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「Felix Nussbaum House / Museum of Cultural History」を読み解くⅡ

福島県の旅から少し道草して、感性のおもむくまま官能の共振現象をもとめて「シミュレーションの旅」を続けている。
気がつけば、ダニエル・リベスキンドのヴォイドの深みに填ってしまったようだ。

本日も引き続き、リベスキンドが記した「出口なき美術館」コンセプトを読み解いていこう。



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来館者は建物の横手からヌスバウムの道に入る。
この道には、「出口なき美術館」に入る重要性を示し、明確にするための切り込みが設けられている。



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ヌスバウムの道の外観は不在そのもの-ヌスバウムの受難の生涯を表わす空虚なキャンバス-であり、犯罪行為の絶対的な卑屈さと、公共の場所を持つことの重要性に言及している。

これはヌスバウムの作品の解釈に欠かせない、開かれた感覚と未完の感覚を伝えるものである。



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ヌスバウムの道の内部には、オスナブリュックにおけるかつてのユダヤ人の生活の活気を示す痕跡がある。


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空からの三角形の光に照らされたこの圧縮された空間に入ると、入口の垂直なボリュームを含んだ空間と、それに付随する機能に遭遇する。


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ヌスバウムの道は美術館の複合施設を目に見えるものにする一方で、焼き払われた不可視のシナゴーダを刻印している。

来館者は、集められたものと集められ得ないもの、再び集められたものと記録できないものの間の不安定な平衡のうちに置かれる。



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そしてヌスバウムの道は、来館者を幻のふたつの円錐形からなる圧縮された幾何学的配置の中に導く。

そこでは前方にも、そして後方にもダビデの星が視覚的かつ動的に具現化される。



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ダビデの星はヌスバウムが最後に自らの誕生と死を記すものとして選んだ形である。


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美術館を通る全体の軌道によって、来館者はシナゴーグの失われた影と予期される未来の光との相互作用に気づく。

来館者は、細い垂直の地平線を垣間見ながら、企画展示室の開かれた空間に向かって進む。



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この地平線は順路が完結したところで開き、2階との接合部に続く。

レクチャー・ホールの使用や日中のさまざまな活動を伴う市の企画展示が、ヌスバウムの劇的な作品を展示するための空間がある2階部分への適切な導入部になる。


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ヌスバウム・コレクションを再び歴史博物館のコレクションと同じ文脈に置くためには、オスブリュックの歴史コレクションを、少なくとも象徴的に、ヌスバウムの作品の文脈に結びつけることが重要であることを、この設計は示している。



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2階の展示が終わると、来館者はヌスバウムの作品の崩壊した空間性に気づくことだろう。

ヌスバウムの悲哀は、非人間的抑圧を前に、逃亡が政治的に不毛であること、そして芸術こそが精神の抵抗であることを二重に認識していたところにある。


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2階の行き止まりになったギャラリーは時間の断絶を示し、斜めにねじれた部分は、既存の博物館につながる接続部として中空に吊られている。


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この接合部は、1944年に描かれたヌスバウムの不屈の精神と芸術の普遍性を証明する一連の絵画が究極のものであることを示している。


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この重要な断片のボリュームは、切り込みがつくられ分断されたヌスバウム美術館の幾何学に同等に作用しあう関係を持つ。



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既存の博物館につながる宙吊りの接合部は、市の歴史博物館の2階に続いている。
その2階部分を一部改修して展示エリアとすることを提案する。


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この計画は、歴史的なものと美的なものを実際に結合させ、新しいものと古いものとを外観を越えて結合する必要性を示している。



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過去の記憶が、現在においても、そして語り続けられる物語においても活力を保つように、既存の博物館と新美術館の統合は達成されなければならない重要な課題である。



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このように、ヌスバウム美術館は既存のふたつの博物館とは分離しているものの、その形と機能によって両者と深く結ばれることが、このプランの重要な構造的特徴によって示されている。



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民族博物館は、1933年にはナチス党の本部が置かれていた建物であるが、その民族博物館と歴史福物館本館は、意識的かつ意図的な方法によってポリフォニー的な構成の中で再び結びつき、緩和している。


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それら全体は、この場所一帯が陳腐化し、均質化すること、そして歴史的事実を切り離すことを防ぐ、建築における要となるものを表している。

来館者は、ヌスバウムの作品、とりわけの作品と、オスナブリュックの文化的、歴史的、地理的な独自性との関係を理解するには、それらの差異をより深く理解することが必要とされることに気づくであろう。


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このように公共空間の内部的そして外部的な移入は明白であり、生態系と建築との関係も明白である。

ヌスバウム美術館は、不可能な運命の証しとなるだけでなく、未来と過去が出会う深遠な場となる。


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熟視する目には見えること、それこそがフェリックス・ヌスバウムの描かれざる絵画が求めるものなのである。

1995年 ロスにて



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☆☆☆GGのつぶやき
「Felix Nussbaum House / Museum of Cultural History」を読み解きつつ、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。






by my8686 | 2023-06-23 23:23 | 気になる建築&空間 | Comments(0)