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山本理顕設計工場の「天津図書館」を読み解く

山本理顕の2024年度プリツカー賞受賞が基因となり、あらためて山本の主要作品を読み解いている。

本日は、中国・天津市の「天津図書館」を読み解いてみよう。
場所は、天津市の文化エリア内。



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「天津図書館」


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延床面積55,000㎡、収蔵冊数500万冊という大規模な図書館。


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全体はグリット状に配された壁で構成され、その壁が上下で直行方向に交差しながら重なる。


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さらに、5層の建築のそれぞれの層の中間にメザニン階(Mezzanine:中二階)を設けているため錯綜した10層の建築に見える。
壁の構造は鉄骨のトラス。


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図書館1階中央には、南北方向に抜けるエントランスホールがあり、誰でも気軽に図書館にアクセスすることができる。


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ホール上空には壁梁がはしり、そこに本棚が配され、図書館全体が、本棚に囲まれたような空間がデザインされている。


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交差した壁は、開放的な大きな空間をつくる一方で、分節された小さな空間もつくる。


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来館者は、図書館を巡りながら様々な場所で本を読むことができる。


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山本理顕は某講習会で次のように語っている。

「中国は書物に対して非常に敬意を払う国で、ものすごくたくさんの全集がある。中国の学者たちは学業の最後に自分の全集をつくるのが目標とされている。」


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「だからその学者たちのたくさんの全集がここに収められていて、もちろんあれだけの歴史を持った人たちだから、本というものが自分たちの知識を伝える最も重要な方法だということをよく知っている。市立図書館でこれだけの大きさが必要だとは、最初は信じられなかったが、蔵書を見せてもらったら、なるほどと思った。」


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一辺は110メートルほどの大きさ。膨大な量の本があるのであらゆる壁が本棚に使えるような構造体がデザインされている。
すべての壁が梁になり、その上に梁の上に梁がのり、また梁がのる建築。

下からはいろんな梁が空中を飛んでいるように見える。すべての階のプランが違うので、断面を描いても切る所によってすべて梁の位置が変わる。



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さまざまな場所に本が飾られていて、それが全体の構造体となり、図書館の表情にもなっている。
壁面のエリアサインがその多様性を賦活化している。


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コンペ設計案のプロセスをみると、どこまでも連続する壁が各階でずれるという初期のアイデアから、直行する壁が上下階で交差する構造に変化している。


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大規模な図書館だからこそ、本を読む場所が均一にならないように、できるだけ多様な場所が生まれるようにプランニングされている。


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コンペ時の提案では、全面ガラスのダブルスキンだったが、天津は黄砂が激しく、全面ガラスは避けてほしいと言われたという。
さらに、隣接する博物館や美術館と同じ種類の石外装を要求され、できるだけ透明感を出すために、ルーバーを解決策に選んでいる。


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結果的には、閲覧室への柔らかい外光を導いている。


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この建物は、高松伸設計の「天津博物館」のすぐ横に建てられており、図書館・美術館・博物館・音楽用のホールが同時に四つ完成するという非常に巨大な計画のひとつとなっている。


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このエリアは一度訪ねてみたい。
しかし、天津は中国の中でも治安の良い都市と言われているが、中国の「反スパイ法」改訂以後の動きには注意がいりそうだ。




☆☆☆GGのつぶやき
山本理顕設計工場の「天津図書館」を読み解きつつ、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。



# by my8686 | 2024-03-19 19:19 | 気になる建築&空間 | Trackback

山本理顕設計工場の「平田みんなの家」を読み解く

山本理顕の2024年度プリツカー賞受賞が基因となり、あらためて山本の主要作品を読み解いている。

本日は、岩手県釜石市の「平田みんなの家」を読み解いてみよう。
場所は、岩手県釜石市平田第5地割。


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「平田みんなの家」

釜石市の平田(へいた)グランドに並ぶ仮設住宅群の中にある。
平田第六地区という場所。


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ここに建てられた仮設住宅は従来の北側アクセス南側採光の住棟配置ではなくて、住戸へのアクセスがお互いに向かい合うように配置されている。


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つまり、通りを挟んで玄関が向かい合って配置されている。
3・11直後に岩手県の住宅課長にこの配置計画を提案して実現したという、240戸の住宅群。

第六仮設は「医・職(食)・住」の機能を有する「コミュニティケア型仮設住宅」として、岩手県、釜石市、岩手県立大学、東京大学高齢社会総合研究機構が協働で立案・計画・整備を行った。

三陸地方の高齢化率の高さ、阪神・淡路大震災で230名を超えた「孤独死」の抑制、中心部から6km程離れている不便さなどに配慮して、「仮設団地内で居住者ひとりひとりが孤立することなく、コミュニティ内で共に助けあいながら生活し、最低限の医療・介護サービスが外部からスムーズに提供されること」が目指されていた。


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「みんなの家」は、この仮設住宅群の中につくられている。

当初は計画に無かったものの、2012年に山本理顕の提案・設計により建設された。

タジン鍋を連想するかわいらしい屋根が目印。
タジン鍋とは、陶器で作られた円錐形または半円ドーム状の土鍋で、北アフリカの一部地域で煮込み料理に使われている鍋。

食材の水分を利用して蒸し煮にするので、肉や野菜のうまみを逃がさない。また、フタに集まった水蒸気が冷やされて旨味を閉じ込め、フタと鍋の間に水の膜(ウォーターシール)が作られて密封状態となるので、風味や香りも逃さない。

どこからでも入れる開放的な間取りの中に、大きなテーブルと囲炉裏が備え付けられ、昼は集会所、夜は居酒屋に姿をかえる。
交代で人が常駐しており、気軽に訪れやすい雰囲気。冬季は、安東陽子氏のテキスタイルで防寒する。


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平田仮設住宅は商業施設やデイケア施設がデッキで連続(制度上は果てしなく近接)しており、小さな町のような雰囲気を醸している。
デッキとアーケードが設けられた住区内でも団らんを楽しむ住民が沢山見られる。


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ケアゾーンが交流の場として使われ入居者同士で顔を合わせる機会が多くなったこと、ケアゾーンの計画や玄関向かい合わせ型の住棟配置により仮設団地内の顔見知りが多くなる傾向がみられたことが報告されている。


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夜は飲み屋になるような「みんなの家」。

芯柱に穴を空けてそれを煙道にしている。
住人差し入れの鹿肉やスルメを焼いている。

ボランティアの学生、仮設住宅の住人たち、工事を請け負ってくれた工事会社の職人たち、完成直前の即興飲み会となる。
囲炉裏を囲むだけで誰とでも話ができそうな雰囲気だ。


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近くの国道からも、住宅群の中からもどこからでもよく見える建築。


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夜は特に目立つ。眠れない時にもここに来れば誰かに会える、話ができる、そう思ってもらえるような建築になったらという。
夜、中の光が透けて見えるようなテントを素材として選んだのはそのためだという。


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昼間は外の光が透過して中は明るい。傘のような構造システム。
芯柱の125角の角パイプにフードをつけて真下に囲炉裏がつくられている。


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囲炉裏を囲みながら住民の人たちと話をする。向かい合ったそれぞれの通りに通り名をつけたらどうだろう。花の名前がいいという多くの人たちからの意見で、12の通りに、それぞれ12種類の花の名前がつけられている。


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しかし、2021年2月に仮設住宅団地の解体とともに解体されてしまった。
浄化槽の新設が必要になることから市が存続を諦めたという。




☆☆☆GGのつぶやき
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# by my8686 | 2024-03-18 18:18 | 気になる建築&空間 | Trackback

山本理顕設計工場の「ソウル江南ハウジング」を読み解く

山本理顕の2024年度プリツカー賞受賞が基因となり、あらためて山本の主要作品を読み解いている。

本日は、「ソウル江南ハウジング」を読み解いてみよう。
場所は、韓国ソウルの南、江南区。


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「ソウル江南ハウジング」

2014年、山本理顕設計工場が国際コンペで勝ち取った低所得者層向けの集合住宅計画である。


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韓国の伝統的な空間である"sarangbang"と"madang"の2つの空間をこの計画に取り入れている。


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かつて、"sarangbang"とは家の主人が客人を迎えるときに使う客間であり、"madang"とは通りから住宅に入るまでの中庭のことだった。


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それを"sarangbang"=多様な活動のための部屋、”madang”=その活動をつなぐ場所、と読み替えている。


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1970年代、韓国でも急激に上昇する都市部の人口をみたすため、日本と同様、標準家族のための住宅が供給されてきた。
しかし、少子高齢化が進み、住宅に住む世帯人数は急激に減少し、同時に高齢者の独りまたは二人暮らしが急増。
2030年には人口の1/4が高齢者になる。従来の”一住宅=一家族”というシステムはほぼ崩壊した。


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そんな21世紀の住宅のあり方として、個々のプライバシーを保つと同時に地域社会と共存できる住宅のプロトタイプを提案している。

特徴は、住宅の多機能化。
山本は次のように語っている。

「住宅でのアクティビティは多様化し、住宅は、ただ単に家族が住み子供を育てる場所にはとどまらない。その多様なアクティビティを通して住宅を地域社会に開き、たとえ独り暮らしであっても、孤立しないような新しいシステムをつくることができないか。」


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あらためて、山本の提案内容をみてみよう。

各住戸の入口に"sarangbang"を設け、"Madang"と呼ぶ通路で各住戸をつないでいる。
そうして出来る低層の住棟を平行配置し、2棟で1セットとしている。


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2棟の中心には”common field”を配置し、住戸プランは”common field"を軸に鏡像反転させ、その低層の住棟の上にタワーが建つ。
タワーの後ろには日照条件の関係で広場ができる。


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2本の低層住棟、common field、タワー、広場からできる空間を1クラスターと呼びコミュニティーの単位としている。


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”common field”には”common kitchen”や”small library”が散らばり、クラスター内部の住人達が共用で使える。


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広場はsports fieldやplay groundとなる。


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さらに、各クラスターは、保育施設や老人施設、共同作業室、図書室といったコミュニティー施設を擁し、これらの施設はクラスター内のみならず街区全体のコミュニティーの中心として機能させている。


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山本の提案は、”一住宅=一家族”システムに変わる新しい住宅。


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地域にひらかれ、「地域社会圏」に基づいた住宅の提案でもある。

しかし、この計画が実現した途端に、韓国のネット新聞でいきなり批判されたという。
理由は、プライバシーがない。

山本は、カントの言葉をひき、「時として、実感という意識は間違う」。
その意識が「仮象」であり、真実か否か、なぜそれがそう見えるのか、その原因にまで遡らなければ、真実かどうかわからない。


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玄関の扉を透明にするかどうか、かなりの議論になったという。

一旦、透明ガラスに目隠しシートを貼り試してみると、かなりの閉塞感があった。
結果、ブラインドを内側に設置し、居住者の主体性にまかせることにしたという。


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山本は、この提案で「コミュニティ」の在り方を徹底的に追及している。

コモンフィールドを挟んで向かい合う関係が4グループ。
それぞれのグループによって挟まれた場所がパブリックパスとなる。
そこは、車路であり、駐車場へのアクセスエリアでもある。


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8棟は、日本でよく見かける、ただ単純に並行配列されたものではない。
4つのグループが形成され、そのグループが内側でどのような関係性を生み、相互にどのような関係をつくるべきなのか、その提案がなされている。


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低層部分の屋上は菜園である。
この計画の最大のヒットがこの菜園だったという。


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多くの住人が、白菜をつくり、カボチャをつくり、枝豆をつくり、トマトをつくる。
住民たちのこの自由さが、日本では生まれにくい「コミュニティ」が形成されている。


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日本人はいつから住まうことへの主体性を失くしたのだろうか。

そして、次のように記している。

「すべての住宅の供給を、住宅メーカーや民間ディペロッパーに丸投げしてしまっている日本の国の政策は韓国と比べるまでもなく、露骨なほどの低所得者層切り捨て政策だ。」

「すべての国民に住む場所を保証しようとするその基本的な考え方は、日本の我々が学ぶ必要がある。」


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山本理顕という建築家の、筋を通し抜く強い意志と姿勢が見えてくる。



☆☆☆GGのつぶやき
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# by my8686 | 2024-03-17 17:17 | 気になる建築&空間 | Trackback

山本理顕設計工場の「横浜市立大学 YCU スクエア」を読み解く

山本理顕の2024年度プリツカー賞受賞が基因となり、あらためて山本の主要作品を読み解いている。

本日は、「横浜市立大学 YCU スクエア」を読み解いてみよう。
場所は、金沢八景駅から北に徒歩約7分の金沢区瀬戸にある。


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金沢八景キャンパスの正門近くに建つ大学の新たなランドマークとして2016年に竣工。


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白を基調とした明るいデザインで、開放的な吹き抜け空間がある。


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300人教室2室、100人教室3室、大学院講義室2室などを備える。


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地域住民と学生、教員が集える多目的ホールは、さまざまな交流に活用することができる。


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南側正面の2階から4階にかけては、この校舎のシンボルでもあるスチューデントオフィスと呼ばれる学生が自由に使える部屋が並んでいる。


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この部屋は屋外からでも室内で学生達が活動している様子がわかる。

中央部は吹き抜けのアトリウムとなっており、天井やスチューデントオフィスを通して外光を取り入れているので、明るく開放的。
またイベントスペースとしての使い方も想定しているため、内部の仕上げ材は吸音性が配慮されている。


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そのアトリウムを挟んだ北側はRC造。
教室や多目的ホールはこのエリアにあって、多目的ホールでは市民向けのイベントも開催される。


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サインもユニークで分かりゆすい。


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テラスのデスク&チェアの浮遊感が不思議な共振現象を誘発してくる。


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☆☆☆GGのつぶやき
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# by my8686 | 2024-03-16 16:16 | 気になる建築&空間 | Trackback

山本理顕設計工場の「横浜市立子安小学校」を読み解く

山本理顕の2024年度プリツカー賞受賞が基因となり、あらためて山本の主要作品を読み解いている。

本日は、「横浜市立子安小学校」を読み解いてみよう。
場所は、京急新子安駅から北に徒歩約7分の新子安にある。


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「横浜市立子安小学校」

1873(明治6)年開校。親子2代、3代、4代と通ってくる子どももいる、歴史ある小学校。
2018(平成30)年に校舎移転のため新校舎を竣工。
近隣の住宅開発にともなう生徒数の増加に教室数の確保が追いつかず、「旧・日産グランド」の跡地に移転。


新校舎は“光と風と緑の学校”がコンセプト。
創立時の愛称“浜の学校”を彷彿とさせる爽やかなイメージがデザインされている。


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教室の外にあるバルコニーは奥行4メートルあり、夏には太陽光を遮り、反対に冬は、日差しを取り込む。
波型の天井も特徴的で、殺風景な照明器具を隠すだけでなく音を多方向に分散させ、反響音を防ぐという。


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また、大学の図書館で見られるようなメディアセンターや、一般的なものより2倍の規模がある体育館がある。
バスケットコートが2面も取れるため、区のバスケット大会で使用したいという要望もあったほどだという。


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それ以外では、市民に開放しているプールや、「2020年東京オリンピック」のピクトグラムを手掛けた廣村正彰の手による校内サインも注目したい。


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通常の小学校の 1.5 倍〜2 倍の施設規模となる巨大な小学校であるため、周辺地域への影響をできるだけ抑えている。

そのため、敷地北東側の屋内運動場棟を囲むように L字型の校舎棟を配置し、できるだけ建築のボリュームをコンパクトにまとめ、周辺地域に大きな影を落とさないようにデザインされている。

また、屋内運動場には2方向からアクセスできるように渡り廊下で校舎棟と接続している。これは、1,300 人の子供たちが円滑に移動できるようにするためだという。


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2つの棟の間には子供たちの活動の場として光庭が配置されている。
この光庭によって建物全体の自然換気と自然通風を確保し、自然エネルギーを利用した快適な室内環境を目指している。


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校舎棟は幅 4m の中廊下を挟んで、南東・南西側に教室を配置し、北東・北西側に多目的室を配置。

教室と廊下の間を透明なガラス建具とすることで廊下に対して大きく開放し、廊下と教室と多目的室を一体的に使うことを配慮。
そして廊下側に子供たちの作品を展示する木製の移動掲示パネルを設置。

幅 4m の廊下が子供達の活動の場であり、展示ギャラリーとして使うことが期待されている。
教室の外側には奥行き 4m の環境テラスが配置されている。


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夏の強い日差しを避け、雨天でも換気することができる環境調整装置であると同時に、教室の一部として先生と子供達の様々な活動の場となる。
環境テラスのフレームを細い PC の柱・梁とすることで、テラスでの子供たちの活動がそのまま建築のファサードとなっている。


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授業参観には廊下全体に子供達の作品が飾られ、鑑賞を楽しむ父兄に溢れ、美術館のようになっている。
体育館では地域住民も参加する合唱祭が行われコンサートホールのようになっている。


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運動会では 2,000 人以上のもの人が訪れ、環境テラスが観覧スタンドとして使われ、校舎全体が野外劇場のようでもある。
この小学校が教育空間としても、地域コミュニティーの中心としても新たな役割を担っていくことが期待されている。


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☆☆☆GGのつぶやき
山本理顕設計工場の「横浜市立子安小学校」を読み解きつつ、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。



# by my8686 | 2024-03-15 15:15 | 気になる建築&空間 | Trackback