石巻を彷徨している。
ひきつつぎ「シュミレーションの旅」を続けよう。
本日は、「ジャズ喫茶・アビーロード」までいってみよう。
ホテルから車で約20分の陸前赤井にある。
「石巻グランドホテル」から国道398号に入り、 国道45号の松島方向に進むと見えてくる。
住宅街にある個人宅の二階。
ジャズ系の匂いはいっさいしない。
しかし、ガレージ横の扉のJBLロゴがそれらしく香ってくる。
どうやらここが結界のようだ。
店内に一歩踏み込むと「趣味の空間」が匂いたつ。
まず目に飛び込んでくるのが大型スピーカーの障壁。
アナログレコードのコレクションも瞼をスイングさせてくる。
大型エンクロージャーに15インチが4発と18インチが2発。
床に置かれたパワーアンプの面子がただならぬ気配を醸し出している。
オーナーが語りはじめる。
「出す音の対価として料金を頂くJAZZ喫茶である以上、非日常的なサウンドを体験して頂く事に主眼をおいている」
「常識的なホームユースでは、わざわざ足を運ぶ価値もなかろう!という前提で構築している」のだという。
この複雑な多数駆動をどう手なづけているのか。
興味はその一点に集中してくる。
「実質38畳の空気容量と基準リスニング点5.5mを考えた場合、いたった結論が4weyマルチ」なのだという。
つまり、どんな音楽ソースでもジャンルでも、良い音楽が生音以上の大音量で破綻する事なく、録音された音をストレートに生々しいサウンドで再現することを目指している」という。
オーディオのシステム構成が表示されている。
「5.5mは、JBL2241FO値の一波長、それを軸に問題はJBL375以下の800Hz〜2241Foまでを違和感なくいかにカバーするか?」
JBLエベレストなど一連の優れたシステムは、メーカーが時間をかけて試作・視聴・測定機器を駆使して完成にいたる訳だが、耳だけ頼りの超アナログ作業で調整したという。
セッティングしたままテスト調整〜ヒアリングでの追い込みが可能なのがメリットだとも語る。
サイズも重量にも制約のない、見た目は悪いが自由自在の「スピーカー調教」ということだろう。
マルチシステムにした理由を聞いてみる。
「アンプとSPを直結する方が・・・云々ではなく、答えはネットワークに限界を感じたからだ」という。
「ネットワークのコイル・抵抗・コンデンサーなどによる悪影響を避けたいからで、特に低い周波数クロスはネットワークでは物理的に無理と判断したからだ」とも語る。
「逆にマルチなら試してみたかったウーファーの2分割使用も可能で、考える理想の低域に近づくのではないかという発想からスタートした」という。
まずは珈琲をオーダーしてお手並み拝聴とゆこう。
軽快でヌケのいい中低域(800〜120Hz)はフロントロードと2220Bの開放型コンビだからだろう。
時に重厚に、時にエネルギッシュに。
120Hz以下の超低域はさすがJBLの大型バスレフ2241システムのことはある。
物理的に相反する再生音の両立。
イイとこ取りの2分割と箱ごと別々にドライブさせているからだろう。
最初は一発で鳴らし切ろうと18年間苦闘したという。
プラスWooferシステムはマルチアンプ以外ではどうしても上手くいかなかったという。
つまり、量のみを足したところでバランス的には破綻してしまう。
一部ソース限定のシステムになってしまったという。
「今はようやく、何でも鳴る、鳴らせる・・・」
オーナーはしたり顔で私の目を見つめた。
「この当たり前のようで実に困難な難題をクリアーしかけていると思っている・・・」
さらに静かに呟いた。
「オーディオは、低音を制する者、サウンドを制す」
ロリンズの「サキコロ」が演奏をはじめた。
エッヂの効いたダグ・ワトキンスのベースの太い音が背骨を共振させてゆく。
いつものように、ロリンズの分析力と瞬発的なアドリブの構築力に官能がいつのまにか共振現象を誘発されていた。
☆☆☆GGのつぶやき
石巻「ジャズ喫茶・アビーロード」を探訪しつつ、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。