世界的起業家がオススメするSF小説に興味が湧いた。
そのなかから、アシモフの「ファウンデーション・シリーズ」を読み解いている。
本日は、そのなかのキーワード「ガイア」を読み解いてみよう。
A.A「ファウンデーション」
原題:The Foundation Series
「ガイア」
セイシェル星区に存在する「地球」の古代名を持つ惑星。
人間を含め全ての生物・非生物が精神感応能力によって意識・記憶を共有し、一つの「超有機体(スーパーオーガニズム)」を形成している。
さらにそれを銀河系全体に拡大した「ギャラクシア」の建設を目指している。
ファウンデーションと同じ目的で何者かが人類の未来のために用意していたものであり、その存在は世間から隠匿されている。
名称やコンセプトはジェームズ・ラブロックのガイア理論に基づいている。
『ファウンデーションの彼方へ』などの日本語ハードカバー版では原音に近い「ゲイア」と訳されていたが、その後日本でもエコロジーに関連して「ガイア」という言葉が定着したため文庫版で改められた。
memo
「超有機体」
人体を構成する細胞の数は数十兆程度だが、体内に生息する細菌の細胞数は100兆を超える。
こうした体内微生物が、免疫系など人体の仕組みと密接な相互作用をしていることを考えると、人間とは、ヒトの細胞と微生物とが高度に絡み合った集合的有機体とみるのが適切だ――イギリスの研究者がこのような内容の論文をまとめた。
「超有機体」というこの視点は、将来期待される「個人の特質に応じた投薬・医療」の開発に際して、重要な意味をもってくる。
「超個体」 superorganism
多数の個体から形成され、まるで一つの個体であるかのように振る舞う生物の集団のことである。
通常、同種で構成される個体群やコロニーをさすが、異種集団を超個体と見なすこともある。
一般的に社会性昆虫の社会集団を意味し、分業体制が高度に築かれており、個体はその集団から離れて長時間生き残ることができない。
例としてはアリ・ハチ・シロアリなど、昆虫類が主であるが、哺乳類の中にも「ハダカデバネズミ」のように昆虫のような「真社会性」の生態をとる種が発見されている。
専門的には「共同体によって制御されている現象を生み出すように協調行動するエージェントの集団」であり、その現象とはアリが食物を収集したりミツバチが新たな営巣地を捜すといった「巣が望んでいる」活動をすることである。
ガイア理論のジェームズ・ラブロックや、ジェームズ・ハットン、ウラジミール・ベルナドスキー、ガイ・マーチーは生物圏全体を一種の超個体と見ることができると主張した。
この見方は一般システム理論や複雑系の力学と関係している。
超個体はサイバネティックス、特にバイオサイバネティックスにおいて重要である。
その場合の超個体は「分散知能」の一形態を表しており、限定的な知能と情報しか持たない個体が多数集まって個体の能力を超えた大きなことを成し遂げるものとされる。
生物にそのような挙動が見られることは軍隊や管理といった方面にとって多くの意味があり、活発に研究されている。
19世紀の思想家ハーバート・スペンサーは社会組織に対して「super-organicスーパー・オーガニック」という用語を生み出したが、これは明らかに「organic(組織)」と「social(社会)」を対比させたもので、個体群のアイデンティティの話ではない。スペンサーは社会有機体説として社会の全体論的性質を探究しつつ、社会と有機体の挙動に違いを認識していた。
スペンサーにとって「super-organic」とは、有機体、すなわち人間同士の相互作用の持つ創発的属性を意味した。
そして D. C. Phillips が指摘したように「創発主義と還元主義には違い」がある。
同様に経済学者カール・メンガーは社会の成長の進化的性質について詳述したが、方法論的個人主義を捨てたわけではない。
メンガーは、社会目的論的理由で社会組織が生じたわけではなく、あくまでも「個人」の興味・関心を追求するという経済的主体の無数の努力の結果として社会組織が生まれたのだと主張。
スペンサーもメンガーも選択し行動するのは個人であるから社会全体を有機体と同列に見るべきでないとしたが、メンガーの方がその点を特に強調。
スペンサーは社会構造を詳しく探究する際に有機体的アイデアを採用しているが、それが主としてアナロジーだったと認めている。
したがってスペンサーにとって超個体のアイデアは生物学や心理学の上に社会的現実の別個の階層を明示したもので、有機体のアイデンティティと1対1に対応するものではなかった。
それでもスペンサーは「目に見えるサイズの有機体はすべて社会である」とも主張しており、問題は用語上のものだという示唆もなされてきた。
人類学者アルフレッド・L・クローバーは1917年に「superorganic」という用語を使っている。
超個体という概念の社会的側面は Marshall (2002)で分析されている。
人間も体内の細菌などの微小個体を内包する超個体であるとする見方もある。
次のような推定がなされている。
「人間の腸内には 10^13 から 10^14 の細菌があり、そのゲノムの総計(マイクロバイオーム)は人間自体のゲノムの100倍以上になる。Microbiome は多糖類や~アミノ酸などの代謝を大きく強化している。また、メタン生成経路はマイクロバイオーム無しではあり得ないし、ビタミンやテルペノイドの生物的合成もそうである。従って、人間は超個体であり、その代謝系は人間固有のものと微生物のそれの混合である。」
ティモシー・リアリーは地球上の真の生物はDNAだけであると示唆した。
彼は、全ての種とその物理的に独立した生命形態はこの生物(DNA)の手足であるとし、その究極の目的は地球を超える成長を成し遂げることであるとした。彼はまた、DNAは地球で自然に発生したものではなく、地球外からやってきたものだとも主張している。
DNA:deoxyribonucleic acid/デオキシリボ核酸
「パンスペルミア説:宇宙汎種説」
生命起源論の一つ。地球の生命の起源は地球外から来たとする説。
提唱された生命の「素」には、たとえば微生物の芽胞、DNAの鎖状のパーツやその一部、あるいはアミノ酸が組み合わさったものなどが挙げられる。
『生命の起源は、天上の世界からまかれた種』とする、信仰としてのパンスペルミアは、エジプト古王国(前27世紀―前22世紀)までにさかのぼり、初期のヒンドゥー教やユダヤ教、キリスト教のグノーシス主義にも見られるように、有史時代と同じくらい古い信仰の一つである。
パンスペルミア説の先駆は、「生命の種」を語ったギリシャの哲学者アナクサゴラスの思想に見られる。
しかしこの考察は忘れ去られてしまった。というのは、古代ギリシアで、アリストテレスが「自然発生説」を唱えたからである。
アリストテレスは生命に関する多数の観察を重ね、生命に関する論文を書きためていたのだが、ある日、アリストテレスは泥の中から「うなぎの子」などが出てくるのを見て、「生命は、基本的には親から生まれるが、一部は泥の中から生まれることもある」とする説を提唱した。
当時のいわば学術界では頂点的な存在であったアリストテレスの説が広く受け入れられた結果、パンスペルミア説のほうは忘れ去られてしまった。
一方、中世ヨーロッパの思想界にとっては、パンスペルミア説は『旧約聖書』の最初の章「創世記」に書かれている天地創造(宇宙および生命の創造)の記述と矛盾していたために受け入れられなかった。
パンスペルミア説がヨーロッパでようやく受け入れられるようになったのは19世紀になってからのことである。
1859年にチャールズ・ダーウィンが生物学的進化論を確立し、1884年にルイ・パスツールが生命発生の因果性の問題について実験を行ったことで、地球上の生命の起源の問題が多くの科学者に認識された。
ヴィクトール・ヘスが宇宙線を発見すると、「パンスペルミアは宇宙線で死滅するのでは」と否定的に見られた。だが、隕石内部は宇宙線から守られているとされるようになった。その後も、1980年代に火星起源の隕石が地球に到達していることが発見され、「天体衝突によって岩石が惑星間を移動する可能性がある」とされるようになり、また科学誌ネイチャーやサイエンスに、「大気圏突入の過熱や衝撃に微生物は耐えうる」とする論文などが発表され、岩石パンスペルミア説の可能性に関して成熟した検討を行うことが可能になった。
今後の「たんぽぽ計画」や「はやぶさ2」プロジェクトによる発見に期待がかかる。
従来から隕石にアミノ酸が付着していることは知られていたが、隕石は地球に落下する際に地球大気に触れているので、隕石上のアミノ酸が宇宙起源とは限らなかった。
今回、大気圏突入から分析時まで地球大気による汚染を受けないよう厳重に輸送・保管されたはやぶさ2のサンプルからアミノ酸が大量に見つかったことにより、たしかに宇宙にアミノ酸が存在することが実証されている。
☆☆☆GGのつぶやき
A.A/11「ファウンデーション」のキーワード「ガイア」を読み解きつつ、「超有機体」から「超個体:superorganism」、「パンスペルミア説:宇宙汎種説」にまで思いをはせる。
さらに、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。