「仏大統領選、例を見ない混戦」を読み解く

例を見ない混戦となっているフランス大統領選。主要候補の論戦が熱を帯びているという。



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あらためて、主要候補者の主張レポートを読み解いてみよう。


欧州連合(EU)や共通通貨ユーロからの離脱を問う国民投票など、過激な公約を掲げる右翼・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首。


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「右でも左でもない」と称するエマニュエル・マクロン前経済相。



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最大野党・共和党の右派フランソワ・フィヨン元首相。




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左翼ジャンリュック・メランション氏。



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「これまでの政治に失望している。フランスの産業を守れるのはルペン氏だ」
対ドイツ国境に近い仏東部フォルバックで建設資材会社を営むパスカル・ジェンフト氏は、ユーロ離脱を訴えるルペン氏に投票すると決めている。

周辺の個人宅向けに製品を販売しているが、フランスより人件費の安いドイツやポーランドから安い建設資材が流入して、競争は激しくなるばかりだ。地元では同業他社が工場閉鎖に追い込まれている。

ルペン氏は、EUやユーロ離脱を問う国民投票の実施が公約だ。「ユーロはドイツには適していてもフランスには適さない」と批判を繰り返す。ジェンフトさんはこの主張にうなずく。

欧州では1999年に共通通貨ユーロの導入で通貨を統合した。欧州中央銀行(ECB)が、ユーロを使う19カ国全体の経済状況をみて政策金利を決める。

ジェンフトさんは「フランスが自ら調整できる力を持つべきだ」と言う。自国通貨のフランに戻れば、通貨切り下げでドイツなどからの輸入を食い止めることができると期待する。

支持率が急上昇し、ルペン氏を追うメランション氏も、EUに懐疑的な姿勢を示す。EUとの関係見直し交渉がうまく進まない場合、EU離脱を問う国民投票を実施する考えを示す。



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反対に、マクロン氏は「EUは我々を守る存在」と訴える。サルコジ元大統領時代に首相を務めたフィヨン氏も、親EUの立場からEU改革を訴える。
フランスがEUやユーロから離脱すれば、世界経済に与える影響は大きい。

パリの経済シンクタンク「OFCE」の経済分析責任者のエリック・エイヤーさんは「フランスが抜ければユーロ圏は終わりだ」と心配する。独仏中心にギリシャなどを支援し、ユーロ圏の結束を保ってきた。フランスが離脱すれば、負担が大きくなるドイツにもユーロを維持するメリットは薄れるとみる。

金融市場も、ユーロは売られ、欧州各国の株価が大きく下落するとみられる。スイスの金融大手UBSインベストメント・バンクは3月末のリポートで、一時的な影響としてユーロ圏の株価指数が最大35%ほど下がるシナリオを紹介した。

仏経済にも打撃は必至だ。新しいフランの価値はユーロに対して値下がりする可能性が高い。輸入品などが急激に値上がりするおそれがある。パリ第8大学のオリビエ・パストレ教授は「物価の値上がりで最も打撃を受けるのは、中低所得者層だ」と指摘する。

仏政府が発行するユーロ建て国債は、価値が低いフラン建てに強制的に置き換えられる可能性もある。国債を持つ投資家が損失を被るおそれが懸念される。

フランス国民の間でも、ユーロ離脱への警戒感は根強い。欧州委員会の世論調査では、共通通貨ユーロを前提とした現在の経済統合に反対するのは28%で、68%は支持している。

パリ近郊で、航空機部品を製造し、米国など10カ国以上に輸出している会社のピエール・ブゥトラ会長(66)は「ユーロは取引に安定を与えてくれる。フランで都合よく為替を操作できると考えているのは間違いだ。経済力のないフランスは世界の大国に翻弄される」と話す。





■高い失業率、改善訴え

仏大統領選では、雇用問題も大きな争点の一つだ。



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米家電大手ワールプール社は1月、約290人が働く仏北部アミアンの乾燥機組み立て工場を来年6月に閉鎖してポーランドに移すと明らかにした。これにルペン氏がかみついた。

同社を名指しで批判。国外に移った工場からフランスに輸出される製品に35%の関税を課す方針を表明した。その保護主義的な政策は、米国内の雇用を守るため、海外に移転する企業に「国境税」を課すと脅すトランプ米大統領と重なる。

オランド政権も国内雇用維持のため、1千人以上の従業員を持つ企業が工場を閉鎖する際は売却先確保を義務づけるなどしてきたが、企業への国家介入をさらに強めるルペン氏に期待する声が上がる。

アミアンの工場で働くフレデリック・ショントレさん(49)は「移転を食い止める、よいアイデアだ。ルペン氏は雇用を守ってくれる」と歓迎した。

2月のフランスの失業率は10%と、ドイツ(3・9%)を大きく上回る。特に24歳以下の若者の失業率は23・6%と、ほぼ4人に1人が職に就けていない。
ドイツに比べ、硬直的な労働規制や、雇用にかかる企業の社会保障費負担の重さが一因とされる。

企業がより柔軟に雇用できるよう、規制緩和の必要性を訴えるのは、フィヨン氏やマクロン氏だ。フィヨン氏は週35時間の労働時間規制の撤廃を主張。マクロン氏は雇用増のために5年間で500億ユーロを投資する計画を掲げる。一方、メランション氏は最低賃金の引き上げなど、労働者保護の充実を訴える。

労働問題に詳しいパリ経済学校のトマ・ブレダ研究員は、ドイツは非正規労働などの規制緩和で失業率を下げた一方、低賃金労働が広がったと指摘。「フランスでは、ほかの先進国に比べて賃金格差は広がっていない。どちらの道に進むのか、まさに政治の選択次第だ」と話した。




■移民問題も焦点に

移民問題も、EUやユーロ、雇用問題に劣らず、国民の関心が高い。
2015年1月の週刊新聞「シャルリー・エブド」襲撃事件以来のテロの連続で230人以上が死亡。移民とイスラム過激主義やテロを結びつけて語るルペン氏の主張はここでもかなり強硬だ。




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フランスでは、1年間に新たに受け入れられる合法的な移民が、国を離れる移民の数を15万人ほど上回るとされる。

この数を年1万人に抑えるというのがルペン氏の公約だ。母国から家族を呼び寄せる権利をなくし、生まれた子供が国籍を取得できる出生地主義も撤廃するという。移民の権利制限に重点を置く、かなり強引なやり方だ。

難民も領土内には入れず、在外公館で審査すべきだと訴える。

フィヨン氏も移民規制派。年間受け入れ数を「必要最低限」に減らすため、家族の呼び寄せの条件を厳しくするという。フィヨン氏はルペン氏と、対EU関係や経済問題で意見をたがえるが、移民政策やイスラム過激主義対策では似通う主張も多い。

2人とは対照的に、マクロン氏は「社会の多様性」重視を打ち出す。フランス語習得の機会を提供するなど、社会に溶け込むための支援や不法移民の効果的な送還を訴える。「大量な移民」のマイナスイメージを払拭することに必死だ。

今回の選挙は、2015年11月のパリ同時テロ事件後に敷かれた非常事態宣言下で行われる。テロ防止のため、情報機関の再編・強化や警察の増強が必要だとする点では、ルペン氏も含めた主要候補が一致する。

ただ、ここでもルペン氏は「モスクへの外国からの資金提供禁止」など反イスラム主義を前面に出して突出している。「敵対的な組織」に関与した人物の予防的な拘束を可能にする法整備や、「シリアやイラクで戦闘にかかわった二重国籍者からの仏国籍剝奪」が必要だと訴える。

テロ関連で有罪となった二重国籍者からの仏国籍剝奪は、フィヨン氏も同様の主張を掲げている。









☆☆☆やんジーのつぶやき
フランスで多発しているテロや移民問題がEU離脱の機運を助長させている。
これが極右政党である「国民戦線」の人気を高めている理由でもあろう。

ルペン党首が発表した114の公約とやらが、はたしてどこまで実現可能なのか、疑心暗鬼で静観している他国民も多い。仮にルペンが勝利を収めたとしても、「EU離脱を問う国民選挙」を行うことは上院・下院の承認を必要とする。

変革気運を煽る戦法に嵌められたあとの始末だけは、しっかりとしておきたい。







































































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by my8686 | 2017-04-19 11:16 | ヘビーな話は、謹んで | Trackback | Comments(0)

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