あの「モサック・フォンセカ」から、新たに120万件の電子ファイルが流出したという。
「モサック・フォンセカ(MF)」は、各国首脳らとタックスヘイブン(租税回避地)の関わりを明るみに出した「パナマ文書」の流出元となったパナマの法律事務所である。
2年前に一連の報道が始まった後、各国の捜査当局への対応を迫られたり、顧客からの多くの苦情への対応に追われたりした混乱ぶりが示されているという。
前回と同様、南ドイツ新聞が入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)を経由して、朝日新聞など各国の報道機関が共有した。多くは2016~17年の2年間に作成されたものだという。
新たなファイルからは、MFが、管理する法人の本当の所有者がだれなのかを把握できていなかった実態が浮き彫りになった。英領バージン諸島で70%、パナマで75%の法人の所有者が不明だったという。
一連の報道で指摘されたアルゼンチンのマクリ大統領やサッカーのメッシ選手の関係会社について、MF内でその実情や対策を議論した記録もあった。MFは今年3月に事務所を閉鎖している。
あらためて、「パナマ文書」流出騒動の中味を読み返してみよう。
アイスランドのグンロイグソン首相、ウクライナのポロシェンコ大統領、サウジアラビアのサルマン国王、アルゼンチンのマクリ大統領ら現旧指導者12人を含む公職者140人の関係会社。
英国のキャメロン首相の亡父や中国の習近平(シー・チンピン)国家主席の義兄の会社、パキスタンのシャリフ首相の息子や娘の会社が明るみに出た。
プーチン大統領の親友のチェロ奏者ロルドゥーギン氏がタックスヘイブンの複数の会社の所有者となっており、そこに資金が流れ込んでいたことも判明。この結果、16年4月にグンロイグソン首相が辞任。17年7月にはシャリフ首相が辞任に追い込まれた。
ICIJの16年暮れのまとめによると、欧米の大部分の国々、韓国、インド、豪州を含む約80カ国で少なくとも150件の捜査・検査・訴追・逮捕がこの報道をきっかけに行われた。
法人を含め6500の納税者が当局の調査の対象となり、コロンビアやメキシコ、スロベニアなどの当局が「パナマ文書」の情報を使って少なくとも約1億1千万ドル(約120億円)相当の資産を差し押さえた。
さらに数十億ドル(数千億円)が脱税の疑いで追跡の対象となっているという。
17年2月には、震源地となった「モサック・フォンセカ」の創業者2人がパナマ当局に資金洗浄(マネーロンダリング)の容疑で勾留された。
日本関連の個人や法人については、日本の国税当局が調査し、17年6月までに所得税など総額31億円の申告漏れがあったことがわかった。ほかに自主的に数億円規模の修正申告をした個人も複数いたとされ、文書をきっかけに把握された申告漏れは少なくとも40億円弱に上るとみられる。
一方、トランプ大統領は対照的だ。大統領選投開票の1カ月余前、納税を逃れているのではないかと指摘されると、「賢い」と切り返した。
「法的義務以上の税金を払わない責任」を投資家や債権者に負っていると強調し、「これまでのどの大統領候補より税法をよく知っている」と言い放った。大統領になると、法人税の税率を大幅に引き下げた。
英国は今年5月、英領バージン諸島、ケイマン諸島など英領のタックスヘイブンの島々に対して、ペーパーカンパニーの所有者を登記・公開するよう求めることにしたという。
高度の自治権が認められている英領の島々に本国が介入するのは異例である。反発の声も出ているが、パナマ文書の報道が英国の決断を後押しした。
☆☆☆GGのつぶやき
公開することで、監視レベルを高め、資金洗浄に絡む裏社会を透かせるべきであろう。
3年前にも米ネット決済サービスリバティー・リザーブが起訴され、60億ドルが資金洗浄されたと報じられている。しかし、多発テロ後のEU内にできた手形交換所の実態は不明のままである。