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F.Y.I 都市的リゾーム「The Lowline」を読み解く

「The Lowline」
ニューヨーク・マンハッタンのロウアーイーストサイドにある旧ウィリアムズバーグ橋トロリーターミナルを再利用し、世界初の本格的な地下公園をつくろうとした都市再生プロジェクト。

・Delancey Street(デランシー・ストリート)東側の地下
・Essex Street Station(地下鉄 J/M/Z 線)に隣接
・旧 Williamsburg Bridge Trolley Terminal(ウィリアムズバーグ橋トロリーターミナル)跡


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2011年にDan BaraschとJames Ramseyが構想を立ち上げ、2012年にはクラウドファンディングで注目を集め、2016年には市から条件付き許可を得るなど、実現に向けて大きく動いた。しかし、資金難などにより2020年に建設は停止している。

ただし、Lowlineの価値は「実現したかどうか」ではなく、その概念が都市デザインにもたらした示唆にこそあるとも言える。


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Lowline のデザインと技術的コンセプトを主導したのは James Ramsey 。

彼はニューヨークの建築・デザイン事務所 RAAD Studio の創設者であり、Lowline の核となる「太陽光を地下に導く技術(remote skylight)」の発案者でもある。


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あらためて、その内容を読み解いてみよう。



1. プロジェクトの核心:地下に「自然光」を届ける技術

Lowlineの革新性は、単なる地下空間の緑化ではなく、太陽光を地下に導く高度な集光・反射システムにある。

- 地上の集光装置で太陽光を集める
- 特殊な光ファイバーや反射パネルで地下へ導く
- 地下空間で植物が光合成できるレベルの自然光を再現する

この技術により、地下でも本物の植物が育つ「自然環境」を成立させようとした点が画期的である。



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2. 都市の「未利用インフラ」を再生するという思想

Lowlineは、ニューヨークで成功した高架公園「High Line」の“地下版”として語られることが多いが、単なる模倣ではない。

High Lineは、使われなくなった高架鉄道を再生し、都市に新しい公共空間を生み出した。それに対し、Lowline は、地下の放置インフラを再生し、都市の三次元的な空間資源の再評価を促した。よりラディカルな都市再生の提案でもある。



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3. 都市における「光と自然」の再定義

ニューヨークのような高密度都市では、公園面積の不足、冬季の厳しい気候、建設需要の増大などにより、自然に触れる機会が限られている。
Lowlineは、自然光と植物を地下に持ち込むという逆転の発想で、都市生活者に新しい「自然との接点」を提供しようとした。

これは、都市の自然環境を「水平面」だけで考えるのではなく、垂直方向に拡張するという思想の象徴でもある。



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4. 社会的・文化的意義

Lowlineの概念は、次のような広い意義を持つ。


● ① 都市の「見えない資源」を可視化

地下空間はしばしば忘れられたインフラだが、Lowlineはそこに新しい公共性を見出した。


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● ② テクノロジーと自然の融合

自然光を人工的に制御し、地下に生態系をつくるという試みは、“自然とは何か”“公共空間とは何か”という問いを投げかけた。



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● ③ コミュニティ主導の都市デザイン

Kickstarterでの資金調達やLowline Labでの公開実験など、市民参加型の都市プロジェクトとしても重要である。



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5. 計画停止の意味:概念は生き続ける

2020年に資金難で建設は停止したが、Lowlineの思想は世界の都市計画に影響を与え続けている。

- 地下空間の再利用
- 自然光技術の応用
- 公共空間の三次元的拡張
- コミュニティ主導の都市再生

これらは、今後の都市デザインにおいて避けて通れないテーマである。

Lowlineは、実現しなかったからこそ、都市の未来を考えるための“概念装置”としての価値が際立つと言える。



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memo

raad HP より


Lowline は、ニューヨークに隠された秘密のひとつ──マンハッタンのロウアー・イースト・サイドにある放棄されたトロリーターミナル──の発見から始まったのである。RAAD Studio の創設者ジェームズ・ラムジーは、この都市の遺構こそ、自身が発明した「太陽光を思いがけない場所へ届ける技術」を展開するのに最適な場所であると見抜いた。



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都市考古学と未来的な太陽光技術を結びつけることで Lowline は創出され、公共空間の新たなパラダイムを世界に提示すると同時に、気候危機の時代における都市化への革新的な解決策を示したのである。

Lowline は急速に草の根のムーブメントへと成長し、ニューヨーカーたちが自らの街の新しい未来を想像し、構築する力を得る契機となった。
また、世界中の都市における緑地の可能性を大きく広げる存在でもあった。



ニューヨーク・タイムズ紙は Lowline を「世界初の地下公園」と呼び、都市環境における「より多くの公園用地を切り開くための最新のフロンティア」であると評した。

※ ニューヨーク・タイムズ(NYT)は1851年創刊の米国を代表する高品質報道紙で、正確性・独立性・公平性を使命とする“新聞の記録”として知られる。国内外に記者を配置し、調査報道や国際報道で多くの功績を残してきた。オックス=サルツバーガー家が1896年以降経営を担い、現在はデジタル購読者を中心に世界的影響力を持つ。


ニューヨーカー誌は、Lowline のテスト施設を訪れる体験を「アリスが地底深くへ長い落下をした後に見回したときのようだ」と形容した。

※ニューヨーカー誌は1925年にハロルド・ロスらが創刊した米国の代表的文芸・ジャーナリズム誌で、洗練されたユーモア、精密なファクトチェック、文学性の高い短編やエッセイ、社会・政治批評を特徴とする。ニューヨークの文化を起点にしつつ全国的・国際的視野を持ち、独自の漫画や批評で高い評価を受けてきた。


ニューヨーク・マガジンは Lowline を「この街で最も寛大な新しい緑地」であると称賛した。

※ニューヨーク・マガジンは1968年にクレイ・フェルカーとミルトン・グレイザーが創刊した隔週誌で、生活・文化・政治・スタイルを大胆かつ都会的な視点で扱う。ニュー・ジャーナリズムの拠点として知られ、当初はニューヨーク市に特化していたが、次第に全米的な文化・政治報道へと拡大。多くの著名記者が寄稿し、全米雑誌賞を多数受賞する影響力ある雑誌へ成長した。


☆三誌を並べると、NYT=信頼性重視の広範な知識層、New Yorker=文化・思想志向の知的エリート、NY Mag=都市的でトレンド感度の高い層という構図が見えてくる。




☆☆☆GGのつぶやき
原弘司の視点から見れば、Lowline は都市の忘却された地下空間を「光」によって反転させた点で高く評価されるだろう。地下という負の層に公共性を成立させる操作は、原が重視した都市の多層性の読み替えに通じる。また、歴史的遺構と先端技術を結びつけ、過去を未来へと接続する姿勢も、原の建築観と響き合う。一方で、地下公園という象徴が独り歩きし、建築が記号化される危険には慎重な姿勢を示したはずである。それでもなお、Lowline が示した公共空間の垂直的拡張という視点は、都市の未来に対する重要な示唆として肯定的に受け止められたに違いない。

さらに、Lowline をドゥルーズ的に読むなら、それは都市の地下という固定化された層を「光」によってほぐし、新たな接続を生み出す生成の出来事として理解できる。忘却されたインフラに光を導く操作は、都市のストラタを脱領土化し、地下をリゾーム的な関係の場へと変える試みである。また、歴史的遺構・光学技術・コミュニティが結びつく構造は、異質な要素が寄り集まり新しい機能を生むアセンブラージュとして捉えられる。一方で、「地下公園」という記号が生成を固定化し、運動を停止させる危険も孕む。それでもなお、Lowline が開いた垂直方向への逃走線は、都市を別の次元へと差異化する契機として重要である、となるだろう。



by my8686 | 2026-02-09 09:09 | 気になる建築&空間 | Trackback