福島県の旅から少し道草をくって、感性のおもむくまま官能の共振現象をもとめて「シミュレーションの旅」を続けている。
ダニエル・リベスキンドのヴォイドの深みに填り、「モーゼとアロン」に倣って、リベスキンド建築巡りの旅に出た。
この旅の果てに見えてくる景色とは、いったいどんな情景なのだろうか。
本日は、米国コロラド州デンヴァーにある美術館へ行ってみよう。
「デンバー美術館」
アメリカ先住民の芸術を初めとした6万点以上の世界各国の幅広い芸術作品を収蔵。
1971年、イタリアの建築家ジオ・ポンティ設計で「北館」が完成。
2006年、ダニエル・リベスキンド設計の「フレデリック・C・ハミルトン館」が完成。
ロッキー山脈の山々とふもとの岩水晶をモチーフにしたアバンギャルドな外観。
この建築と対峙すると、リベスキンドの脳内を覗き込んでみたいという衝動にかられてくる。
2000年の計画時、リベスキンドが「眼と翼」と題して計画コンセプトを記している。
あらためて、その内容を読み解いてみよう。
美術館の増築計画は、イタリアの建築家ジオ・ポンティが設計した現在の美術館を拡張し、増築するものである。
増築部分には近現代美術のコレクションと、建築、デザイン、オセアニア美術のコレクションが収められる。
また、この部分は美術館複合施設群全体の主玄関として機能し、ショップやカフェや講堂への通路となるメイン・ロビーが設けられる。
デンヴァー美術館の新館は、その性格と形態によって幅広い市民を美術館複合施設に引き寄せるイコンとなるだろう。
増築部分「ネクサス」は、ポンティによって設計された現在の本館、官庁街全体、市立図書館が有する機能と美的価値と、緊密な関係を保って設計されている。
この新しい建物は、ダウンタウンと官庁街をつなぎ、「黄金の三角形地区」との強力なつながりを生むネクサス・結合体である。
このプロジェクトは他とのつながりをもたない単独の建物として設計されるのではなく、この都市で発展しているこの地域における公共空間、モニュメント、玄関が構成するものの一部として設計され、広範な地域と小さく親密な地域の共同作用の一因となる。
建物の素材は、現在の文脈「地元の石材」と密接なつながりを持つと同時に、革新的な新素材チタンを用いる。
この2つの素材によって、デンヴァーならではの伝統を21世紀につなぐ空間が作られる。
新館の形は、州都デンヴァーの成立から今日にいたるまでの驚異的な活力と成長からインスピレーションを受けている。
空とロッキー山脈の息をのむほど美しい眺望に恵まれた卓抜した地理的条件と、構造の大胆さと風景のロマンティシズムとの対話がひとつになって、世界的にもユニークな場所が創造される。
独自の文化と都市と活力の運命を創出するうえで市民が果たす大胆で進歩的な取り組みは、コロラドの地を訪れるすべての人の心に訴える。
デンヴァー美術館の増築計画における課題のひとつが、この市特有の光、色、大気の影響、気温、気候に密接に対応した仕事をすることである。
それらは機能と物理的側面において全体に組み入れられるだけでなく、来館者に優れた経験をあたえるために、文化と経験の側面においても組み入れられるべきだと強く考える。
増築部分は、様式の概念や、既成の考え方や外観の形の焼き直しに基づくものではない。
なぜならその構造は、内部と外部を分離したり、見場の良いファサードの裏にありきたりの経験があるようなものではなく、むしろ一般市民および経験の諸相(それらは知的で感情と感覚に訴えるものでもある)とのあいだに有機的なつながりを持つものだからである。
市民の楽しみと啓発のためにそれらの次元を全体に組み入れることが求められるが、それは構造物のもつ手仕事的な性質と、手から眼へ、心への直接のコミュニケーションを重んじる建物によって実現される。
「結局のところ、建築の言語とは、言葉そのものを超えた、光と均整と素材が発する笑い声なのである」とリベスキンドは記している。
☆☆☆GGのつぶやき
「デンヴァー美術館増築計画」を読み解きつつ、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。