米国とイスラエルは2月末からイランへの大規模空爆を継続し、軍事施設や政府中枢を集中的に攻撃している。イラン国営テレビは最高指導者アリー・ハメネイ師の死亡を確認し、後継者は未定のまま政治的空白が生じている。戦闘はイラン国内にとどまらず、イスラエル・レバノン・湾岸諸国へ拡大し、イランはミサイルやドローンで報復攻撃を実施。死者は1,200人超に達し、子どもの犠牲も増加している。米国は「作戦は始まったばかり」と強硬姿勢を維持し、イスラエルはテヘランやベイルート南部への攻撃を強化。アゼルバイジャンのナヒチェヴァンでもドローン攻撃が発生し、戦線はさらに広がる兆しを見せる。地域全体が緊張の連鎖に入り、外交的出口は見えていない。
イラン情勢の悪化で原油価格が急騰し、南アフリカは燃料をほぼ輸入に依存するため、ケープタウンでもガソリン・輸送費・食品価格が上昇する見通しが強い。専門家は、燃料高騰によるインフレ圧力、金利引き下げの停止、物流コスト増を警告している。さらに、南アの対イラン関係が政治的リスクとして注目され、企業活動への二次的打撃も懸念されている。
ケープタウンは国家の統治能力が限定される一方、非公式経済・移民ネットワーク・観光資本・自然環境が都市を再編する“多層アクター都市”へ進化していく。中心部は国際資本で洗練され、周縁部は治安・インフラの不安定化で野生性が強まる。水不足や山火事など自然も都市の意思決定主体となり、制度と非制度、人工と自然が混在する“野生の秩序”がさらに濃くなる。
本日はその 「野生アセンブリ都市」としてのケープタウン(南アフリカ)を読み解いてみよう。
ケープタウン(南アフリカ)
リゾーム的特徴
- アパルトヘイトの空間構造を、市民運動・文化・経済が横断的に再編
- 非公式居住地と富裕層エリアが複雑に接続
- 都市の中心性が複数に分散し、ネットワーク型の都市構造へ移行
※歴史的分断を横断する“接続の政治”がリゾーム的
最もリゾーム的な場所:Woodstock–Salt River
Woodstock–Salt River, Cape Town, Western Cape, South Africa
ケープタウンでは、アパルトヘイト期に固定化された空間的分断を、市民運動・文化・経済が横断的につなぎ直し、非公式居住地と富裕層エリアが複雑に接続する構造が生まれている。都市の中心性は複数へと分散し、ネットワーク型へ移行する中で、歴史的断絶を越えて関係を編み直す“接続の政治”がリゾーム的特徴として現れている。
アパルトヘイトが刻んだ空間的断絶を、ケープタウンでは市民運動・文化実践・非公式経済が横断しながら再配線している。富裕層エリアとインフォーマル居住地が境界を滲ませつつ接続し、都市中心は単一のヒエラルキーではなく複数の結節点へと分散する。固定化された領域を逸脱し、異質な要素同士が横方向に結び直されるこの“接続の政治”こそ、都市をリゾームとして生成し続ける力である。
ケープタウンを語るうえで重要な思想家にアチーレ・ンベンベ(Achille Mbembe)がいる。
彼は、アパルトヘイトが刻んだ境界を、ケープタウンでは市民運動・文化・非公式経済が横断し続け、空間の配線そのものを再構成している。
富裕層地区とインフォーマル居住地が境界を滲ませながら接続し、都市中心が単一の核を失って複数の結節点へと分散する動態は、ドゥルーズの言うリゾーム的生成そのものだ。
固定的な領域や階層的中心を前提とせず、異質な要素が横方向に結び直され、都市は絶えず新たな配列へと変形する。
ケープタウンはまさに、分断を横断する接続が都市そのものを生成し続けるリゾーム的空間として現れている。
固定化された領域を逸脱し、異質な要素が横方向に接続し続けるこの動態こそ、都市をリゾームとして生成させる力である。
memo
「境界が滲む代表的エリア」
① ハウトベイ(Hout Bay)
— Imizamo Yethu × 富裕層住宅地
ハウトベイは、**高級住宅地・観光地・漁港**が同居する湾岸エリアで、そのすぐ隣にインフォーマル居住地 Imizamo Yethuが広がる。
地形的に谷を共有し、道路・商業施設・公共空間を介して日常的な接触が生まれるため、「最も象徴的な境界の滲み」として国際的にもよく研究されている。
② コンスタンシア(Constantia)周辺
— 高級ワイン農園 × 労働者居住地
コンスタンシアは南ア屈指の富裕層地区だが、周辺には農園労働者のための小規模インフォーマル集住地が点在し、歴史的な労働関係を軸に空間的接続が維持されている。
③ ケープフラッツ周縁部
— 中間層化する地区とインフォーマルの混在
ケープフラッツは従来「分断の象徴」だったが、近年は商業施設や交通網の発達により、中間層住宅地とインフォーマル居住地が複雑に接続するエリアが増えている。
※最も典型的で国際的に引用されるのは ハウトベイ(Imizamo Yethu)。
富裕層住宅地とインフォーマル居住地が地形・生活動線・経済活動を共有しながら接続しており、「アパルトヘイト的境界が滲む都市空間」の代表例とされる。
「アチーレ・ンベンベ」(1957–)
カメルーン出身の政治思想家で、パリ第1大学で博士号を取得後、米国・フランス・南アフリカの大学で研究を重ね、現在はヨハネスブルグを拠点に活動する。
アフリカ現代思想を代表する存在であり、植民地主義・暴力・国家・身体・空間をめぐる権力作用を批判的に分析する。
代表概念「ネクロポリティクス」は、国家が生と死を管理し、特定の集団を“死に晒す”統治形態を指し、アパルトヘイト以後の都市空間や境界の政治を読み解く鍵となった。
彼は都市を固定的な領域ではなく、移動・非公式経済・文化実践が境界を横断し続ける生成的空間として捉え、分断を再生産する権力構造と、それを逸脱し接続を生み出す生活の力を同時に描き出す思想家である。
主要著作3冊
1. 『On the Postcolony』(2001)
ポストコロニー(植民地以後)の権力・主体性・暴力を分析した代表作。アフリカ研究と批判理論の転換点とされる。
※『On the Postcolony』は、植民地支配後のアフリカ社会に残された権力構造や暴力、主体性の形成を多角的に分析し、ポストコロニー特有の統治性と日常の権力作用を描き出した著作である。植民地主義の遺制が現代社会にどのように浸透し続けるかを批判的に示し、アフリカ研究と批判理論に大きな転換をもたらした。
※権力は制度ではなく“日常”に潜む
暴力や支配が国家の外側、身体・欲望・儀礼・ユーモアといった日常の中で再生産されることを示す。
2. 『Critique of Black Reason』(2013 / 英訳2017)
「黒性(Blackness)」が近代世界でどのように構築され、管理されてきたかを批判的に読み解く。グローバル資本主義と人種化の問題を結びつけた重要書。
※『Critique of Black Reason』は、近代世界が「黒性(Blackness)」という概念をどのように作り上げ、分類し、管理してきたのかを批判的に検証する著作である。植民地主義から資本主義、グローバル化に至る歴史の中で、人種化が知・権力・経済の編成と結びつく構造を明らかにし、近代的理性そのものを問い直す重要な理論的介入となっている。
※人種化は歴史的偶然ではなく“近代の装置”である
『Critique of Black Reason』は、黒性が近代世界の知・経済・統治を支える構造的カテゴリーであることを暴く。
3. 『Necropolitics』(2016 / 英訳2019)
国家や権力が「誰が生き、誰が死ぬか」を決定する力=ネクロポリティクスを提起した代表的理論書。現代の暴力・統治・境界管理を読み解く鍵となる。
※『Necropolitics』は、国家や権力が「誰を生かし、誰を死に向かわせるか」を決定する統治の論理=ネクロポリティクスを提示し、近代的主権の核心を暴力と死の管理に見いだす著作である。植民地主義、占領、国境管理、警察権力などを分析し、生政治では捉えきれない現代の統治形態を明らかにする理論的基盤となっている。
※主権とは“生かす力”ではなく“死を配分する力”である
『Necropolitics』は、国家や権力が誰を生かし、誰を死に向かわせるかを決める“死の政治”を現代統治の中心に据える。
☆この3冊は、権力・人種・暴力・国家・主体性 を“西洋中心の近代”とは異なる角度から再構成するための理論的レンズを提供する。つまり、「世界はこう見えるはずだ」という前提そのものを疑う力これこそが、ムベンベから学ぶべき最大の収穫だろう。
現在のイラン紛争は、ムベンベが描いた三つの論点を鮮明に示している。
『On the Postcolony』が語るように、植民地的支配の遺制は中東の国家形成と暴力の様式に深く残り、日常の統治そのものが戦争を再生産する。
『Critique of Black Reason』が示す“他者化の装置”は、地政学的敵対を正当化する枠組みとして機能し、特定の地域・宗派が構造的に危険視される。
『Necropolitics』の核心である「誰が生き、誰が死ぬかを決める権力」は、空爆・制裁・国境管理を通じて露骨に発動し、死の配分が政治そのものとなっている。
☆☆☆GGのつぶやき
アパルトヘイト的空間編成の残滓を、市民運動・文化実践・非公式経済が横断的に撹乱し再配列するケープタウンでは、富裕層地区とインフォーマル居住地が境界を滲ませつつ接続し、都市中心性は多極化する。領域性・階層性に基づく統治的空間を逸脱し、異質な要素が横断的連結を生成するこの動態は、都市をリゾーム的生成過程として捉えるドゥルーズ的空間論と最も深く共鳴する。