イラン情勢は、米・イスラエルによる大規模攻撃とイランの報復が重なり、短期間で中東全域へ拡大している。米・イスラエルの空爆で最高指導者ハメネイ師が死亡し、軍事・政府施設が広範に破壊されたことが転換点となった。トランプ大統領は空爆継続を宣言し、作戦は第4日目に入っている。イランはイスラエルや湾岸諸国の米軍基地に対し、ミサイルと無人機による反撃を実施し、ホルムズ海峡の封鎖も示唆した。
各地で米大使館が攻撃を受け、地域の米国民には退避勧告が出されている。死者はイランで500人超、イスラエルや湾岸諸国でも犠牲者が出ており、戦闘は沈静化の兆しを見せていない。今後はイラン指導部の後継問題と、米・イスラエルの追加攻撃が情勢を左右するとみられる。
日本は、邦人保護と中東からのエネルギー確保を最優先にしつつ、米国との同盟とイランとの独自関係の双方を損なわない外交姿勢を維持する必要がある。ホルムズ海峡の不安定化に備え、備蓄放出や代替調達を含むエネルギー安全保障を緊急モードで再設計し、シーレーン防護の役割も再定義せねばならない。中長期的には、中東依存を減らすためのGX(再エネ・原発・省エネ)の加速が不可避となる。
それはさておき、本日は 「野生アセンブリ都市」としてのイスタンブール(トルコ)を読み解いてみよう。
イスタンブール(トルコ)
リゾーム的特徴
- ヨーロッパ/アジアの境界に位置し、文化・経済・宗教が多層的に混在
- 非公式住宅ゲジェコンドゥが都市の成長を支えてきた
- 都市の中心が単一ではなく、複数の“結節点”がネットワーク状に広がる
※イスタンブルは欧亜の境界性を基盤に、文化・宗教・経済が重層的に交差する都市である。非公式住宅ゲジェコンドゥが成長を下支えし、中心が一点に収束せず、複数の結節点がネットワーク状に広がる。こうした多中心性と非線形な拡張が、都市をリゾーム的構造として特徴づけている。
最もリゾーム的な場所:ガラタ橋(Galata Bridge)周辺エリア
・エミノニュ側(旧市街側)
Eminönü, Fatih, Istanbul, Türkiye
※歴史的半島の玄関口として港・バザール・モスクが集まり、古都コンスタンティノープルの中心として栄えた商業と交通の要衝で、今も活気に満ちる観光拠点。
・カラキョイ側(新市街側)
Karaköy, Beyoğlu, Istanbul, Türkiye
※対するカラキョイ(新市街側)は、ジェノバ商人以来の商業港として発展し、現在は再開発が進む文化・グルメ・アートの拠点で、歴史とモダンが交差する洗練された地区。
イスタンブールは、ヨーロッパとアジアの境界に立つ地政学的条件のもと、文化・宗教・経済が重層的に交差する都市である。ゲジェコンドゥのような非公式住宅が成長を下支えし、都市中心は単一化せず、多数の結節点がネットワーク状に広がる。この多中心性こそ、都市を固定的な階層ではなく、横へ伸びるリゾームとして捉える視点を際立たせる。
トルコ近代文学と思想を代表する作家にアフメト・ハミディン・タンプナル(Ahmet Hamdi Tanpınar)がいる。
彼は、イスタンブールの多層的時間性を描いたことで知られる。
東西文明の交錯、伝統と近代化の緊張、断絶と連続というテーマを一貫して探究し、都市そのものを“生成し続ける存在”として捉えた。
代表作『時間調整研究所』では、制度化と近代化の滑稽さを通じて、トルコ社会の深層構造を哲学的に照射している。
タンプナルの思想は、トルコ近代が抱える「断絶と連続」の問題を中心に展開される。彼は、オスマン帝国から共和国へと急激に移行した社会の中で、伝統と近代化が単純な対立ではなく、複雑に絡み合う“多層的時間”として共存していると捉えた。
イスタンブールという都市は、その重層性を最も鮮明に示す場であり、過去の遺構・宗教的感性・近代的制度が同時に息づく「生成し続ける都市」として描かれる。タンプナルは、近代化を外来の模倣として批判するのではなく、文化的深層に根ざした“内発的近代”の可能性を探究した。
彼の文学作品は、制度化の滑稽さや時間意識の揺らぎを通して、トルコ社会の精神構造を哲学的に照射し、東西の狭間で揺れる主体の在り方を問い続けている。
タンプナルの思想を都市論へ接続すると、イスタンブールは「断絶と連続」が同時に生きる多層的時間の場として理解される。過去の遺構、宗教的感性、近代制度が併存し、都市は単一の中心へ収斂せず生成し続ける存在となる。これはリゾーム的都市性――多中心性・混淆性・横断的連結――を読み解く理論的枠組みとして機能し、都市そのものを動的な時間のネットワークとして捉える視点を与える。
memo
原弘司の視点で読むなら、イスタンブールは欧亜の境界性と多中心性が織りなす「場の力学」として立ち上がる。
歴史的形態の保存よりも、港・橋・坂・市場といった結節点が生む流動的な都市の“気配”に注目し、ガラタ橋周辺のように異質な人・制度・時間が交錯する領域を、都市を生成させる開放系の構造**として捉えるだろう。固定的秩序ではなく、接続が都市を形づくるという視点が強調される。
「アフメト・ハミディン・タンプナル」(Ahmet Hamdi Tanpınar, 1901–1962)
トルコ近代文学を代表する作家・詩人・思想家。
イスタンブール大学文学部で学び、のちに同大学で文学教授として教鞭をとった。
共和国初期の文化政策にも関わり、国会議員を務めた時期もある。文学者としては小説、詩、批評を手がけ、代表作『時間調整研究所』『五つの都市』などで、東西の交錯、伝統と近代の緊張、都市の多層的時間性を主題化した。トルコ近代化の精神的深層を探究した思想家として高く評価されている。
トルコ近代文学と思想を象徴する存在であり、オスマン帝国から共和国へと急激に移行した社会の精神的断層を、独自の時間哲学と都市感覚によって描き出した。
彼の中心的関心は「断絶と連続」の問題であり、近代化を単なる西洋模倣としてではなく、文化の深層に根ざした“内発的近代”として再構成しようとした点に特徴がある。
イスタンブールは彼にとって、過去の遺構・宗教的感性・近代制度が同時に息づく多層的時間の場であり、都市そのものが生成し続ける存在として立ち現れる。
代表作『時間調整研究所』では、制度化の滑稽さや時間意識の揺らぎを通して、トルコ社会の精神構造を批評的に照射し、東西の狭間で揺れる主体の在り方を問い続けた。
彼の思想は、都市を固定的な形ではなく、複数の時間と感性が交錯する動的な場として捉える都市論へと接続可能である。
☆☆☆GGのつぶやき
イスタンブールは、タンプナルの視点では歴史が層状に積み重なる都市ではなく、異なる時間・制度・感性が横断的に接続し続けるリゾーム的生成の場として立ち上がる。オスマン的感性、共和国的制度、宗教的情動、近代合理性、さらにはゲジェコンドゥの非公式性までが階層化されずに交差し、都市空間の中で絶えず再編される“線”として作用する。断絶と連続が同時に生起する時間観が、多中心的で生成変化する都市像を形づくる。