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F.Y.I 「身体と空間のリゾーム:帝国戦争博物館ノース」を読み解く

リベスキンドの作品は、まさに「身体と空間のリゾーム」を体現する事例として語ることができる。
彼の建築は直線的な物語を拒み、断絶や裂け目を通じて多方向に生成する歴史の場をつくり出す。


あらためて、代表的な事例を読み解いてみよう。



・ロンドン・帝国戦争博物館ノース (2002)

建物自体が「割れた地球」を象徴する断片的な形態で構成され、戦争の断絶を身体的に経験させる「Imperial War Museum North」。空間は多方向に広がり、観者は歴史の破片を編み直す存在へと変わる。



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帝国戦争博物館ノース(IWM North)は、ダニエル・リベスキンドによる「破砕された地球」のコンセプトをもとに設計され、断片化・交錯・非中心性を強調する。その構造は、ドゥルーズ=ガタリの「リゾーム的空間」と深く呼応し、戦争の記憶を直線的な物語ではなく断片のネットワークとして体験させる。


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1. 建築コンセプトと断片性

・設計は「地球が戦争によって砕かれた後の断片を再構成する」というアイデアに基づく。
・建物は「地の断片(Earth Shard)」「空の断片(Air Shard)」「水の断片(Water Shard)」の三つの破片から成り、それぞれ異なる機能を持つ。
・この断片的構造は、戦争が人間の生活や記憶を分断し、再構成するプロセスを象徴する。



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2. リゾーム的空間との対応

非中心性
・建物には統一的な中心がなく、三つの断片が互いに接続しながらも独立している。これはリゾーム的空間の「中心を持たないネットワーク構造」と一致する。


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断絶と接続の同時性
・戦争による破壊を示す断片は、同時に新しい接続を生み出す。来館者は断片間を移動することで、記憶の断絶と再接続を身体的に体験する。



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多方向性と迷路性
・内部は意図的に方向感覚を失わせる設計で、訪問者は「迷う」経験をする。これはリゾーム的空間の「どこからでも接続可能で、方向が固定されない」性質を体現する。


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生成的経験
・博物館は展示物だけでなく、建築そのものが「戦争の記憶を体験させる装置」として機能する。これはリゾーム的空間が「意味を固定せず、経験を生成する場」であることと重なる。


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帝国戦争博物館ノースは、戦争の記憶を「直線的な歴史叙述」ではなく、断片化された記憶のネットワーク=リゾーム的空間として表象する。
訪問者は断片間を移動しながら、戦争の断絶と再構成を身体的に体験し、記憶の多方向性と生成性を実感する。



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☆☆☆GGのつぶやき
「断片を断片のまま提示し、そこから新しい接続を生み出すこと」。それは戦争の記憶だけでなく、都市の歴史、家族の記憶、社会の断絶をどう扱うかにも応用できる思想。ドゥルーズ的に読むと、帝国戦争博物館ノースは 「断絶を生成の契機とするリゾーム的空間」 。戦争の記憶は一枚岩の物語ではなく、断片を接続し直すことで常に新しい意味を生み出す。訪問者はそのプロセスを身体で体験し、歴史を「生成的ネットワーク」として理解することになる。現在の戦争地域に言えるのは、「戦争の記憶や経験は直線的な物語ではなく、断片のネットワークとして理解されるべき」ということ。断絶を隠さず、断片を断片のまま提示し、それを再接続することで新しい意味や未来が生成される。これはドゥルーズ的な「リゾーム的空間」の思想が、戦争地域の記憶継承や再生に深く関わる可能性を示している。しかし、戦争が終わらないのは、資源・権力・記憶・妥協の困難さが絡み合い、断絶が新たな接続を生み続けるからであろう。戦争を「終わらせる」には、断片を断片のまま認め、痛みを伴う妥協と記憶の継承を同時に進める必要がある。

以下に戦争地域ごとに「誰と誰が接続すべきか」を整理してみると、共通して 当事者(政府・武装勢力)と市民社会、国際社会、地域機構の多層的な接続が必要であることが見えてくる。



※接続すべき主体と関係性

「スーダン国軍(SAF)と準軍事組織RSF」

スーダン国軍(SAF)と準軍事組織RSFの争いの原因は、2019年のバシール政権崩壊後の権力移行過程での主導権争いと、両者の統合をめぐる対立にある。
特に「治安部門改革」で国軍とRSFをどのように統合するか、その時期や権限配分をめぐる不一致が武力衝突へと発展した。

地元部族・市民社会団体 国連・AU(アフリカ連合)・NGO  
武力主体間の停戦合意を国際社会が仲介し、市民社会が人道支援と記憶継承を担う



「南スーダン」

南スーダンの紛争の最大原因は、2011年の独立後に噴出した 権力闘争(大統領派と副大統領派の対立)と民族間の分断。
特に2013年に大統領サルバ・キール(ディンカ族)と副大統領リエク・マシャール(ヌエル族)の対立が武力衝突に発展し、民族間の暴力と報復の連鎖を生みだした。

政府(SPLM)と反政府勢力~地方コミュニティ・宗教指導者~UNMISS(国連南スーダンミッション)・日本など国際協力国
「上からの平和」(国家合意)と「下からの平和」(国民対話)を接続するハイブリッド型平和構築



「ウクライナ」

ウクライナ紛争の最大原因は、ロシアによる安全保障上の脅威認識(NATO拡大への反発)と、ウクライナの主権・領土をめぐる対立。
特に2014年のクリミア併合と東部ドンバス紛争が火種となり、2022年の全面侵攻へとつながっている。


ウクライナ政府とロシア政府~地域住民・避難民ネットワーク~EU・NATO・国連
領土問題の政治的妥協を国際社会が仲介し、市民社会が断片的記憶を再接続する場を作る




「ガザ・パレスチナ地域」

イスラエル建国に伴う領土問題とパレスチナ人の国家権利の未解決、さらにイスラエルとハマスの対立が繰り返し激化している。

イスラエル政府とパレスチナ自治政府/ハマス~地元住民・医療団体~国連・アラブ連盟・国際NGO
停戦交渉を国際社会が支え、住民の生活再建と記憶継承を地域社会が担う



「コンゴ民主共和国(東部紛争)」

豊富な鉱物資源をめぐる利権争いと、ルワンダ大虐殺後の難民流入による武装勢力の台頭、さらに民族間対立が複雑に絡み合っている。

政府軍と武装勢力(M23など)~地元コミュニティ・女性団体~AU・国連PKO(MONUSCO)
武力主体間の停戦を国際社会が仲介し、地域社会が人権・生活再建を支える



「アフガニスタン」

国家権力の空白と外部勢力の介入が重なり、民族・宗教・政治の分断が固定化したこと。
特に、冷戦期から続く大国の介入(ソ連、米国)、タリバンの台頭、そして近代国家としての統治基盤の脆弱さが複合的に絡み合っている。

タリバン政権と反対勢力~地元部族・宗教指導者~国際社会(国連・周辺国)
政治的妥協を国際社会が促し、地域社会が教育・文化を通じて断絶を再接続する






by my8686 | 2026-01-09 09:09 | 気になる建築&空間 | Trackback