帝国とオスマン帝国(トルコ)の間で起こった戦争。
バルカン半島に在住するオスマン帝国領下のスラヴ系諸民族がトルコ人の支配に対して反乱し、それを支援するかたちでロシアが介入して起こった。ロシア帝国の勝利で終わった。
ルーマニアでは「ルーマニア独立戦争」、トルコではイスラームの暦年(ヒジュラ暦1293年)にちなんで「93年戦争 (Doksanüç Harbi)」、また「オスマン・ロシア戦争」とも呼ばれた。
ギリシャ独立戦争に続いて、東ヨーロッパ諸国の独立回復のための重要な戦役となった。









☆☆☆GGのつぶやき
コサック達の生き生きとした表情が良い。
罵詈雑言の嵐の罵声が聴こえてきそうだ。
戦に勝ち、皆が歓喜に湧き上がる熱気がフツフツと伝わってくる。















































































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# by my8686 | 2018-01-31 09:02 | ぶらぶらアート観賞 | Trackback | Comments(0)