人気ブログランキング | 話題のタグを見る

DVD映画『婚約者の友人』を読み解く

三連休最終日の月曜早朝、レンタルしたDVD映画『婚約者の友人』を観る。


2017年フランス、ドイツ合作映画である。原題は、Frantz。

監督は、「8人の女たち」のフランソワ・オゾン。

エルンスト・ルビッチ監督作「私の殺した男」の原作としても知られるモウリス・ロスタンの戯曲を大胆に翻案してオリジナルストーリーとして昇華させ、モノクロとカラーを織り交ぜた美しい映像で描いたミステリードラマとなっている。





DVD映画『婚約者の友人』を読み解く_c0352790_15281445.jpg




第1次世界大戦後のドイツを舞台に、戦死した青年の友人を名乗る男性と、残された婚約者や遺族の交流を描く人間ドラマである。
エルンスト・ルビッチ監督作『私の殺した男』の基になった戯曲を、フランソワ・オゾン監督がアレンジ。

『イヴ・サンローラン』などのピエール・ニネが、婚約者の友人を演じる。

ヒロインにオーディションで選ばれたパウラ・ベーアが扮し、第73回ベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞している。





DVD映画『婚約者の友人』を読み解く_c0352790_15283264.jpg





1919年のドイツ。婚約者のフランツが戦死し悲しみに暮れるアンナ(パウラ・ベーア)は、フランツの墓に花を手向けて泣いているアドリアン(ピエール・ニネ)と出会う。フランツと戦前のパリで友情を育んだと語る彼に、アンナとフランツの両親は次第に心を開いていく。やがてアンナがアドリアンに婚約者の友人以上の感情を抱いたとき、彼は自らの秘密を明かし……。

フランソワ・オゾンが初めて戦争を題材にした本作は、エルンスト・ルビッチが1932年に映画化したBroken Lullabyと同じ戯曲を元にしているものの、ほとんど別物となっている。




あらためて、女性の視点からの評論を読み解いてみよう。


ドイツ出身のルビッチがフランス人の青年の視点から描いたのに引き換え、オゾンは恋人を失ったドイツ人女性の立場から描き、後半も大胆に書き変えている。それぞれが他国のキャラクターに寄っているのが面白いが、オゾン版は残された婚約者の視点に添うことで、ミステリーと恋愛ドラマの要素を膨らませている。





DVD映画『婚約者の友人』を読み解く_c0352790_15291377.jpg




第一次大戦の傷跡が色濃く残るドイツの田舎町で、身寄りのないアンナ(パウラ・ベーア)は、亡き婚約者フランツの両親と暮らしていた。ある日フランツの墓で見かけた、見知らぬ男が訊ねてくる。アドリアン(ピエール・ニネ)と名乗るこのフランス人は、フランツが戦前パリに留学していたときの友人だという。彼がためらいがちに語るフランツの思い出に、癒される家族たち。だがその気持ちがアンナのなかで次第に恋愛感情に変わる頃、アドリアンの秘密が明かされる。

モノクロの映像もオゾン映画では新鮮である。しかも、全編モノクロで通すのではなく、ヒロインの心情表現にカラーを織り交ぜる手法は新鮮でさえある。






DVD映画『婚約者の友人』を読み解く_c0352790_15293852.jpg





アンナがアドリアンと散歩をしながら語り合うとき、洞窟を抜けて湖に出るとともに、あたかも彼らが新世界に足を踏み入れたかのように色彩がふたりを包む。水に濡れたアドリアンの裸体から立ちのぼるそこはかとない色気に、アンナが忘れていた感情を取り戻していくさまが胸を震わせる。


ヒロインの視点に立つことでもうひとつオゾンが実践しているのは、フランスを客観的に捕らえていることだという。とくにパリを訪れたアンナが、レストランでフランス人が国家を合唱するのに遭遇する場面には、さりげなく国粋主義への批判が滲む。


実際本作はオゾンのフィルモグラフィーのなかで、もっとも社会的なメッセージが込められた作品でもある。若きフランツもアドリアンも、そしてもちろんアンナも、戦争がなければその運命はまったく変わっていただろう。そんな思いをミステリーのなかに託し、あくまで上品に、情感豊かに描き出すしている。瑞々しくも、風格溢れる傑作と言ってよいであろう。








☆☆☆GGのつぶやき
初めて観るフランソワ・オゾン監督作品である。
レンタルした動機は、第73回ベネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞と第42回セザール賞、撮影賞受賞の文字。
そして、パウラ・ベーアのクラシカルで清楚な美貌である。
































































by my8686 | 2018-09-24 15:30 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)