リベスキンドの作品は、まさに「身体と空間のリゾーム」を体現する事例として語ることができる。
彼の建築は直線的な物語を拒み、断絶や裂け目を通じて多方向に生成する歴史の場をつくり出す。
あらためて、「CityLife複合施設(ミラノ)」を読み解いてみよう。
CityLife複合施設(ミラノ)
旧ミラノ見本市跡地を再開発した大規模都市プロジェクトで、ダニエル・リベスキンド、ザハ・ハディド、アラップらが参加。
住宅、商業、文化施設、そして象徴的な高層タワー群を含み、都市の記憶と未来的デザインを融合させている。
概要
場所:ミラノ市中心部、旧見本市跡地(約366,000㎡)
開始:2004年に着工、2010年代に段階的完成
設計:ダニエル・リベスキンド、ザハ・ハディド、アラップなど複数の建築家が参加
構成:
・高層タワー群(PwCタワー=リベスキンド設計、Generaliタワー=ザハ設計、Allianzタワー=アラップ設計)
・住宅群(リベスキンド・レジデンス、ザハ・ハディド・レジデンス)
・商業施設(CityLifeショッピングディストリクト)
・公園・緑地(CityLife Park)
リベスキンドの役割
・PwCタワー:流線型でねじれたフォルムを持ち、都市のスカイラインに動的な印象を与える。高さ約175m。
・リベスキンド・レジデンス:8棟の集合住宅群。ミラノの伝統的な中庭型住宅を再解釈し、曲線的で断片的なファサードを持つ。
・素材と環境配慮:灰色タイルや木製ブリゼ・ソレイユを用い、持続可能性を重視。屋上には太陽光パネルを設置。
ドゥルーズ的読解
・非中心性:複数の建築家による断片的な建物群が、中心を持たない都市的ネットワークを形成。
・断絶と再接続:旧見本市跡地という「断絶」を、新しい住宅・商業・文化空間として再接続。
・生成的経験:来訪者や住民は、緑地・商業・住宅を横断する身体的移動を通じて都市の意味を生成。
意義
・都市再生:旧見本市跡地を未来的な複合都市空間へと転換。
・象徴性:タワー群はミラノの新しいランドマークとなり、都市のアイデンティティを更新。
・持続可能性:環境配慮型デザインを導入し、都市生活の質を高める。
memo
CityLife の「断絶を抱え込みながら差異を生成する都市的リゾーム」という視点を、いまの米国の分断に重ねると、都市空間の哲学がそのまま社会の分断構造の読み解きモデルになる。
1. 米国の分断は“断絶を埋めようとする社会”の帰結
いまの米国社会の特徴は、断絶を「消すべきもの」「修復すべきもの」として扱う傾向が強いこと。
- 価値観の断絶
- 文化的断絶
- 地域的断絶
- 経済的断絶
これらを「どちらが正しいか」で決着させようとする構造が強く働いている。
ドゥルーズ的に言えば、断絶を“差異の源泉”ではなく“敵対の境界”として扱う社会になっている。
2. CityLife 的モデルは「断絶を抱えたまま接続する」
CityLife は断絶を消さない。
むしろ断絶を抱えたまま、異なるもの同士が接続し続ける“生成の場”をつくる。
これを米国の分断に重ねると、断絶を抱えたまま接続することは、断絶を解消しようとして対立が激化する。差異が新しい意味を生めば、差異が敵対の根拠になる。身体的経験が意味を生成すれば、言説空間が意味を固定化する。多中心的・リゾーム的なるものは、二項対立的・中心争奪的になる。つまり、米国の分断は「リゾーム的接続」が欠落した状態と読み解ける。
3. 米国の分断は「意味の固定化」が生む硬直化
CityLife は「意味を固定しない」都市。
しかし米国の分断は、意味を固定し、アイデンティティを硬直させる力学が強い。
- 自分たちの価値観
- 自分たちの歴史観
- 自分たちの未来像
これらを「唯一の正しさ」として守ろうとするほど、差異は敵対へと変わる。ドゥルーズ的に言えば、生成(becoming)が止まり、同一性(identity)が肥大化した状態となる。
4. CityLife 的視点は「分断を超える方法」ではなく「分断の扱い方」を示す
CityLife は分断を解消しない。
むしろ、分断を“生成の条件”として扱う。
米国の分断にこの視点を重ねると、次のような示唆が生まれる。
- 分断を「なくす」ことを目指すのではなく
- 分断を「接続の契機」として扱う
- 異なる価値観が“共存しながら生成する場”をつくる
- 身体的・日常的な接触の回復が意味生成を促す
つまり、分断を前提にした“生成的社会デザイン”が必要になるということ。
5. 米国の分断を「都市的リゾーム」として再構成する視点
もし米国社会が CityLife 的に再構成されるなら、次のような方向性が見えてくる。
- 中心を奪い合うのではなく、多中心化する
- 価値観の差異を「生成の源泉」として扱う
- 身体的な接触・共在の場を増やす
- 言説空間ではなく“経験空間”で意味を生成する
- 記憶を固定化せず、更新し続ける社会をつくる
これは政治的立場とは関係なく、社会構造の哲学的再設計の話になる。
☆☆☆GGのつぶやき
CityLife は、断絶を抱えたまま差異を生成し続ける都市的リゾームであり、米国の分断は、断絶を敵対として固定化する社会的構造である。この対比から、分断を「解消」ではなく「生成の条件」として扱う社会デザインという新しい視点が立ち上がる。
CityLife複合施設は、リベスキンドらによる「都市の記憶と未来の生成」を体現する場。断絶した跡地をリゾーム的に編み直し、住民や来訪者の身体的経験を通じて都市の意味を生成し続ける「哲学的都市実践」として位置づけられる。ドゥルーズ的に読み解くと「断絶を抱え込みながら差異を生成し続ける都市的リゾーム」。
それは都市の記憶を固定化するのではなく、住民や来訪者の身体的経験を通じて常に新しい意味を生成し続ける「哲学的都市実践」として機能している。