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「できた! 夢のカーボンナノベルト 60年前に存在予言」を読み解く

6個の炭素原子でできた正六角形の構造が環状につながった新しい分子「カーボンナノベルト」の作製に、名古屋大学の研究チームが成功した。
60年前に存在が予言されたが誰も作れなかった「夢の分子」で、半導体や発光材料など様々な応用が考えられるという。




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14日付の米科学誌サイエンスで発表される。





あらためて、その内容を読み解いてみよう。


伊丹健一郎教授(合成化学)らが作製したカーボンナノベルトは、正六角形の構造が12個つながり、直径約100万分の1ミリの環状になっている。



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これまで正六角形が帯状につながったものを丸めて環状にする研究が進んでいたが、六角形構造をひずませるのが困難で成功していなかった。
伊丹教授らは六角形構造が出来上がっていない段階で先に環状にすることで、課題を解決した。



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ナノベルトに炭素原子を付け足す反応を繰り返せば、筒状の分子「カーボンナノチューブ」も作製できる。



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ナノチューブは様々な応用が進んでいるが、現在の作製方法だと太さがそろわず性質もバラバラのものができてしまう。
ナノベルトを元にすれば、太さのそろったナノチューブをつくることも可能だという。

伊丹教授は「化学者が夢見ていた分子をつくることができた。未知の機能が見つかる可能性もある」と話している。




さらに、カーボンナノベルトの合成研究の論文要約をみてみよう。


Synthetic Studies on Carbon Nanobelt

■論文内容の要約

新奇π共役系化合物の合成は、合成化学における重要課題のひとつである。
例えばペンタセンやフラーレンといったπ共役系化合物はこれまで、化学のみならず材料科学やナノカーボン科学など、広く科学の進展に貢献してきた。π共役系化合物の中でも、本来平面構造である芳香環がベルト状に曲がった骨格をもつ化合物群は、特に注目を集めている。

シクラセンやシクロフェナセンに代表されるベルト状芳香族炭化水素は、その美しい構造から多くの科学者を惹き付けてきた。



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ベルト内外に固定化されるπ共役によって引き起こされる特異な電子物性や、空孔を利用したゲスト分子の包接、カーボンナノチューブ合成への応用など、様々な機能発現や応用展開が期待されている。
長く合成研究が行われてきたにも関わらず、芳香環からなるベルト状構造を構築することの困難さゆえに、現在でも未だそれらの合成は達成されていない。

本研究では、ベルト状芳香族炭化水素のひとつを『カーボンナノベルト』と名付け、その世界初の合成を目指した。
2008年、ベンゼン環がパラ位で環状につながったリング状分子であるシクロパラフェニレン(CPP)の合成が達成された。またCPP合成を応用することで、現在では、カーボンナノリングと呼ばれるCPP誘導体も数多く合成されている。





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そこで、カーボンナノベルトに誘導可能な二種類のカーボンナノリングの設計・合成・性質評価を行い、それらの変換によるカーボンナノベルトの合成を試みた。

本論文は四章により構成されている。
各章の概要を見てみよう。

第一章では、ピレン環とベンゼン環からなるカーボンナノリングであるシクロパラフェニレンピレニレン(CPPyr)の合成および性質、またカーボンナノベルトへの変換に向けた展望について論じている。

第二章では、9個のナフタレン環が1位および4位でつながったカーボンナノリングであるシクロ-ナフチレンの合成および性質について論じている。

第三章では、様々なリングサイズのCNの合成および性質について論じている。

第四章では、カーボンナノベルトの合成に向けたCNの変換反応の検討について論じている。







☆☆☆やんジーのつぶやき
カーボンナノベルト合成がついにできた!!
ベルト状芳香族炭化水素の合成に新たな世界が広がる。












































by my8686 | 2017-04-14 11:07 | 徒然なるままに | Trackback | Comments(0)