是枝監督作映画「万引き家族」カンヌ最高賞受賞を読み解く

21年ぶりの快挙である。新聞報道の見出しに『「フジとタッグ」射止めたカンヌ、是枝映画に商業性足す』とある。




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あらためて、その内容を読み解いてみよう。


今の日本映画界の礎は、芸術面からも商業面からも1990年代後半に作られたと言えるのではないか。
ドキュメンタリー作家だった是枝裕和監督が、初の劇映画「幻の光」でベネチア国際映画祭のコンペティション部門に参加したのが1995年。それ以後、3大映画祭で徐々に地歩を固めていき、今回ついに頂点を射止めた。





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彼と同じく90年代に国際舞台にデビューした監督に北野武、河瀬直美、黒沢清らがいる。そしてこの20年余り、4Kと称される彼らが“国際試合”の日本代表として日本映画の芸術面をずっと支え続けてきた。

98年。テレビドラマを映画化した「踊る大捜査線 THE MOVIE」が公開され、興行収入101億円のヒットとなった。製作したのは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったフジテレビだ。

ちなみに、この年の日本映画と外国映画の興収シェアは3対7。圧倒的に「洋高邦低」の時代だった。ところが、「踊る」のヒットをきっかけに観客の志向が変化する。

フジを先頭走者とするテレビ局主導映画が若者らの広い支持を受け、00年代半ばに邦洋のシェアが逆転。「邦高洋低」の時代が今も続いている。




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テレビ局映画は大量の観客を集める半面、どうしても芸術性や社会性を軽視する傾向にある。テレビ局が作る娯楽大作と、それ以外の低予算の芸術映画。日本映画は2極化が進んだ。

この2極化を食い止めようとタッグを組んだのがフジと是枝監督である。

13年、フジは、人気スターの福山雅治を主演に迎えた是枝作品「そして父になる」を製作する。この作品がカンヌで審査員賞を獲得し、32億円の興収を上げて商業性と芸術性の両面で成功する。是枝監督の劇映画は、今回の「万引き家族」まで5本連続でフジを中心とする製作委員会で作られている。

是枝監督はデビュー当時こそ、先鋭な手法や主題が際立っていたが、「奇跡」(11年)では、九州新幹線開業に合わせてJR九州が企画した作品を手がけるなど、商業性と芸術性の融合に力を注いできた。




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「そして父になる」で初めてタッグを組んだ時に映画事業局長だった亀山千広BSフジ社長は言う。「カンヌの授賞式前、是枝監督と『今が一緒に組む絶妙のタイミングだった』と話し合ったのを覚えています」

芸術性と商業性、お互いに足りないものを補い合って、映画監督として、映画会社として、新たな地平に進もうとするタイミングだったということだろう。その成果が今回のパルムドールだ。
先鋭的な作品ではなく、商業性も兼ね備えた作品で日本映画が評価を得た意味は大きい。

かつての日本映画の巨匠たち、例えば黒澤明や溝口健二、小津安二郎らは、大手映画会社のエース監督であり、スター俳優を使って話題作を撮ってきた。
そもそも映画とは、非常に幅広い層にアピールしうるという、ハイカルチャーが持ち合わせない長所をもったメディアだ。





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今回は無冠だったが、もう1本のコンペ出品作、濱口竜介監督の「寝ても覚めても」もまた、39歳の新鋭監督が東出昌大というスター俳優の主演で撮った、初めての商業映画だった。
今年のカンヌの結果は、これからの20年、日本映画が歩んでいく方向を指し示している。




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☆☆☆GGのつぶやき
商業性と芸術性を両立させた映画作品でのカンヌ最高賞受賞は意味深い。
日本映画の方向性を指示したといわれる本作。
はたして、いかほどの映画なのか。公開が待ちどおしいと思える久しぶりの作品である。





























































































































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by my8686 | 2018-05-21 16:50 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

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