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大隅氏、ノーベル賞「オートファジーの仕組み発見」

スウェーデンのカロリンスカ医科大は3日、今年のノーベル医学生理学賞を、東京工業大の大隅良典栄誉教授(71)に贈ると発表した。






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授賞理由は「オートファジー(自食作用)の仕組みの発見」。細胞が自分自身の一部を分解し、栄養源としてリサイクルしたり、新陳代謝したりする仕組みを明らかにした。様々な生物に共通する根源的な生命現象の謎を解いた。






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日本のノーベル賞受賞は、昨年の医学生理学賞の大村智・北里大特別栄誉教授、物理学賞の東京大宇宙線研究所長の梶田隆章教授に続き25人目。医学生理学賞は1987年の利根川進・米マサチューセッツ工科大教授、山中伸弥・京都大教授、大村氏に続いて4人目。日本人の単独受賞は自然科学系では利根川氏以来。授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金は800万スウェーデンクローナ(約9400万円)。

呼吸や栄養の消化、生殖など生命のあらゆる営みにたんぱく質は欠かせない。人は体内で1日に約300グラムのたんぱく質をつくるが、食事での補給は70~80グラムとされる。不足分は、主にオートファジーで自分自身のたんぱく質を分解し、新しいたんぱく質の材料として再利用している。

また、病気の原因になる老朽化したたんぱく質などの不要物を掃除する役割も担う。

1960年代から細胞内で成分が分解されていると考えられていたが、メカニズムや生体内での役割は長年不明だった。






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大隅教授は1988年、単細胞の微生物である酵母の細胞で老廃物をため込む「液胞」という器官に注目し、世界で初めてオートファジーを光学顕微鏡で観察した。特殊な酵母を飢餓状態にすると、分解しようと細胞内のたんぱく質などが液胞に次々に運ばれていた。詳しい過程を電子顕微鏡でも記録し、92年に発表した。さらに、オートファジーに欠かせない遺伝子も次々と発見した。これらの発見をきっかけに、世界中でオートファジー研究が広がり、ヒトやマウスなどの哺乳類、植物、昆虫などあらゆる生物に共通の生命現象であることがわかった。






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パーキンソン病やアルツハイマー病は、神経細胞内に異常なたんぱく質が蓄積することが病気の一因と考えられており、オートファジーはこれらの病気と関係しているという報告もある。がんなど様々な病気の解明や治療法の開発にも貢献すると期待されている。


■単独受賞、驚き

大隅良典氏の話
研究者としてこの上なく名誉なこと。ノーベル賞には格別の重さを感じる。私のような基礎的な研究者が運が良ければそういう機会にも恵まれると、若い人が知ってくれる機会になってくれたらうれしい。
人がやらないことをやろうという興味から酵母の液胞の研究を始めた。必ずがんにつながるとか寿命の問題につながると確信していたわけではない。基礎科学の重要性を強調したい。この分野は日本が大きくリードしてきた。ほかの研究者と共同受賞があったらいいなと思っていた。単独受賞は驚きとともに感慨深い。






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おおすみ・よしのり 1945年、福岡県生まれ。東京大教養学部卒業後、74年に同大学院で理学博士を取得し、米ロックフェラー大研究員に。東大教養学部助教授に就任した88年、オートファジーの観察に世界で初めて成功。電子顕微鏡で詳しい研究を重ね、92年に論文を発表した。96年に岡崎国立共同研究機構(現自然科学研究機構)基礎生物学研究所の教授に就任。東京工業大特任教授を経て2014年、同大栄誉教授。朝日賞や京都賞、ガードナー国際賞など受賞。


■キーワード

<オートファジー> 細胞が自分自身のたんぱく質を分解して、再利用する仕組み。酵母のような単細胞生物から哺乳類までに共通する生命現象。ギリシャ語の「オート(自分)」と「ファジー(食べる)」という言葉から命名された。細胞内をきれいにする作用や病原菌を排除する免疫の働きにも関わっており、パーキンソン病などの病気との関連でも研究が進んでいる。






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このニュースに関連する社説をみてみよう。

ざっくりいえば、細胞内でたんぱく質がリサイクルされる仕組みを明らかにした業績である。生物は生きていくために欠かせないたんぱく質を作り続けるが、異常が生じたり要らなくなったりしたら、分解して新しいたんぱく質の材料にする。そんなオートファジー(自食作用)に光を当てたのだ。

現象自体は知られていたが、大隅さんは酵母のオートファジーを電子顕微鏡で詳細に記録。関係する遺伝子も繊細な実験で次々に突き止めた。

約25年前に最初の論文を発表したころ、この分野の論文は世界で年に数十本だった。それが今や年数千本。大きな研究分野として花開いた。人を含め生物全般に共通する現象と確かめられた。低栄養や感染症でどのように細胞内のリサイクルが損なわれるかや、がんや糖尿病などとの関係も研究が進んでいる。

人類全体の知の地平を切りひらいた大隅さんに、心から拍手を送りたい。ただ、今、大学などの研究現場から悲鳴が上がっていることを考えると、とても浮かれてはいられない。大隅さんのように自由な発想で研究する仕組みが崩壊しかかっているのだ。

大隅さんも昨年、科学研究費助成事業をしている日本学術振興会への寄稿で「大学や研究所の経常的な活動のための資金が極端に乏しくなってしまった」と強い危機感を表している。研究の「選択と集中」の名の下に、研究費獲得を研究者に競わせる政策が行き過ぎた結果、日本発の論文は質、量とも一時の輝きを失っている。

冒険を避けて、確実に成果が見込めそうな研究を提案する風潮が強まり、研究者志望の若者も減っているのだ。政府が研究の実用化、「出口戦略」ばかり求めることにも大隅さんは異議を唱えている。 「すぐに企業化できることが役に立つと同義語のように扱われる風潮があるが、何が将来本当に人類の役に立つかは歴史によって検証されるものだ」

研究室で大隅さんは若手に自由に研究させた。科学技術政策には再考が求められている。
(2016.10.04朝日新聞社説より抜粋)





☆☆☆やんジーのつぶやき
自由な発想で研究する仕組みが崩壊しかかっているという。
成果主義の弊害といってしまえば、それまでだが、日本発の論文が質、量ともに一時の輝きを失い、官能を沸騰させるような研究が少なくなっているのは、まことに寂しい。












































































by my8686 | 2016-10-04 13:04 | 徒然なるままに | Trackback | Comments(0)