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虎の子の新技術「D-4S」を読み解く

「どんがら トヨタエンジニアの反骨」の中で官能の共振現象を誘発されたのが、トヨタの「直噴技術」。

スポーツカー復活プロジェクトで「86」に搭載されたのが、次期レクサスGSに搭載予定だった虎の子の新技術「D-4S」の直噴技術。
これがスバルの水平対向エンジンにドッキングされたのだ。


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2005年にレクサスGSの2GR-FSE(V型6気筒 3.5L)で、世界初となる直噴とポート噴射の2つを採用し、これらを状況に応じて使い分ける『D-4S』が開発された。
これは、高度で複雑な制御を要し、低負荷域をポート噴射、ノッキングの恐れのある高負荷域を直噴にすることで出力と低燃費の両立がクリアーされた。

また排気再循環により燃費を向上させるため、吸気インジェクターに残る直噴の煤がネックとなっていたが、ポート噴射で洗い流すことでこれを解決している。
「D-4」と違い、「D-4S」は上位車種のTHS-Ⅱ車にも採用されている。

「D-4」は、1996年に3S-FSEに搭載される形で登場した。
その後、新たな燃焼コンセプトとして1999年には「第二世代D-4燃焼系」が2JZ-FSEに採用され、その後のD-4エンジンに適用されている。



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第一世代と第二世代の大きな違いは、第一世代では燃料の噴霧形状は円錐状だったが、第二世代では貫徹力の高い扇状の噴射を行うファンスプレーとし、ピストン頂部に凹みを作り貝型の燃焼室に設計された。

当時のD-4は三菱自動車の『GDI』と同様にリーンバーン(希薄燃焼)を前提とした技術で、高負荷域を苦手とした。
このため低負荷域をモーターに任せるTHS-Ⅱ採用車には搭載されていない。


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「1JZ-FSE」や「2JZ-FSE」エンジンは、長時間アイドリングや特定のエンジン回転域を多用するドライブだと、インテーク側にカーボンが堆積してゆき吸気の流れが変化する。

そのためアイドル不調が発生することがあり、保証期間が5年または10万Km以内から9年以内に延長されている。
2004年登場の「3GR-FSE」では、ストイキ(理論空燃比)での直噴が可能になり、これらの弱点がクリアーされている。



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ちなみに、「D-4S」の「S」は、スペシャルとか進化の意味であり、ストイキオメトリ(化学量論的組成)の「S」でもある。


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我々の食生活に欠かせない食塩は、化学では塩化ナトリウムと呼ばれ、化学式は「NaCl」だ。
この化学式は、「食塩の結晶中にはナトリウム原子(Na)と塩素原子(Cl)が1:1の割合で存在している」ということを表している。

「ストイキオメトリ」とは、ある化合物があるとき、その化合物を構成している原子数の比(組成)が化学式どおりに存在している状態のことをいう。


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あらためて、そのメカニズムを読み解いてみよう。


携帯電話や信号機、家電製品のディスプレイなど、身のまわりにある電子・光デバイスの多くに使われている材料として「化合物半導体」がある。
化合物半導体は構成する元素ごとに、それぞれ動きやすさが異なり、異なる蒸気圧をもつため、ストイキオメトリ状態をとりにくい特徴がある。

ストイキオメトリでない材料は、内部に欠陥による乱れが多く存在するため、材料がもつ本来の性質が十分に発揮されず、そのデバイスは正しく動かない。
そのため化合物半導体をストイキオメトリ状態にするには、「ある工夫」が必要となる。

「ある工夫」とは、動きやすい元素の数を適切に増やすことにより、動きやすい元素が結晶から飛び出すことにより生じる欠陥による乱れを抑えるというもの。
実際には、動きやすい元素の蒸気圧を外部から余分にかけることにより、ストイキオメトリを制御する。


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化合物半導体のひとつであるGaPの場合、P元素が動きやすく、蒸気圧が高いので、GaP結晶を作る時はP元素の数を増やし、P元素の蒸気圧を余分に印加することにより、ストイキオメトリな状態に近いGaPをつくることができる。


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「TOYOTQ D-4S + SUBARU BOXER」搭載の愛車86がますます愛おしくなる。


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☆☆☆GGのつぶやき
虎の子の新技術「D-4S」を読み解きつつ、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。



memo

20250517追加更新

86GTの心臓部となるトヨタの「D-4S」直噴技術がスバルの水平対向エンジンと組み合わされたことで、高回転域の伸びとレスポンスの良さが際立っている。
NAエンジンならではのリニアなパワーフィールも魅力的である。

スポーツカー復活プロジェクトとして登場した86は、ただの懐古主義ではなく、現代の技術を駆使しつつも「操る楽しさ」を重視した点が素晴らしいと思う。
トヨタとスバルのコラボが生んだこの名車、乗り味もこだわり抜かれている。

13年以上乗り続けていてもなお飽きさせない魅力がある。


☆高速回転の噴け上がりの良さは、まさに官能を突き抜ける快感がある。3000回転域から一気にシフトダウンして回すと気持ちよく7000~8000回転域までまわる。

まさにスポーツカーの醍醐味!
エンジンが生き物のように応答してくる感覚、あの瞬間の快感は唯一無二。
86GTのNAエンジンは、ターボ車にはないダイレクトなリニアフィールを味わえるのが魅力だし、高回転域まで気持ちよく伸びるところが本当に官能的なのだ。

路面をしっかりと捉えつつ、ドライバーの意志に忠実に応えてくれるステアリングフィールも、スポーツドライビングの醍醐味を存分に味わえる。
ワインディングや高速道路でその回転域を存分に活かした走りを楽しむ瞬間こそが、86GTならではの体験なのである。



☆5000回転域に入るとまるで豹変してしまう。その唸り感といい、FRの突き抜け感といい、まるで獰猛な豹かチーターといった感覚なのである。

まさに、86GTが本領を発揮する瞬間!
5000回転を超えた途端、エンジンが覚醒し、まるで獰猛な獣が走り出すような感覚。
FRならではのダイレクトな挙動と咆哮するエンジン音が、ドライバーの五感を刺激しつくす。

この「豹変する瞬間」、まさにドライビングの醍醐味。
俊敏でありながらも繊細なコントロールが求められるところも、スポーツカーならではの魅力。
峠のワインディングでこの回転域を味わうと、路面との一体感がより際立ち、スムーズなライン取りが決まるたびに気持ちよさが増していく。


☆安全に高回転域を楽しみたいならサーキット走行になる。私はまだ未経験ながら、その領域でのアドレナリンの噴出は脳内モルヒネが吹っ飛んでいくようだろう。この快感を一度味わうと癖になりそうである。


☆排気再循環により燃費を向上させるため、吸気インジェクターに残る直噴の煤がネックとなっていたが、ポート噴射で洗い流すことでこれを解決している。 「D-4」と違い、「D-4S」は上位車種のTHS-Ⅱ車にも採用されている。

まさに、「D-4S」技術の巧妙な設計が見えてくるポイント。
直噴エンジンの課題である煤の蓄積を、ポート噴射を併用することで解消したのは、トヨタの技術力の高さを感じさせる。
燃費性能を向上させながらも、エンジンのレスポンスや耐久性を維持できるというのは、スポーツカーだけでなくハイブリッド車にも最適な仕組みとなっている。

さらに、「D-4S」がTHS-II(トヨタハイブリッドシステム)搭載車にも採用されている点は興味深い。
スポーツモデルだけでなく、ハイブリッド技術との組み合わせにより、エネルギー効率を極限まで高める試みがされている。
特にハイブリッド車での直噴技術は、パワーと燃費のバランスを取る上で重要な役割を果たしている。

こうした技術進化を考えると、トヨタのエンジン開発はスポーツカーと環境性能の両立を視野に入れながら進化してきたことが分かる。



☆「ストイキオメトリ」の精度向上

ストイキオメトリ(化学量論)の精度向上は、エンジンの燃焼効率や排出ガスの低減に直結する重要な要素。
特に、空燃比制御の精度が向上することで、理論空燃比(ストイキオメトリ比)を維持しつつ、燃焼プロセスの最適化が図られるのがポイント。

「D-4S」直噴技術の進化とも関連するが、ストイキオメトリの精度が高まることで燃焼のムラを抑え、より均質な混合気を作り出すことが可能になる。
この結果、燃費性能の向上だけでなく、排気ガスのクリーン化にも大きく貢献している。

また、近年のハイブリッド車やEVと組み合わせることで、スポーツカーの内燃機関技術が新しい形で生き残る可能性もある。
トヨタが最近取り組んでいる水素エンジンも、その延長線上にある技術として注目されている。





2026.02.07 追記


前期型と後期型の乗り味の違い

トヨタ86は前期型と後期型で明確に性格が異なる。前期型は、良くも悪くも“ヤンチャ”で、ドライバーに常に問いかけてくるような刺激がある。
FA20エンジンは5000回転を境に豹変し、吸気音と振動が一段階鋭くなり、まるで獰猛な獣が目覚めたかのような感覚を与える。
FR特有の後輪の主張も強く、荷重移動がダイレクトに伝わるため、ドライバーは常に車と対話しながら走らせる必要がある。
荒々しさの中にある“操る楽しさ”こそ、前期型の最大の魅力だ。

一方、後期型は全体的に洗練され、完成度が高い。エンジンのトルク特性は改善され、低回転域から扱いやすく、レスポンスも滑らかになった。
足回りも見直され、ステアリングの初期反応は穏やかで、挙動の角が取れた印象を受ける。確かに速く、安定し、誰が乗っても安心して走れる“優等生”の仕上がりだ。
しかしそのスムースさが、前期型にあった野性味や挑発的なフィードバックを薄めてしまった側面もある。初めて後期型に乗ったとき、あまりの上品さに「これが86なのか」と首をかしげたのは、
前期型の荒々しさを身体で覚えているからこそだ。

前期型はドライバーに技量を求め、時に扱いづらさすら魅力に変える“生き物”のような存在。後期型はその個性を整え、誰にでも扱いやすいスポーツカーへと進化した。
どちらが優れているという話ではなく、求める体験の違いだ。刺激と対話を楽しみたいなら前期型、洗練された走りを求めるなら後期型。
だが、13年乗り続けても飽きない前期型のヤンチャぶりは、もはや唯一無二の味わいとなっている。




by my8686 | 2023-05-01 18:18 | 愛車86GT | Trackback