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トランプの強撃「日本車たたき・貿易不公平」を読み解く

「TPPから永久に離脱。日本の自動車貿易は公平ではない。」
本格始動したトランプ米大統領が23日に投げかけたのは、日本への強烈な一撃だった。




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アジアの成長を取り込み、中国を意識した同盟強化を果たすという狙いが一転、厳しい貿易交渉を迫られかねない状況に陥り、日本は戸惑いを隠せない。




あらためて、この内容を読み解いてみよう。






■輸出半減、関税ゼロなのに

トランプ大統領の発言が伝わった24日朝、日本の大手自動車メーカー幹部は怒りをあらわにした。

「新大統領はあまりにも単純すぎる。国際ビジネスのことも、製造業のなんたるかも、分かっていない」


大統領に就任すれば、現実的な対応に変わるのでは――。そんな淡い期待を裏切り、勢いを増すトランプ氏の「日本車たたき」だが、「言いがかり」ですまない影響も出つつある。
この日の東京株式市場では、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダ、マツダが1~2%程度値下がりするなど、自動車関連株が軒並み下落した。





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自動車業界には過去にも、米国に煮え湯をのまされた生々しい記憶が残る。

繊維、鉄鋼、半導体……。米国は対日貿易赤字が広がった1960~90年代にかけ、特定の産業分野をやり玉に挙げて日本側に輸出の自主規制などの要求を繰り返した。とりわけ、80~90年代の日本車をめぐる貿易摩擦は強烈だった。

90年代のクリントン米政権は、自動車や自動車部品の対日貿易赤字は「日本市場の閉鎖性が原因」と主張、数値目標つきの輸出規制などを求めた。日本の高級車に高関税をかける制裁の発動もちらつかせ、最後は日本メーカーが自主的に米国での生産を増やすことなどを決めて決着した。

業界にとって、トランプの言動は、当時の米国側の主張をなぞっているように見える。だが、日本メーカーの現地生産は進み、構図は大きく変わっている。





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ピーク時の86年に343万台あった日本から米国への自動車輸出台数は、2015年には160万台に減った。
一方で、85年に30万台に満たなかった米国での生産台数は、384万台と10倍以上に増えた。米国内の日本の自動車関連産業の雇用者数は約150万人にのぼる。米国の貿易赤字に占める日本の割合も1991年の65%から減り続け、2015年には9%と、中国(49%)、ドイツ(10%)に次ぐ3番手だ。

さらにトランプは、日本での米国車のシェアが0・3%にとどまるのに対し、米国での日本車のシェアが40%近いという現状を問題視している。




■菅氏「事実誤認」

これに対し、世耕弘成経済産業相は24日の記者会見で、「日本では米国の自動車に関税はまったくかからない。関税以外の部分でも日本車と比べて差別的な取り扱いはしていない」と強調。
菅義偉官房長官は24日のBS日テレの番組で「(トランプ氏の批判は)事実誤認ですから。首脳会談をし、関係閣僚が説明していくことが大事」と述べた。






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日本は、6・4%だった自動車関税を1978年に撤廃しており、逆に今は米国が日本車に2・5%の関税をかけている。別の自動車メーカーの幹部も「そもそも米メーカーは日本市場を重視していないということを冷静に考えてほしい」という。実際、米フォード・モーターは昨年、日本市場から撤退したばかりだ。

ただ、90年代の自動車交渉を経験した経産省幹部は「米国が無理難題を要求してくるのは以前も同じだった」と警戒感を強める。日本の自動車大手幹部も「米国の生産拠点がある州の議員に働きかけていかなければ」と話し、対応を急ぐ考えだ。





■対日赤字是正訴え「まるで80年代」

「公平ではない。話し合う必要がある」。トランプ氏は23日午前、米大企業のトップを前に、日本との自動車貿易について、何らかの是正を求めていく考えを強調した。
その後、ホワイトハウスの執務室で、TPPから離脱する大統領令に署名。「米国の労働者にとって素晴らしいこと」と誇らしげに書面を掲げて言った。

「多国間」の貿易交渉にケリをつけ、貿易赤字を解消するために「二国間」の交渉に持ち込む戦略を描く。トランプ政権の経済ブレーンが照準を合わせているのが自動車産業だ。

貿易政策の司令塔を担うナバロ国家通商会議(NTC)議長やロス次期商務長官は、域内の原材料や部品をどのぐらい使えば関税撤廃の対象にするかを決める「原産地規則」の見直しを狙っている。
たとえば、トランプ氏が再交渉を求めている北米自由貿易協定(NAFTA)では、域内の部品を62・5%以上使った車は無関税としている。この割合をもっと引き上げて米国内の部品メーカーを使うよう迫るとみられる。






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気がかりなのはトランプ氏の「対日観」だ。この日の企業のトップとの会談で、トランプ氏は「日本では、我々の車の販売を難しくしているのに、数十万台の車が大きな船で米国に入ってくる」と語った。大統領選中も「何百万と車を送り込み、雇用を奪う」などと日本批判を繰り返した。
こうした発言について、ニューヨーク・タイムズ紙は「80年代の対日観が更新されていない証拠」とし、貿易摩擦で対立した日本のイメージを引きずっていると指摘している。






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安倍政権が2月上旬以降で調整を進めている日米首脳会談でも、トランプ氏から何らかの是正策を求められる恐れがある。








☆☆☆やんジーのつぶやき
トヨタの世界戦略車構想に陰りが一瞬よぎる。
トランプの時代錯誤観を戒める粘り強い交渉が、今からは必要となろう。
しかし、それも淡い期待に終わってしまうことも覚悟がいる。


















































































by my8686 | 2017-01-25 09:42 | メーク・イン・アメリカの行方 | Trackback | Comments(0)