「黒田緩和、見えぬ[出口] 5年目に物価上昇見通せず」を読み解く

日本銀行が黒田総裁の就任後に始めた大規模な金融緩和は4日、5年目に入った。
大量の国債買い入れやマイナス金利など、世界でも異例の政策を打ち出したが、「物価上昇率2%」の目標は、来年4月までの総裁任期中の達成は事実上断念。
出口が見えない政策が続き、低金利を背景に政府の財政が拡張し続けるリスクが膨らんでいるという。




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あらためて、この内容を読み解いてみよう。



4日、東京都江東区のあるスーパー。女性客が1パック300円の塩鮭を手にとった。切り身より2割ほど安い鮭カマで、女性は「いろんな物の値段が上がっていて年金暮らしには厳しい。これは安くておいしいから助かる」。
スーパー店長は「卵でも小さいサイズ、魚なら安い部位が売れる。お客さんの節約志向は強まっている」と話す。

日銀の大規模緩和は、銀行などから国債を買って、代わりに市場に流し込む金の量を「常識を超える極めて巨額なもの」(黒田総裁)とするものだった。金利を下げ、円安や株高を呼び、「景気はこれから良くなる」という認識を世間に広め、実際に物価や賃金の上昇にもつなげる戦略だ。
日銀内でも「かなり挑戦的」(幹部)とされた「2年で物価上昇率2%」の目標を打ち出したのも、景気浮揚への本気度を示し、投資や消費を活発化させる効果を狙ったものだった。





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それから4年。円安や株高は進み、企業収益は改善し、人手不足で失業率は下がった。
しかし、賃金は期待したほど伸びず、消費税や社会保障費の負担も増えている。企業収益増が実感として人々に行き渡っていない。

円安・株高は、リーマン・ショック後の世界経済回復の流れで起きた面もあり、「運とタイミングに恵まれ、どこまでが金融政策の成果かはわからない」(生命保険チーフエコノミスト)との評価も多い。




■将来のリスク棚上げ

物価上昇率は14年に1%台半ばに上がった。日銀内では黒田総裁の政策に懐疑的だった幹部からも「このまま上がるかも」との声が出た。しかし14年4月の消費増税後、落ち込んだ消費はなかなか戻らなかった。

同年10月の追加緩和で手を打ったが、海外経済の減速もあって景気は伸び悩む。16年1月のマイナス金利政策の導入では、想定外の金利の急低下で年金運用が悪化し、かえって消費者心理を悪化させる結果にもなった。同年9月には抜本的に政策を見直し、金利の急低下を防ぐ長期金利操作に踏み切った。

しかし物価上昇率はなおゼロ%前後にとどまる。2%の達成時期の見通しは「18年度ごろ」となり、黒田総裁の任期が切れる18年4月までの達成は事実上断念した。





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巨額の国債買い入れを続けた結果、日銀の国債保有残高は3月20日時点で423兆円と、発行残高全体の約4割を占める。将来、政策目標の達成後に保有する国債を売るなどして減らすのは難しくなっている。金利が跳ね上がりかねず、日銀が国債の売却損を被りかねないからだ。

黒田総裁は「出口戦略を議論するのは時期尚早だ」と、将来のリスクへの言及を避け続けている。みずほ証券の上野泰也チーフエコノミストは「後戻りできないような金融緩和を、やめる道筋もつけないまま続けているのは無責任だ」と指摘する。




■打開策に財政拡大も

金融政策が手詰まりになりつつあるなか、財政政策で状況を打開しようという声が強まっている。

その急先鋒が、4日にも安倍首相と面会した経済ブレーンで内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授だ。

大胆な金融緩和によるデフレ脱却を進言してきたが、最近はクリストファー・シムズ米プリンストン大教授の「シムズ理論」に着目。
同理論は物価が上がるまで財政も大胆に拡大するべきだとするもので、浜田氏は、物価目標達成までは消費増税を凍結し、財政支出を増やすべきだと訴えている。





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与党内では、教育無償化のため「教育国債」を発行する案も浮上。財政健全化は一層遠のいている。
膨らむリスクに、野党には追及を強める動きも出てきた。

民進党は4日、異次元緩和のリスクを検証し、「出口」戦略を話し合う作業部会を発足させた。この日の初会合で、座長の古川元久・元経済財政相は「これだけ借金しても何も起こらない、日銀が(国債を)引き受ければ大丈夫と言われているが、そんな打ち出の小づちみたいなことはあり得ない」と安倍政権を批判した。




さらに、「シムズ理論」についてみてみよう。

この「シムズ理論」の核心は、政府の「いい加減さ」にあり、国債も全部は償還できない、財政赤字を増税などで穴埋めもしない、と言って国民を不安に陥れることにある。
そして2017年度予算が通り、歳出が97兆4500億円、税収は57兆7100億円で、前年に比べて税収が1000億円増加する一方、歳出は7000億円増加。まさに「いい加減さ」を露呈してしまった。




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ところが、この2017年度予算に対して、財務省幹部は「管理された財政拡張」つまり、歳出増大によって借金は増えるが、まだ財政当局のコントロール下にある、と発言。
これは、ある意味では「シムズ理論」の「邪魔」になり、国民を不安視させるのが「シムズ理論」のミソなのか。






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そうなると、将来の増税、歳出削減などを国民が予想し、結果的にデフレになる、とシムズ教授自らが指摘する。日本はこれまでさんざん財政赤字を拡大し、世界の主要国の間でも最もGDP比で債務残高が大きな国となった。
それでもインフレにならない理由として、シムズ教授は「いずれ増税で穴埋めされる」との期待がデフレをもたらしていると説明している。









☆☆☆やんジーのつぶやき
理論の実態がわかれば、日本では「シムズ理論」は国民が受け入れまい。
インフレにして財政の実質負担を軽くすることは、汗水たらして蓄えた貯蓄の価値がインフレで減少することの裏返しである。
国民を犠牲にした財政再建で、それに使われる「シムズ理論」は「悪魔の経済学」とも言えよう。
それよりも、国民にとっては今のインフレ・ゼロの方がはるかにましであろう。


































































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by my8686 | 2017-04-05 10:10 | たまには気になる経済学 | Trackback | Comments(0)

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