衝動買いしたBOSEのトール&スリムスピーカー「77WER-S」を試聴してみる。
BOSEのスピーカーには、昔から硬質で跳ねりのある特有のクセっぽさが気になって、敬遠していた。
車で言えば、速くてクイックなのだが、足回りの「必要以上の硬さ」に長時間は疲れてしまうというイメージである。
その点、長年愛聴しているJBLは、円やかで膨らみがあり、長時間聴いていても疲れさせることなく飽きさせない。
まるで艶めかしさが熟成の域に達した「古女房」のような存在なのだが、今回のBOSEスリムスピーカーはいかほどのものなのか。
浮気心を擽るそのスタイリッシュでスリムなスタイリングは、まるでアスリートを思わせる引き締まったボディの「美魔女」といった趣だ。
啼かせるに十二分な容姿と体幹に、官能は先ほどから微振動を起こし始めている。
基本となる骨格をまずは読み解いてみよう。
BOSEには、低音再生の特許技術と言われるパイプオルガンの原理を応用した「アコースティック・ウェーブガイド・テクノロジー」があり、これを改良させた「アドバンスド・ウェーブガイド・テクノロジー」を搭載させたのが本機だという。
これは、共鳴管方式といわれるパイプ状の管の「気柱の固有振動」を利用して低音を増強するというもの。
原理としては、楽器の笛と同じで、長い直管はその長さに比例した波長の音に共鳴させるというシンプルな原理。
双方が開いた管は管の長さの倍の波長を、片方が開いた管は管の長さの4倍の波長を、双方が閉じた管は管の長さの8倍の波長が「基底共振周波数」となる。
またその整数倍の周波数の成分「高調波」でも共鳴し、特に奇数倍の周波数の音「奇数次高調波」でも共鳴が起きるのだが、音質的にはあまり好ましく無いとされている。
これをどう抑えるかが鍵となり、奇数次高調波を「良くない」とする見解には、異論もあるという。
BOSEトール&スリムスピーカー「77WER-S」は、長さ3.6mの共鳴管が3本。低域の充実だけでなく、「高調波歪み」や「分割振動の発生」も抑えるという。
これが見た目からは想像しにくい余裕ある大型ウーファー並の重低音を出す「骨格」であり、わずかな空気の振動を管の内部で共鳴させるという、独自のノウハウのようである。
まずは、今年5月の欧州旅行で再認識させられたスイス・モントルーを舞台とする通称「お城のエヴァンス」を聴いてみよう。
フランス語によるメンバー紹介後、一曲目から全開モードに入るエヴァンスの演奏。ピアノの切れ味は良い。
続いて強烈なドライブ感のゴメスのベース。締まりのある低音。共鳴管特有の歪はない。細かな譜割がトレースできる。
ジャック・ディジョネットのシンバル・ワークが心地よく響き、豊かな色彩をイメージさせる。
目を閉じて聴くと、このアルバムの素晴らしい「流れ」に酔えるレベルにあると実感できる。
ブラインドテストされると、もしかしたらまんまと騙されてしまいそうなレベルである。
前半の山場の「動から静へのコントラスト」が心地良く堪能できる。
後半の山場のゴメスがフィーチャーされた7曲目の音場感豊かなベース音も品位が感じられる。
エヴァンスの流麗なソロの8曲目、耳を研ぎ澄ますと惹き込まれてしまいそうである。
続いて、オケとボーカルは、聴きなれたダイアナ・クラールの「WALLFLOWER」を聴いてみる。
官能の襞を震わせるストリングスの響きは、まさに「のびやか」で音場感豊かである。
クラールのボーカルも、すっきりとしたヌケの良い明瞭さの中に、クラール特有の「低音の色気」が響きわたる。
総合的には、低音から高音までのバランスが絶妙で、音場感の豊かさに納得できる。
今回試聴したソース音源は、PCデジタルMP3。
駆動したアンプは、最近購入したKENWOOD「KA-NA7」の単体ストレート駆動。
サブウーファー用のチャンネルデバイダーは経由させず、素の「77WER-S」を聴く。
まだ「SOUND WARRIOR」の真空管アンプでの駆動はしていないが、普段づかいの省エネモードならば、この「KA-NA7」で十分であろう。
縦型ユニット配置のメリットである水平方向の指向性がよりブロードされており、ミュージック再生はもとより、映画のサラウンド再生にも好適だと感じる。
☆☆☆GGのつぶやき
「次世代スピーカー」を名乗るだけのことはある。
窓ガラスをビビらせるJBL大型バックロードフォンの怒涛のごとき音圧に洗礼を受けた世代にも、これはこれでありか、と納得させられる「逸品」と言えよう。
JBLとBOSEの双璧については、また項を違えて読み解いてみたい。