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F.Y.I 都市的リゾームとして読めるイタリアの新しい建築

都市を「リゾーム」として読む、という視点はとても大切だ。

イタリアの近年の建築には、まさにデレーズ=ガタリ的なリゾーム性――中心を持たず、複数の接続点を生み、都市の流れに寄り添う構造――として理解できる動きがいくつもある。
いくつか代表的な方向性をみてみよう。


■ 1. 拡散的ネットワークとしての公共空間再編

イタリアでは、巨大なモニュメント型建築よりも、都市の隙間や既存の構造を編み直すプロジェクトが増えている。
これはリゾーム的で、単一の中心を作らず、都市の複数のレイヤーを横断的につなぐ発想である。


ex.ジェノヴァ旧港再生(レンゾ・ピアノ)
港・街・丘陵を結ぶ複数の動線をつくり、都市の「根茎的」接続を強化した計画。

Calata Molo Vecchio, 15, 16128 Genova, Italy




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レンゾ・ピアノが1992年のコロンブス新大陸到達500周年に合わせて行った大規模再生。

都市の“根茎的”接続を強化したポイント

・旧市街(Centro Storico)と港(Porto Antico)の分断を解消し、歩行者動線を再編成
・港から丘陵へと連続する視線軸・動線を複数設定
・歴史建築の再生(Magazzini del Cotone、Porta Siberia など)と新しい都市装置(Bigo、Biosfera、Acquario)を結節点として配置
・港湾エリアを「都市の広場」として再定義し、海・街・丘陵が相互にアクセスしやすい“多中心的”都市構造を形成



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ex.ミラノの公共空間ネットワーク(Piano City, BAMなど)
音楽・緑地・文化を点在させ、都市全体をゆるやかに接続する「分散型都市文化」。

Piano City の音の点在、
BAM の緑と文化の交差、
Porta Nuova の歩行者ネットワーク、
Navigli の水辺空間、
Brera の文化ゾーン…


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■ 2.既存構造への寄生・接続としての建築

リゾーム的建築は、既存の幹に従属するのではなく、横から接続し、増殖し、都市の意味を変える。
イタリアの若い建築家たちは、歴史都市の「重さ」を逆に利用して、軽やかな接続を試みている。



ex.Piuarch や Stefano Boeri の小規模都市介入
歴史的街区に小さな増築・緑化・回廊を差し込み、都市の流れを変える。


Piuarch

・ミラノ中心部(Duomo 周辺の屋上・街区)
・Porta Nuova / Isola
・Bicocca
・旧工場地帯の再生エリア


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Stefano Boeri

・Isola(Bosco Verticale 周辺)
・Porta Nuova(BAM 周辺の小規模緑化)
・ミラノ郊外の住宅地
・イタリア各地の小規模緑化プロジェクト



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ex.ボローニャのポルティコ再解釈プロジェクト
既存のアーケードを新しい文化動線として再接続。

・ROCK Project(EU 都市再生プログラム)
・Portici di Bologna(UNESCO 登録に向けた保全・再生)
・Portico Project(市・大学・文化機関による再生)

複数の取り組みの総称としてボローニャ市内の12のポルティコ群(UNESCO 登録対象) を中心に展開されいる。


■ Portico del Pavaglione(パヴァリオーネ回廊)
 住所:Piazza Maggiore 付近、Via dell’Archiginnasio
 ボローニャ中心部の象徴的ポルティコ
 再解釈・修復の事例として頻繁に取り上げられる

■ Portico di San Luca(サン・ルーカ回廊)
 住所:Via di San Luca(約3.8kmの長大ポルティコ)
 UNESCO 登録の中心
 近年大規模修復が完了

■ Portici di Via Zamboni(大学地区)
 住所:Via Zamboni
 ROCK Project の主要フィールド
 大学・文化施設と連携した“公共空間の再解釈”が行われた



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■ 3. 垂直的中心を拒否する「水平の建築」

リゾームは垂直的ヒエラルキーを拒否する。
イタリアの新しい建築も、タワー型の象徴性より、水平的・分散的な構造を重視する傾向がある。

ex.ボスコ・ヴェルティカーレ(Boeri)
一見タワーだが、都市生態系を「分散的に」都市へ接続するネットワーク装置として読める。

Bosco Verticale
 住所:Via Gaetano de Castillia 11, 20124 Milano, Italy
 地区:Isola(イゾラ)/Porta Nuova(ポルタ・ヌオーヴァ)
 最寄り駅:Gioia(M2 緑線)、Garibaldi FS(M2/M5)

2棟のタワーで構成されており、Torre E(110m)と Torre D(76m)が並んで立っている。
Bosco Verticale は単体の建築というより、Porta Nuova の歩行者ネットワーク・BAM(Biblioteca degli Alberi)・Isola の街区再生と連動した“都市生態系ノード”として機能している。



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ex.レンゾ・ピアノの地域医療センター群
小規模で水平的な建築を点在させ、地域を網状に結ぶ。


1.ミラノ:Emergency 本部(Via Santa Croce)を核とした医療・福祉のノード

・小さな医療・福祉拠点が市内に散らばり、大病院ではなく市民に近い“まちの医療”を形成
・ピアノはこのネットワークの中心的な拠点を設計→ 都市の繊維に入り込む医療ノード
・Via Santa Croce 19, 20122 Milano, Italy



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2. ジェノヴァ:Gaslini 小児病院の分棟型キャンパス

・巨大な病院棟ではなく、複数の低層棟が緑地の中に点在
・それぞれが回廊・庭・歩行者動線でつながる
・ピアノの故郷ジェノヴァで長期的に続く再編→ 水平的で、環境と連続する医療キャンパス
・Via Gerolamo Gaslini 5, 16147 Genova, Italy



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■ なぜピアノは“点在する水平建築”へ向かったのか

理由はとてもシンプルで深い。

● ① 中心を作らず、地域全体を支えるため
巨大病院は象徴的だが、地域の生活動線から切り離される。
小規模拠点は **生活圏の中に入り込み、都市の流れと接続する。

● ② 光・風・緑を取り込みやすい
水平建築は環境と連続し、自然と医療・福祉を統合するピアノの哲学に合う。


● ③ 都市の“網状構造”を強化できる
点在する拠点が、歩行者動線、公園、住宅地、公共交通と結びつき、都市のリゾーム(根茎)を形成する。



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■ 4. 都市を「生態系」として扱うアプローチ

リゾーム的都市観は、生態系的都市観と親和性が高い。
イタリアでは、建築を「都市の生態的ノード」として扱うプロジェクトが増えている。

ex.ミラノの都市緑化ネットワーク

緑の回廊(Green Corridors)が都市を横断し、建築がそのノードとして機能する。

・BAM(Biblioteca degli Alberi Milano) × Bosco Verticale(Boeri)
・Navigli(運河)沿いの Green Corridor × Darsena 再生



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ex.パレルモの社会的エコロジー再生
移民・市場・公共空間を結ぶ「社会的リゾーム」。

・Ballarò(バッラロ市場)
・Piazza Casa Professa(カーザ・プロフェッサ広場)
・Piazza Mediterraneo(ピアッツァ・メディテラネオ)



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☆☆☆GGのつぶやき
イタリアの新しい建築は、ドゥルーズ=ガタリが語るリゾームの論理を都市空間の実践として体現している。そこでは建築は中心や象徴性を志向せず、むしろ歴史・地形・移民文化・生態系といった異質なレイヤー同士を横断的に接続する“媒質”として働く。BAM や Bosco Verticale、Ballarò の公共空間再生、Piuarch の街区介入などは、単体の建築ではなく、都市の繊維に入り込み、点在するノードを増殖させることで、都市そのものを開かれたネットワークへと変換する。

これはリゾームの特徴である非中心性・多様性・接続性・増殖性が都市スケールで展開している状態であり、建築はもはや形態ではなく、都市の流れを変え、関係を生み、社会的・生態的エコロジーを更新する“生成の装置”として機能する。こうしてイタリアの都市は、固定的な構造物ではなく、絶えず接続し変化し続ける生きた根茎として立ち上がっている。

その中でも、レンゾ・ピアノの最近の動きが気にかかった。明日は彼の最近の動きを読み解いてみよう。



by my8686 | 2026-02-10 10:10 | 気になる建築&空間 | Trackback