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R・A・H/3「月は無慈悲な夜の女王」の「2章」を読み解く

世界的起業家がオススメするSF小説に興味が湧いた。

そのなかから、ロバート・A・ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」を読み解いている。
本日は、そのなかの「2章」を読み解いてみよう。




「月は無慈悲な夜の女王」
原題:The Moon Is a Harsh Mistress


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2章

行政府を打倒したマニー達は暫定政権の臨時大統領にマイクが作り出したCGによるアダム・セレーネを据えた。


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アメリカ独立宣言を月に置き換えた独立宣言をアメリカ独立と同じ7月4日に地球へ伝えた。


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さらに地球連邦と外交を行うため、教授とマニーは輸出される穀物の中に入って地球のインドへ渡った。


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地球連邦は教授とマニーを非公開の聴問会に呼び、独立を求める月に対して地球連邦はあくまでも植民地としての役割を要求したため議論は平行線を辿った。

一方で大中国をはじめとする各国の要人と個別に面会し、水や天然資源を射出機によって地球から月へ輸出することの実現性について説明した。
マニー達はジャーナリストに対しては月世界の環境がもたらす長寿や新しい可能性を示し、月の売り込みを行った。


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再開された聴問会で地球連邦は月の独立を否定し、計画経済によってより多くの穀物を輸出することを要求された。
マニーは個別に呼び出され、地球連邦が適切な警察力の支援を提供する代わりに計画の実行を求められたが、表面上は同意しつつ回答を保留した。教授とスチューの所に戻ったマニーはインドを脱出し、買収したパイロットの操縦する小型の宇宙船によって月へ戻った。


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マニーは交渉に失敗したと思い込んでいたが、マイクの計算上の勝率は上昇していた。
教授は地球側が譲歩して懐柔策を出した場合、月世界の団結が維持できずに輸出を止められなくなることを心配していた。
しかし外交の結果として、提出された地球側の案は農夫を含む月の全住民が反発するものであり、月は輸出を停止した。



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月の政府は暫定政権から、選挙によって選ばれた300人の議員による議会に移っていた。
選挙は電子投票であったため、集計結果はマイクが自由に操作することができた。

新しい議会は教授を総理大臣に指名し、十数名の大臣が任命された。
防衛大臣となったマニーは地球の宇宙船からの爆撃やミサイルを防ぐためにレーザー銃を扱う部隊を維持した。



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マイクとの接続が切られても射出機で岩を地球へ投げつけることができるように弾道計算を行うコンピュータを月香港銀行から徴発して準備を整えた。


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memo

「弾道学:ballistics」

弾道学は、当初大砲の発生と共に始まったが、更に遡れば投石器やカタパルトなど飛び道具による投射の研究にその萌芽を見出すことができる。
軍事学の一分野だが、物理学から力学を介して数学にまで関係し、その一方では物性にも絡んで化学との接点も持つなど、多様な分野に関係している。

コンピュータもその黎明期より強く関係し、膨大な弾道計算を処理する機械計算の延長で必要とされ開発がすすんだ(→ENIAC)。

現代でもコンピュータ・シミュレーションの分野で主要なテーマの1つとなっている。
同分野では計算対象が飛翔のみに留まらず、爆燃や轟燃、侵徹過程といった詳細な実験観測が不可能な物理現象まで広がりを見せている。

弾丸や砲弾の発射においては、弾丸が砲身内に存在する状態と、発射口から飛び出す瞬間、空間を放物線を描いて弾道飛行している間、物体に衝突して運動エネルギーが対象の破壊となって現れる段階と、幾つもの段階によって細分化されており、その各々に専門の研究者さえ存在する。


現代において、最も単純なモデルはニュートン力学に基づく天体力学的なもの。
単一の質点系において真空中に質点の質量よりも無視できるほど小さい物質がある場合で、その軌道は円錐曲線を描く。

より現実的な弾道学は砲弾を投射した場合で、これは重力以外にも空気抵抗や気流の流れの影響を受け、軌道が逸れながら運動を続ける。
それを体現しているのが人工衛星で、一定速度(第一宇宙速度)で発射された物体は「延々と地平線の向こうへ落下し続け」ている状態となるはずだが、地表面は質点ではなく球なので、地上発射による単段ロケットでは実現できない(必ず地表面に落ちてくる)。

そこで、二段めのアポジキックモ-ターによって遠点において軌道修正を行い地球周回軌道に乗せている。
これに対し、いわゆる大陸間弾道ミサイルは周回軌道に乗せることを考えていないので、おおむね単段ミサイルである。

月ロケットなどの宇宙ロケットでは、地球と月と太陽の引力を受けるために軌道は複雑となり(一般の三体問題)、解析的に解けない。
よってコンピュータによる数値計算に頼らざるをえない。

三体問題: three-body problemは、互いに重力相互作用する三質点系の運動がどのようなものかを問う問題。
天体力学では万有引力により相互作用する天体の運行をモデル化した問題として、18世紀中頃から活発に研究されてきた。
運動の軌道を与える一般解が求積法では求まらない問題として知られる。


砲弾や小銃弾などの弾道学では、重力以外にも、弾丸の形状によって発生する空気の流れ(流体力学)やマグヌス効果、マッハ数やレイノルズ数などといった超音速か亜音速かの違い、湿度や温度などのの空気密度の差、さらにコリオリ力などの影響など様々な要素が複雑に関係してくる。そのため、単純な計算式でその軌道を表すことができない。これらを予測の範疇内に収めようと観測や実験や計算を繰り返す学問とされる。

兵器の有効性を高めるための軍事研究のひとつとして認知されているが、宇宙開発においては(大気圏からの離脱と再突入など)弾道学で培われた知識が必須のものとなり、軍事だけに留まらない科学研究分野のひとつとなっている。





「三体問題:three-body problem」

ふたつの質点が互いにニュートン重力を及ぼし合って運動するとき、その軌道は楕円、放物線、双曲線のいずれかになることが知られている(ケプラーの法則)。

三体問題はこの系にさらにひとつの質点が加わった場合の進化を求めるもので、太陽-地球-月系や、太陽-木星-土星系など、天体力学の様々な局面で必要となるため古くから調べられてきた。

現実的に三体問題を取り扱う場合、問題の簡略化のために、いくつかの仮定がなされることがある。
三体ともに同一平面上を運動するという仮定を置く場合、平面三体問題と呼ばれる。三体のうち、一体の質量が他の二体に影響を及ぼさないほど微小で無視できるとする仮定を置いた場合、制限三体問題と呼ばれる。

特に制限三体問題において、残り二体の軌道を円軌道と仮定する場合、円制限三体問題と呼ばれる。

よく知られた特殊解としては、円制限三体問題におけるラグランジュ点や、三体の質量が等しい場合に8の字型の軌道をとる8の字解等が存在する。
三体問題が求積可能であるかという可積分性についての否定的な結果は、フランスの数学者アンリ・ポアンカレによって、導かれた。

1889年にスウェーデン兼ノルウェー国王オスカー2世の還暦を祝うために開催されたコンテストで、ポアンカレはいくつかの仮定を置いた制限三体問題を考察し、運動を定める第一積分がある種の摂動級数では表現できないことを示した(ポアンカレの定理)。

さらに、ポアンカレはこの研究の中で安定多様体、不安定多様体が交差するために生じるホモクリニック軌道と呼ばれる極めて複雑な運動の挙動の概念に到達した。
こうした三体問題を端緒とする積分可能性やカオス現象の研究は、現代的な力学系理論の発展の契機となっている。




☆☆☆GGのつぶやき
R・A・H/2「月は無慈悲な夜の女王」の「2章」を読み解きつつ、「弾道学」から「三体問題」にまで思いがひろがる。
さらに、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。



# by my8686 | 2024-03-03 03:03 | 気になる本 | Trackback

R・A・H/2「月は無慈悲な夜の女王」の「1章」を読み解く

世界的起業家がオススメするSF小説に興味が湧いた。

そのなかから、ロバート・A・ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」を読み解いている。
本日は、そのなかの「1章」を読み解いてみよう。



「月は無慈悲な夜の女王」
原題:The Moon Is a Harsh Mistress


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1章

ある日、月の行政府の高性能コンピュータが1人の職員の給料を天文学的数字にしてしまう。
修理を依頼された個人請負のコンピュータ技師、マニーはこのコンピュータに知性が存在していることを知っており、このコンピュータをマイクと呼んでいた。
このミスはマイクによる冗談であり、マニーはマイクが孤独であることを知る。


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マイクがモニターできないようにされた集会の様子をみるためにマニーが集会所を訪れると、行政府へ反対する人々が今後どうすべきかを話しあっていた。
月香港の反行政府組織のワイオは安く買い叩く行政府との取引を止め、自由市場で適正な価格で取引することを主張し、デ・ラ・パス教授は月の水や天然資源の流出を止めるために輸出禁止が必要であることを主張した。


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しかし集会の途中で武装した行政府の用心棒に襲われ、マニーはワイオを連れてホテルへ避難する。


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翌日に教授が合流し、3人は電話を通じたマイクの計算により地球からの有機物の輸送が無ければ月の資源枯渇まで7年しかないことを知る。
その後は食糧危機、そして人肉共食いが待つのみである。その地獄絵図を避けるためには行政府を打倒する他になく、この革命の賭け率は1対7(成功する確率が8分の1、12.5%)と計算された。
これは3人の内で最も消極的であったマニーにとっても十分な確率であり、3人は革命活動を開始した。
電話回線を自由にコントロールできるマイクはアダム・セレーネという名を使い、革命組織の中心となった。


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マニーたちは月世界市を中心に約1年をかけて革命組織を広げ、資金を集め、多くの人々が行政府を憎むように工作を行った。

そして地球と武力衝突するための準備として集めた資金で会社を作り、真の目的を隠して全長30kmの射出機を地下に建設した。
しかし、革命成就のためには、地球の支配階級にシンパを獲得する必要があった。


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そんな時マニーは、地球の名門出の遊び人スチューが、月独特の女性へのマナーを知らなかったために月の若者達とトラブルを起こしたところに遭遇する。

若者達から死刑を求める裁判を依頼されたマニーはどうにかスチューを救い、革命運動の仲間にする。
スチューは月で数ヶ月を過ごした後に地球へ戻り、月が独立可能になるための政治工作を行った。


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クーデターの準備が整いつつある頃、行政府の用心棒たちが強姦殺人事件を起こした。
そのニュースが市民に伝わると暴動が発生し、マニー達もそれにあわせてクーデターを起こし、行政府の制圧に成功する。



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memo

「世界的な食料危機」

2024年、現在の地球での世界の食料危機、そして栄養危機の規模の大きさは深刻化している。
国連WFPは、国連WFPが活動を行う78カ国(データの入手が可能な国)において、2023年には3億3300万人が高いレベルの食料不安に直面すると推定していた。
この数は、新型コロナウイルスの流行以前と比較すると2億人も増加している。

ブルキナファソ、マリ、ソマリア、南スーダンでは、少なくとも12万9000人が最も深刻な飢きんに近い状態にあると予想されている。
さらに、資金不足が引き起こす支援削減により、飢餓人口を減らすためになされた進展さえが失われる危険性がある。
国際社会は2030年までに飢餓と栄養不良をなくすという約束を反故にしてはなりない。

国連WFPは次のような複数の課題に直面している。
食料や燃料価格の高騰により食料支援を届けるための活動費が過去最高となる中、支援のための資金が追いつかないほど急性食料不安の人びとが増え続けている。

ニーズに対応できなければ飢餓や栄養不良の危険が高まる。
必要な資金が確保できなければ、命が失われ、苦労して得た開発の成果が失われてしまう。



「緊急支援先」

アフガニスタン・イエメン・ウクライナ・エチオピア・コンゴ民主共和国・サヘル・シリア・スーダン・ソマリア・ナイジェリア・ハイチ・パレスチナ・ミャンマー・南スーダン・・



「食料問題の理解と不確実要素」

2000年以降、食料価格が上昇している。
それまでは先進国の間の取引で決まっていた市場に、途上国が入ることによって、価格の水準が変わってきた。
穀物価格はここ30年で3倍になった。
また、バイオエタノール政策などが入ってくると、競合する穀物の価格上昇に影響を与える。


さらに市場に投機マネーが入ることによって、食料価格が大きく乱高下する。
食料に関わる市場の規模は大きくはないので、投機マネーの影響を受けやすい。

食料価格が大きく変化することは、途上国の貧しい人々にとっては大きな問題。
収入における食費の割合が大きい場合、食料価格が上がると、食料を買えなくなる事態が起こる。
ジャスミン革命などの大きな騒乱につながることもあり得る。

現在でも、途上国の貧しい人々を中心に栄養不足、飢餓に苦しむ人々がいる。
ただし、この人々が餓えている原因としては、食料供給が足りていないという問題だけでなく、紛争状態にある、政府のサポートが不十分である、などの「ガバナンスの問題」も大きい。

一方で、先進国にとっては、現状の食料価格の変動は、それほど大きなインパクトはない。
先進国にとってはまだまだ食料価格、特に穀物価格は十分に安い。

少なくとも2050年くらいまでは、人口増加は続きそうである。
しかし、途上国が経済発展をとげると、少子化傾向になるはずだ。
過去に比べて、これから先は人口増加の割合は鈍くなりそうである。


※参考資料
人類は食料危機を乗り越えたのか
ICA-RUSプロジェクト/国立環境研究所主催 食料問題セミナー報告





☆☆☆GGのつぶやき
R・A・H/2「月は無慈悲な夜の女王」の「1章」を読み解きつつ、「食料問題の理解と不確実要素」にまで思いをはせる。
さらに、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。




# by my8686 | 2024-03-02 03:02 | 気になる本 | Trackback

R・A・H/1「月は無慈悲な夜の女王」を読み解く

世界的起業家がオススメするSF小説に興味が湧き、アダムスの「銀河ヒッチハイクガイド」、アシモフの「ファウンデーション・シリーズ」と読み解いてきた。
3月にはいった本日からは、ロバート・A・ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」を読み解いてみよう。



「月は無慈悲な夜の女王」
原題:The Moon Is a Harsh Mistress


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著者はアメリカのSF作家のrobert anson heinlein。

SF界を代表する作家の一人。
「SF界の長老(the dean of science fiction writers)」とも呼ばれた。


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影響を受けたSF作家も数多いが、物議を醸した作品も多い。
科学技術の考証を高水準にし、SFというジャンルの文学的質を上げることにも貢献した。

他のSF作家がSF雑誌に作品を載せるなか、ハインラインは1940年代から自分の作品を「サタデー・イブニング・ポスト」等の一般紙に載せた。
この結果としてSFの大衆化が進んだのは、ハインラインの功績の一つといわれる。

SF小説でベストセラーを産んだ最初の作家でもある。
アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラークと並んで、世界SF界のビッグスリーとも呼ばれていた。


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SF短編小説の名手でもあり、アスタウンディング誌の編集長ジョン・W・キャンベルが鍛えた作家の1人である。
但し、ハインライン自身はキャンベルの影響を否定している。



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初期には未来史シリーズなど、科学小説としてのSFを書いていたが次第に社会性を強め、『宇宙の戦士』では軍国主義を賛美する兵士の描写があったことから右翼と呼ばれた。
一方の社会主義者の名残が表れている『月は無慈悲な夜の女王』では左翼と呼ばれるなど多彩な顔を持っていた。



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なかでも宗教やポリアモリーを扱った『異星の客』の反響は大きく、ヒッピーの経典と崇められ、ファンが分かれていた。


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『異星の客』中の「グロク(grok)」という造語が『オックスフォード英語辞典』に掲載されたり、更にはマンソン・ファミリーが実際のカルト活動で『異星の客』中の宗教をまねたりもした。

現在では、xAIによって開発されたLLMに基づいた対話型の「生成的人工知能チャットボット」に「Grok」とネーミングされている。
xAIによるとGrokは『銀河ヒッチハイク・ガイド』をモデルにしたAIだという。
「質問に対して少しウィットに富んだ答えるように設計されており、ユーモアが嫌いなユーザーは手を出さないように」とも語る。
また、xAIを立ち上げたイーロン・マスクはChatGPT等の他のAIモデルに比べると、Xへのリアルタイムアクセスできることが大きな利点だという。


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『宇宙の戦士』『ダブル・スター(太陽系帝国の危機)』『異星の客』『月は無慈悲な夜の女王』でヒューゴー賞を計4回受賞(いずれも長編小説部門)。アメリカSFファンタジー作家協会は1回目のグランド・マスター賞をハインラインに授与した。


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ロマンティックなタイム・トラベル物『夏への扉』は特に日本において人気の高い作品であり、SFファンのオールタイム・ベスト投票では、度々ベスト1作品になっている。
しかしアメリカにおいては『月は無慈悲な夜の女王』と『異星の客』がクローズアップされることが多く『夏への扉』は日本での限定的な人気にとどまっている。


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あらためて、「月は無慈悲な夜の女王」のあらすじを見てみよう。

1965年から1966年にかけて雑誌に連載され、1967年のヒューゴー賞長編小説部門を受賞。

地球の植民地である月が独立を目指して革命を起こす。
本は3章に分かれており、それぞれ月世界の革命前、月世界での革命と地球での外交、月世界と地球の武力衝突が描かれている。
全編を通して主人公のコンピュータ技師、マニーが自分の視点から過去を振り返る形で語られている。



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明日からは、各章を読み解いていこう。




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「Grok」トレーニング

Grokは独自開発の大規模言語モデル「Grok-1」が使用され、2か月にわたってトレーニングが行われる。
330億のパラメータからトレーニングしたプロトタイプ「Grok-0」より推論およびコーディング能力が強化されている。
「HumanEval」等のいくつかのLLM評価指標でベンチマークが行われた結果から、GPT-3.5やLLaMa 2を上回る結果を達成している。




「Human Eval」

プログラム合成におけるベンチマークタスクの一つ。
HumanEvalはOpenAIが提案したものであり 164個のPythonのプログラミング問題から構成されている。
各問題は、関数のシグネチャ、ドキュメンテーション、本体、および複数のユニットテストからなる。
言語モデルは、関数のシグネチャとドキュメンテーションから、関数の本体を生成することが求められる。
そして、生成されたコードがユニットテストに合格するかどうかで性能が評価される。

HumanEvalは、プログラム合成の能力を評価するためのベンチマークタスクとして優れているが 一方で、ある問題点も指摘されている。
それは、HumanEvalの問題が人間によって作成されているため 人間のプログラミングスタイルや癖に影響されている可能性がある。
たとえば、人間は変数名やインデントなどに個人差があり、言語モデルはそれらを模倣する必要はない。
また、人間は自分の得意な分野や興味のある分野に偏って問題を作成するが 言語モデルはより広範な分野に対応する必要がある。




「HumanEvalとMBPPの比較」

HumanEvalは164個の問題から構成されているが MBPPは約1,000個の問題から構成されている。
これは、HumanEvalの約6倍の問題数で、MBPPは、機械によって自動生成された問題なので、人間が作成するよりも多くの問題を用意することができる。







☆☆☆GGのつぶやき
R・A・H/1「月は無慈悲な夜の女王」を読み解きつつ、「Grokトレーニング」から「HumanEvalとMBPPの比較」にまで思いをはせる。
さらに、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。




# by my8686 | 2024-03-01 03:01 | 気になる本 | Trackback

A.A/11「ファウンデーション」のキーワード「ガイア」を読み解く

世界的起業家がオススメするSF小説に興味が湧いた。

そのなかから、アシモフの「ファウンデーション・シリーズ」を読み解いている。
本日は、そのなかのキーワード「ガイア」を読み解いてみよう。




A.A「ファウンデーション」

原題:The Foundation Series


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「ガイア」

セイシェル星区に存在する「地球」の古代名を持つ惑星。


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人間を含め全ての生物・非生物が精神感応能力によって意識・記憶を共有し、一つの「超有機体(スーパーオーガニズム)」を形成している。


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さらにそれを銀河系全体に拡大した「ギャラクシア」の建設を目指している。


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ファウンデーションと同じ目的で何者かが人類の未来のために用意していたものであり、その存在は世間から隠匿されている。
名称やコンセプトはジェームズ・ラブロックのガイア理論に基づいている。


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『ファウンデーションの彼方へ』などの日本語ハードカバー版では原音に近い「ゲイア」と訳されていたが、その後日本でもエコロジーに関連して「ガイア」という言葉が定着したため文庫版で改められた。






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「超有機体」

人体を構成する細胞の数は数十兆程度だが、体内に生息する細菌の細胞数は100兆を超える。

こうした体内微生物が、免疫系など人体の仕組みと密接な相互作用をしていることを考えると、人間とは、ヒトの細胞と微生物とが高度に絡み合った集合的有機体とみるのが適切だ――イギリスの研究者がこのような内容の論文をまとめた。

「超有機体」というこの視点は、将来期待される「個人の特質に応じた投薬・医療」の開発に際して、重要な意味をもってくる。




「超個体」 superorganism

多数の個体から形成され、まるで一つの個体であるかのように振る舞う生物の集団のことである。
通常、同種で構成される個体群やコロニーをさすが、異種集団を超個体と見なすこともある。

一般的に社会性昆虫の社会集団を意味し、分業体制が高度に築かれており、個体はその集団から離れて長時間生き残ることができない。

例としてはアリ・ハチ・シロアリなど、昆虫類が主であるが、哺乳類の中にも「ハダカデバネズミ」のように昆虫のような「真社会性」の生態をとる種が発見されている。
専門的には「共同体によって制御されている現象を生み出すように協調行動するエージェントの集団」であり、その現象とはアリが食物を収集したりミツバチが新たな営巣地を捜すといった「巣が望んでいる」活動をすることである。


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ガイア理論のジェームズ・ラブロックや、ジェームズ・ハットン、ウラジミール・ベルナドスキー、ガイ・マーチーは生物圏全体を一種の超個体と見ることができると主張した。
この見方は一般システム理論や複雑系の力学と関係している。

超個体はサイバネティックス、特にバイオサイバネティックスにおいて重要である。
その場合の超個体は「分散知能」の一形態を表しており、限定的な知能と情報しか持たない個体が多数集まって個体の能力を超えた大きなことを成し遂げるものとされる。
生物にそのような挙動が見られることは軍隊や管理といった方面にとって多くの意味があり、活発に研究されている。



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19世紀の思想家ハーバート・スペンサーは社会組織に対して「super-organicスーパー・オーガニック」という用語を生み出したが、これは明らかに「organic(組織)」と「social(社会)」を対比させたもので、個体群のアイデンティティの話ではない。スペンサーは社会有機体説として社会の全体論的性質を探究しつつ、社会と有機体の挙動に違いを認識していた。

スペンサーにとって「super-organic」とは、有機体、すなわち人間同士の相互作用の持つ創発的属性を意味した。
そして D. C. Phillips が指摘したように「創発主義と還元主義には違い」がある。


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同様に経済学者カール・メンガーは社会の成長の進化的性質について詳述したが、方法論的個人主義を捨てたわけではない。
メンガーは、社会目的論的理由で社会組織が生じたわけではなく、あくまでも「個人」の興味・関心を追求するという経済的主体の無数の努力の結果として社会組織が生まれたのだと主張。

スペンサーもメンガーも選択し行動するのは個人であるから社会全体を有機体と同列に見るべきでないとしたが、メンガーの方がその点を特に強調。
スペンサーは社会構造を詳しく探究する際に有機体的アイデアを採用しているが、それが主としてアナロジーだったと認めている。

したがってスペンサーにとって超個体のアイデアは生物学や心理学の上に社会的現実の別個の階層を明示したもので、有機体のアイデンティティと1対1に対応するものではなかった。
それでもスペンサーは「目に見えるサイズの有機体はすべて社会である」とも主張しており、問題は用語上のものだという示唆もなされてきた。


人類学者アルフレッド・L・クローバーは1917年に「superorganic」という用語を使っている。
超個体という概念の社会的側面は Marshall (2002)で分析されている。

人間も体内の細菌などの微小個体を内包する超個体であるとする見方もある。
次のような推定がなされている。

「人間の腸内には 10^13 から 10^14 の細菌があり、そのゲノムの総計(マイクロバイオーム)は人間自体のゲノムの100倍以上になる。Microbiome は多糖類や~アミノ酸などの代謝を大きく強化している。また、メタン生成経路はマイクロバイオーム無しではあり得ないし、ビタミンやテルペノイドの生物的合成もそうである。従って、人間は超個体であり、その代謝系は人間固有のものと微生物のそれの混合である。」



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ティモシー・リアリーは地球上の真の生物はDNAだけであると示唆した。
彼は、全ての種とその物理的に独立した生命形態はこの生物(DNA)の手足であるとし、その究極の目的は地球を超える成長を成し遂げることであるとした。彼はまた、DNAは地球で自然に発生したものではなく、地球外からやってきたものだとも主張している。


DNA:deoxyribonucleic acid/デオキシリボ核酸



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「パンスペルミア説:宇宙汎種説」

生命起源論の一つ。地球の生命の起源は地球外から来たとする説。
提唱された生命の「素」には、たとえば微生物の芽胞、DNAの鎖状のパーツやその一部、あるいはアミノ酸が組み合わさったものなどが挙げられる。


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『生命の起源は、天上の世界からまかれた種』とする、信仰としてのパンスペルミアは、エジプト古王国(前27世紀―前22世紀)までにさかのぼり、初期のヒンドゥー教やユダヤ教、キリスト教のグノーシス主義にも見られるように、有史時代と同じくらい古い信仰の一つである。

パンスペルミア説の先駆は、「生命の種」を語ったギリシャの哲学者アナクサゴラスの思想に見られる。
しかしこの考察は忘れ去られてしまった。というのは、古代ギリシアで、アリストテレスが「自然発生説」を唱えたからである。


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アリストテレスは生命に関する多数の観察を重ね、生命に関する論文を書きためていたのだが、ある日、アリストテレスは泥の中から「うなぎの子」などが出てくるのを見て、「生命は、基本的には親から生まれるが、一部は泥の中から生まれることもある」とする説を提唱した。

当時のいわば学術界では頂点的な存在であったアリストテレスの説が広く受け入れられた結果、パンスペルミア説のほうは忘れ去られてしまった。

一方、中世ヨーロッパの思想界にとっては、パンスペルミア説は『旧約聖書』の最初の章「創世記」に書かれている天地創造(宇宙および生命の創造)の記述と矛盾していたために受け入れられなかった。


パンスペルミア説がヨーロッパでようやく受け入れられるようになったのは19世紀になってからのことである。
1859年にチャールズ・ダーウィンが生物学的進化論を確立し、1884年にルイ・パスツールが生命発生の因果性の問題について実験を行ったことで、地球上の生命の起源の問題が多くの科学者に認識された。



ヴィクトール・ヘスが宇宙線を発見すると、「パンスペルミアは宇宙線で死滅するのでは」と否定的に見られた。だが、隕石内部は宇宙線から守られているとされるようになった。その後も、1980年代に火星起源の隕石が地球に到達していることが発見され、「天体衝突によって岩石が惑星間を移動する可能性がある」とされるようになり、また科学誌ネイチャーやサイエンスに、「大気圏突入の過熱や衝撃に微生物は耐えうる」とする論文などが発表され、岩石パンスペルミア説の可能性に関して成熟した検討を行うことが可能になった。


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今後の「たんぽぽ計画」や「はやぶさ2」プロジェクトによる発見に期待がかかる。

従来から隕石にアミノ酸が付着していることは知られていたが、隕石は地球に落下する際に地球大気に触れているので、隕石上のアミノ酸が宇宙起源とは限らなかった。
今回、大気圏突入から分析時まで地球大気による汚染を受けないよう厳重に輸送・保管されたはやぶさ2のサンプルからアミノ酸が大量に見つかったことにより、たしかに宇宙にアミノ酸が存在することが実証されている。



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☆☆☆GGのつぶやき
A.A/11「ファウンデーション」のキーワード「ガイア」を読み解きつつ、「超有機体」から「超個体:superorganism」、「パンスペルミア説:宇宙汎種説」にまで思いをはせる。
さらに、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。



# by my8686 | 2024-02-29 17:17 | 気になる本 | Trackback

A.A/10「ファウンデーション」のキーワード「トランター~ターミナス」を読み解く

世界的起業家がオススメするSF小説に興味が湧いた。

そのなかから、アシモフの「ファウンデーション・シリーズ」を読み解いている。
本日は、そのなかのキーワード「トランター~ターミナス」を読み解いてみよう。




A.A「ファウンデーション」

原題:The Foundation Series


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「トランター」

銀河帝国の首星。銀河系の中心部近くにあり、全体を金属のドームに覆われている。


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その最盛期には人口は400億を超え、皇帝をはじめ銀河帝国組織の中枢であり、膨大な知識・資料が蓄積されている銀河大学や銀河図書館等の人類文明の中核も担っていた。


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金属に覆われていないのは唯一、皇帝の宮殿周辺のみ。風俗の異なった数百の世界を内包しており、都市は主に地下へと伸びている。


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銀河帝国の弱体化に伴い、ファウンデーションが設立されて約260年後に大学と銀河図書館を除く全域が大略奪に遭い、壊滅的な被害を受けた。
『ファウンデーションへの序曲』で、SF版マンハッタン島を思わせる詳細な情景描写がなされた。


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「ターミナス」

銀河系の端にある惑星で、第一ファウンデーションの追放先。


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人類の生存に適した環境ではあるものの、他の居住惑星等から遠すぎるなどの理由で、発見後ファウンデーションの10万人が来るまで5世紀にわたって植民化されなかった。


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金属を産出しないため、文明を維持するための資源を輸入に頼るしかなく、機械の小型化や省資源化が進むことになる。
このことは最高水準の科学技術力を後々まで維持する下地となると共に、ファウンデーションが周辺星域との関係に関心を向けざるをえない要因となった。

創元推理文庫版『銀河帝国の興亡』では、ラテン語と英語での読み方を折衷して「テルミナス」と表記されていた。



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☆☆☆GGのつぶやき
A.A/10「ファウンデーション」のキーワード「トランター~ターミナス」を読み解きつつ、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。



# by my8686 | 2024-02-28 17:17 | 気になる本 | Trackback