三連休初日の土曜休日早朝、レンタルしたDVD映画「ゴールド/金塊の行方」を観る。
2016年制作の米国のサスペンス映画。1990年代に北米、カナダの株式市場に大混乱をもたらした、詐欺事件「Bre-X事件」をもとにした犯罪サスペンスである。
オスカー俳優マシュー・マコノヒーが驚異の肉体改造を経て主演&製作。監督は『シリアナ』『トラフィック』のスティーヴン・ギャガン。
実際の事件はもっと組織ぐるみの犯罪だったようだが、映画の方はマシュー・マコノヒー扮するケニーとエドガー・ラミレス扮するマイケルの二人にしぼり、時代も1980年代に設定し、オリジナルな展開を見せている。
採掘業という一発あてれば莫大な富が入ってくる一方、失敗すれば、破産同然の状態になるなど実に浮き沈みの激しいものであり、実際、ケニーの生活もジェットコースターのように激しく変動する。
欲と道連れの世界で、そこには金の亡者たちが自然に集まってくる。中でもケニーたちの功績を横取りしようとするウォール・ストリートの巨大投資銀行や大手採掘会社などのやり口は、一言で言えば「えげつない」。
ただし、ケニー自身は一攫千金を夢見る金の亡者とは一線を画し、自分の職業に誇りを持ち、父親を尊敬している。そこがマネーゲームを題材にしたウォール・ストリートを舞台とした映画群とはひと味違うところであろう。
莫大な金が入ってくる条件をはねつけ、自分も現場に立ち、泥に塗れることを望む男。そうした彼のキャラクターが、映画を快活なものにしている。さらに注目したいのは、ケニーとマイケルの友情。ケニーの「金を探していたら友を見つけた」という言葉は嘘偽りのない本音であろう。
終盤、あっといわせる展開に、友情が崩れたかに見えるが、ラストの紙ナプキンに書かれた契約文が泣かせる。
脚本は、『トゥームレイダー』のパトリック・マセットとジョン・ジンマン。
イギー・ポップが書き下ろした主題歌「GOLD」は、第74回ゴールデングローブ賞 主題歌賞にノミネートされている。
さらに、この映画ネタとなった「Bre-X事件」を読み解いてみよう。
この詐欺の舞台となったブリエックス(Bre-X)という企業のピークの時価総額は5500億円くらいあったという。嘘のスケールとしてはとてつもなく大きいものだったことが窺える。
このエピソードの発端はフィリピン人鉱山技師、マイケル・デグスマンがインドネシアのボルネオ島のジャングル奥深く、ブサンという土地で金鉱脈を発見したと宣言したことから始まる。デグスマンは鉱山技師ジョン・フェルダホフと組み、この探索の資金繰りを付けてくれる会社を探す。
かれらが白羽の矢を立てたのがカナダの落ち目の実業家、デビッド・ウォルシュ。デビッドはこの金鉱脈の話がでっち上げだとは知らず、ブリエックスという会社を創業する。
デグスマンは「塩撒き(salting)」という手法でドリリング・サンプルにゴールドを混ぜ、それを検査所に送る。検査の結果、「ブサンにゴールドがあるぞ!」とわかるとブリエックスの株価は暴騰し始める。
しかし巨大な富がボルネオ島に眠っていることを知ったインドネシア政府はその権益を横取りすべく採掘権をキャンセルし、半分を自分の息のかかったフリーポート・マクモラン(FCX)社に譲渡する。
フリーポートは同じインドネシアに現存する、世界最大級の金山、グラスバーグの所有者。とろこがフリーポートの探索チームがブサンに乗りこんで、ブリエックスのボーリング場所とすぐ隣接する場所でドリリングした結果、ぜんぜんゴールドが無いことがわかる。
その時までにデグスマンとフェルダホフは自分の持ち株を一部処分し、大金持ちになる。しかしフリーポートはこの話が詐欺ではないかと疑い、デグスマンに説明を求める。
デグスマンはボルネオ島のジャングル上空でヘリコプターから飛び降り(一説には突き落とされたという説もある)自殺をはかる。しかしこの自殺は巧妙に仕掛けられたトリックだという疑惑もあり、真相はわかっていない。
フェルダホフはカナダ司法の手のおよばないケイマン島に逃げ、騙されたウォルシュはバハマに移住した2年後に心臓発作で死んでしまう。
マーク・トウェイン曰く、「金鉱とは空っぽの穴の横にうそつきがひとり立っている場所だ」
☆☆☆GGのつぶやき
組織ぐるみの詐欺事件も珍しくはなくなった。
疑心暗鬼、米北の狂ったボス猿たちの摩訶不思議な挙動も、油断できない局面にある。
マウントゴックスやコインチェックの仮想通貨不正流出にも組織ぐるみのキナ臭さが漂う。