イラン紛争は依然として激化しており、米国とイスラエルによる空爆は「最も激しい日」と評される規模に達している。イランはこれに対し、イスラエルおよび湾岸諸国への報復攻撃を継続しており、テヘランでは市民が「最悪の夜」と形容する空爆被害を受けている。
最高指導者の後継としてモジュタバ・ハメネイが指名されたことを契機に、イランは軍事姿勢を一段と強硬化し、ホルムズ海峡での機雷敷設や石油インフラ攻撃を強めている。これにより原油価格は100ドルを超え、国際市場は大きく動揺している。
米国は作戦が「当初計画より大幅に前倒しで進んでいる」としつつ、攻撃継続の姿勢を崩していない。
一方、戦火はレバノンやバーレーンなど周辺地域にも拡大し、民間施設への被害も報告されている。紛争は長期化の様相を呈し、国際社会は沈静化に向けた外交努力を急いでいる。
最悪シナリオでは、イランがホルムズ海峡を完全封鎖し、米国・イスラエルとの全面戦争に発展する可能性がある。これにより中東全域が戦域化し、サウジ・UAE・レバノン・イラクなどが連鎖的に参戦する恐れがある。原油供給は大幅に途絶し、世界経済は深刻な混乱に陥る。さらに、イランが弾道ミサイルや無人機を大量投入し、イスラエルや湾岸諸国の都市部に甚大な被害が生じる事態も想定される。
然れどもさて置き、昨日読み解いたスイス・サウンド・ボックスは、約4万本を超える角材を積層して構成された木造パビリオンである。
使用された角材はすべて、施工現場へ搬入される直前に伐採された生材で、主要な壁体を形成する部材は断面100×200ミリ(3.9×7.9インチ)の矩形断面を持つ。
これらの角材は層ごとに方向を変えながら積層され、その間に壁面に対して直交方向に配置された小角材がスペーサーとして挿入されている。
小角材は45×45×544ミリ(1.8×1.8×21.4インチ)で、厚みのある主材の周囲に空気が循環するための通気層を確保する役割を担っていた。
あらためて、各工程を読み解いてみよう。
ズントーは、乾燥前の生木(green wood)が乾く過程で必ず縮むという性質に着目した。
この収縮は、通常の建築では「狂い」「変形」として避けられるものだが、スイス館では逆に締め付け力(テンション)を生むエネルギー源として利用されている。
1. コンクリート基礎
2. 鋼製ベースプレート
各コンクリート基礎の上部にアンカー固定される。
3.アスファルト舗装
サウンドボックス内部の仕上げ床面となる。
4. 積層木材 I
主要な角材は下部の鋼製部材によって支持される。
仕組み①:積層材の“自己締結”
•100×200mmの角材を層状に積む
•各層の間に45×45mmの小角材(スペーサー)を直交方向に挟む
•生木が乾燥 → 角材が縮む
•縮む方向に応じて、積層全体が内部へ向かって締め付けられる
つまり、釘・金物・接着剤を使わずに、木材自身の収縮で構造体が締まっていく。
5. 木製ブロック(スペーサー)
主要角材に直交する向きに配置され、角材間に通気のための空隙をつくる。
6. 積層木材 II
次の層の角材をスペーサーの上に直接積み重ねる。
7. ロッド支持部
主要テンション支持部では、スペーサー内にガイドが設置され、テンションロッドが貫通する。
仕組み②:スペーサーが“通気”と“均質なテンション”を生む
スペーサーは単なる隙間材ではなく、次の二つの役割を担う。
•通気層の確保:空気が流れ、乾燥が均質に進む
•収縮力の分散:角材が不均一に縮むと構造が歪むため、スペーサーが“力の逃げ道”をつくる
結果として、全体が均質に締まる=構造が安定する。
8.下部壁体
この積層システムを繰り返し、屋根レベルまで壁体を構築する。
9.平行スペーサー
屋根レベルでは、屋根構造を受けるために壁と平行方向にスペーサーを配置する。
10.屋根構造
壁と同じ角材を用いて、壁から壁へと架け渡す屋根構造を形成する。
11.屋根スペーサー
屋根構造の上にブロックを配置し、上部壁体を受ける。
仕組み③:外周フレームによる“最小限の拘束”
スイス館は完全なフリースタックではなく、外周に最小限の鉄骨フレームがあり、これが次の役割を果たす。
•乾燥収縮によるテンションを外周で受け止める
•全体の“箱”としての形態を保持する
•しかし、木材の動きを妨げないようあくまで緩やかな拘束に留める
ズントーは「構造を固定する」のではなく、「素材が動く余地を残したまま安定させる」という極めて有機的な構法を採用している。
12.上部壁体
屋根より上の壁体をさらに積層していく。
13.テンションキャップ
壁体最上部に、テンション構造を受けるための特別な構成部材を挿入する。
14.テンションロッド
鋼製ロッドとスプリング機構によって壁体全体を締め付け、構造的安定性を確保する。
仕組み④:テンションが音響特性を変化させる
木材が締まることで、内部の空気層や木材の振動特性が変化し、次のような効果が生まれる。
•足音・声・風の音が柔らかく吸収される
•木材の密度変化により、時間とともに音響が変化する
•建築が“鳴る”というズントー的な感覚体験が強まる
テンションシステムは、構造・環境・音響が一体化した“感覚の器”として機能する。
スイス・サウンド・ボックスのテンションシステムは、
•生木の乾燥収縮
•通気と力の分散
•最小限の拘束
•時間とともに変化する音響
これらが絡み合う動的なアセンブラージュ(生成的構造体)であり、ズントーの思想が最も純粋に現れた構法と言える。
スイス・サウンド・ボックスの 1〜14 の工程は、単なる施工手順ではなく、テンションシステムという“動的構造体”を成立させるための連続した生成プロセスとして読むと、構造・施工・音響が一体化して見えてくる。
次は三つの観点を統合しながら、各段階がどこに効いているのかを立体的に整理してみよう。
1. 構造力学:テンションを成立させる“力の流れ”をつくる工程
● 基礎〜ベースプレート(1–2)
- 木材の収縮テンションは上から下へ流れるため、基礎はテンションを受け止める“反力点”になる。
- ベースプレートは木材の動きを拘束しすぎず、しかし全体の幾何形状を保持する“柔らかい拘束”として働く。
● 積層材+スペーサー(4–6)
- 生木が乾燥して縮むと、積層材同士の摩擦力が増し、横ずれを抑える自己締結構造が成立する。
- スペーサーは乾燥ムラを防ぎ、均質なテンション分布をつくる。
● ロッド支持〜テンションロッド(7・13・14)
- ロッドは木材の収縮力を補完し、全体を縦方向に締め上げる“第二のテンション源”となる。
- スプリング機構が木材の変形を吸収し、時間変化に追随する柔構造を実現する。
2. 施工プロセス:完成後に強度が増す“逆転した工法”を成立させる工程
● 生木を積む(4–8)
- 施工時はまだ木材が湿っており、構造体は“ゆるい箱”に近い。
- 完成後に乾燥が進むことで、時間とともに強度が増すという通常の木造とは逆のプロセスが起こる。
● 屋根構造の挿入(9–11)
- 屋根は単なる上部構造ではなく、壁体のテンションを横方向に受け止める“構造的ブリッジ”として機能する。
- 屋根スペーサーは、上部壁体の荷重とテンションを分散し、全体の力学バランスを整える。
● テンションキャップ(13)
- 乾燥収縮による締め付け力と、ロッドの引張力を受け止める“力の結節点”。
- ここで縦方向のテンションが閉じることで、構造体が一体化する。
3. 音響:積層構造とテンションが“静けさの質”をつくる工程
● 積層材+スペーサー(4–6)
- 隙間が微細なディフューザーとなり、高周波を散乱させる。
- 空気層が多孔質吸音体のように働き、低周波を吸収する。
● 乾燥によるテンションの増加(施工後〜)
- 木材が締まるほど、振動の伝達が均質化し、音の“濁り”が減る。
- 時間とともに音響が変化し、建築が“鳴り方を変える”というズントー的体験が生まれる。
● 屋根構造(10–11)
- 屋根の積層材も音を吸収・散乱し、内部空間の残響時間を短くする。
- 上部壁体との接続部が音の逃げ道となり、内部の静けさが深まる。
まとめ:14段階は“構造・時間・感覚”を統合する生成プロセス
1〜14 の工程は、
- 構造力学的には:生木の収縮とロッドの引張を組み合わせた動的テンション構造
- 施工的には:完成後に強度が増す逆転工法
- 音響的には:積層とテンションがつくる時間変化する静けさ
という三つの層が絡み合い、建築が時間とともに生成し続ける“生きた構造体”をつくり出している。
☆☆☆GGのつぶやき
スイス・サウンド・ボックスは、固定された建築ではなく、生木・空気・テンション・時間が絡み合いながら絶えず生成し続ける「アセンブラージュ」である。角材は要素ではなく、乾燥収縮という固有の“欲動”をもつ力の束であり、スペーサーはその力を分散し、逃がし、別の関係を立ち上げる媒質となる。外周フレームやテンションロッドは、形を決める枠ではなく、力の流れを妨げずに保持する“最小限の拘束”として、生成の場を安定化させる。こうして建築は、完成後に強度を増し、音響を変化させ、内部の静けさを深化させる“時間的差異”を孕む。ズントーは物質を支配するのではなく、物質が自ら組織化するプロセスを導き出し、建築を「出来上がるもの」ではなく「生成し続ける関係体」として提示したのである。