カテゴリ:たかが映画、されど映画( 38 )

DVD映画「ラスト・フェイス」を観る

行きつけのツタヤもついにセルフシステムとなってしまった。
定期的にメール配信されてくる準新作・旧作「100円」サービスを利用して久しぶりにレンタルした作品である。


まったくの予備知識なしのジャケ借りしたDVD「ラスト・フェイス」。




c0352790_11582811.jpg




レンタル動機は、シャーリーズ・セロンの美貌とアフリカ内戦の過酷な現実を描いた社会派ドラマの2点。





c0352790_11585707.jpg




観終わったあとから解ったことだが、第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で平均0.2点という最悪の酷評を受けたという。
あまりの酷評に日本では封切りされなかったという幻の作品である。




あらためて、その内容を振り返ってみよう。

監督は、「イントゥ・ザ・ワイルド」などで監督としても活躍するオスカー俳優ショーン・ペンのメガホン。




c0352790_11591623.jpg






「アトミック・ブロンド」のシャーリーズ・セロン&「ノーカントリー」のハビエル・バルデム共演でアフリカ内戦の過酷な現実を描いた社会派ドラマである。





c0352790_11593433.jpg





貧困国に医療援助資金を提供する組織に所属するレンは、西アフリカの内戦地帯で救援医師のミゲルと出会う。
自らの危険を顧みず患者たちを救おうとするミゲルに心を動かされたレンは、彼に惹かれ、過酷な状況下で互いに支え合うようになる。
しかし、ミゲルのある裏切りによって2人の関係は切り裂かれてしまう。



個人的には、過酷な現実を描いた社会派ドラマに徹してほしかった作品である。

国境なき医師団の男女(ハビエル・バルデムとシャーリーズ・セロン)のラブストーリーの崩壊劇を混ぜ込んだのは、精神的過酷さを表現したかったのか。





c0352790_11595999.jpg





共演には「レオン」のジャン・レノ、「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」のジャレッド・ハリス、「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロスら実力派俳優を揃えてはいるが、持ち味を出し切れていない消化不良感は否めない。






c0352790_12002188.jpg









☆☆☆GGのつぶやき
プライムビデオ等で簡単に観れてしまう大量の映画作品。
濃厚で質感の高い作品もベッドで横になりながら観れてしまうお手軽さが、感動を削いでしまう現実がある。
映画が教師だったあの時代が、懐かしくもある。






























































[PR]

by my8686 | 2018-06-24 12:00 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

映画「孤狼の血」を観る

父の日の日曜日は、映画「孤狼の血」を観る。




c0352790_21544790.jpg





広島の架空都市・呉原を舞台に「警察小説×『仁義なき戦い』」と評された柚月裕子の同名小説を役所広司、松坂桃李、江口洋介らの出演で映画化された作品である。





c0352790_21550395.jpg





「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌監督がメガホンをとった。

昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島・呉原で地場の暴力団・尾谷組と新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の加古村組の抗争がくすぶり始める中、加古村組関連の金融会社社員が失踪する。






c0352790_21552259.jpg




所轄署に配属となった新人刑事・日岡秀一は、暴力団との癒着を噂されるベテラン刑事・大上章吾とともに事件の捜査にあたるが、この失踪事件を契機に尾谷組と加古村組の抗争が激化していく。

ベテランのマル暴刑事・大上役を役所、日岡刑事役を松坂、尾谷組の若頭役を江口が演じるほか、真木よう子、中村獅童、ピエール瀧、竹野内豊、石橋蓮司ら豪華キャスト陣が脇を固める。





c0352790_21554733.jpg






☆☆☆GGのつぶやき
役所の広島弁にところどころ違和感を感じるが、映画としては及第点といったところか。
リアルさを追求した「仁義なき戦い」ですら広島人からすれば、やはり作り物っぽさが鼻をついたものである。































































[PR]

by my8686 | 2018-06-17 21:56 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

結婚39周年記念には、映画のあと寿司懐石に舌鼓

5月27日は、吾輩の誕生日と39回目の結婚記念日を迎える。

昨年は、蒲刈でカヌーに興じた。初夏にはまた行ってみたいと思う。
今年は、次男の略結納やら母の入退院などで気持ちのゆとりがもてなかった。

そんなこんなで、今年は静かに好きな映画と食事で祝杯とする。


映画は、「モリのいる場所」。
30年ほとんど家を出る事なく庭の生命を描き続け、97歳で亡くなるまで生涯現役だった画家の熊谷守一を主人公に、晩年のある1日をフィクションで描いた作品である。




c0352790_14171547.jpg



こんな夫婦のあり方も、悪くない。


仙人と呼ばれた画家熊谷守一の生活ぶりがまぶしい。





c0352790_14173546.jpg





「無一物」の言葉が魂をくすぐる。






c0352790_14174955.jpg




蟻の行列を一日中観察していたという異人ぶりには、驚きとともになんともいえない笑いがこみあげてくる。



そんなこんなで、午後6時に予約した古田台にある「厳遊庭」を訪れる。




c0352790_14181031.jpg




古田はその昔、小学校に通学した町である。
こんな山の上から瀬戸内海が眺望できるとは・・・。

思いもかけない絶景を前に、寿司懐石に舌鼓をうちつつ熱燗をいただく。






☆☆☆GGのつぶやき
人生を振り返るなど柄にもないことなのだが、今年ばかりは色んなことが走馬灯のように脳裏をかけめぐった。
















































































[PR]

by my8686 | 2018-05-27 20:30 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

是枝監督作映画「万引き家族」カンヌ最高賞受賞を読み解く

21年ぶりの快挙である。新聞報道の見出しに『「フジとタッグ」射止めたカンヌ、是枝映画に商業性足す』とある。




c0352790_16481294.jpg





あらためて、その内容を読み解いてみよう。


今の日本映画界の礎は、芸術面からも商業面からも1990年代後半に作られたと言えるのではないか。
ドキュメンタリー作家だった是枝裕和監督が、初の劇映画「幻の光」でベネチア国際映画祭のコンペティション部門に参加したのが1995年。それ以後、3大映画祭で徐々に地歩を固めていき、今回ついに頂点を射止めた。





c0352790_16482958.jpg




彼と同じく90年代に国際舞台にデビューした監督に北野武、河瀬直美、黒沢清らがいる。そしてこの20年余り、4Kと称される彼らが“国際試合”の日本代表として日本映画の芸術面をずっと支え続けてきた。

98年。テレビドラマを映画化した「踊る大捜査線 THE MOVIE」が公開され、興行収入101億円のヒットとなった。製作したのは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったフジテレビだ。

ちなみに、この年の日本映画と外国映画の興収シェアは3対7。圧倒的に「洋高邦低」の時代だった。ところが、「踊る」のヒットをきっかけに観客の志向が変化する。

フジを先頭走者とするテレビ局主導映画が若者らの広い支持を受け、00年代半ばに邦洋のシェアが逆転。「邦高洋低」の時代が今も続いている。




c0352790_16485353.jpg



テレビ局映画は大量の観客を集める半面、どうしても芸術性や社会性を軽視する傾向にある。テレビ局が作る娯楽大作と、それ以外の低予算の芸術映画。日本映画は2極化が進んだ。

この2極化を食い止めようとタッグを組んだのがフジと是枝監督である。

13年、フジは、人気スターの福山雅治を主演に迎えた是枝作品「そして父になる」を製作する。この作品がカンヌで審査員賞を獲得し、32億円の興収を上げて商業性と芸術性の両面で成功する。是枝監督の劇映画は、今回の「万引き家族」まで5本連続でフジを中心とする製作委員会で作られている。

是枝監督はデビュー当時こそ、先鋭な手法や主題が際立っていたが、「奇跡」(11年)では、九州新幹線開業に合わせてJR九州が企画した作品を手がけるなど、商業性と芸術性の融合に力を注いできた。




c0352790_16491388.jpg




「そして父になる」で初めてタッグを組んだ時に映画事業局長だった亀山千広BSフジ社長は言う。「カンヌの授賞式前、是枝監督と『今が一緒に組む絶妙のタイミングだった』と話し合ったのを覚えています」

芸術性と商業性、お互いに足りないものを補い合って、映画監督として、映画会社として、新たな地平に進もうとするタイミングだったということだろう。その成果が今回のパルムドールだ。
先鋭的な作品ではなく、商業性も兼ね備えた作品で日本映画が評価を得た意味は大きい。

かつての日本映画の巨匠たち、例えば黒澤明や溝口健二、小津安二郎らは、大手映画会社のエース監督であり、スター俳優を使って話題作を撮ってきた。
そもそも映画とは、非常に幅広い層にアピールしうるという、ハイカルチャーが持ち合わせない長所をもったメディアだ。





c0352790_16493146.jpg




今回は無冠だったが、もう1本のコンペ出品作、濱口竜介監督の「寝ても覚めても」もまた、39歳の新鋭監督が東出昌大というスター俳優の主演で撮った、初めての商業映画だった。
今年のカンヌの結果は、これからの20年、日本映画が歩んでいく方向を指し示している。




c0352790_16494311.jpg







☆☆☆GGのつぶやき
商業性と芸術性を両立させた映画作品でのカンヌ最高賞受賞は意味深い。
日本映画の方向性を指示したといわれる本作。
はたして、いかほどの映画なのか。公開が待ちどおしいと思える久しぶりの作品である。





























































































































[PR]

by my8686 | 2018-05-21 16:50 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

映画『ホース・ソルジャー』予告を読み解く

日曜日の朝。冷風が心地よい季節となった。昼間の日差しの強さは、ロードバイクランにはうってつけの季節である。
しかし、今日は次男を伴って荷物の移動作業に潰れそうである。




それはさておき、久しぶりに馬の登場する新作映画が目に飛び込んできた。

映画のタイトルは、『ホース・ソルジャー』。





c0352790_08113055.jpg





全世界を震撼させたアメリカ同時多発テロから17年。9.11直後の最初の反撃であり、最も危険な対テロ戦争の最前線部隊に志願した12人のアメリカ陸軍特殊部隊員“グリーンベレー”の雄姿を描いた作品だという。






c0352790_08115320.jpg






5月4日(金・祝)から公開されるという。




あらためて、そのストーリーのつかみだけでも読み解いてみよう。

2001年9月11日のその翌日、ミッチ・ネルソン大尉は、最も危険な対テロ戦争の最前線部隊に志願し、特殊作戦の隊長に任命される。テロ集団の拠点マザーリシャリーフを制圧するため、わずか12人でアフガニスタンへ乗り込み、反タリバンの地元勢力を率いるドスタム将軍と手を結ぶ。





c0352790_08121829.jpg




だが、現地に着いた彼らに、次々と予期せぬ危機が襲いかかる。敵の数は5万人。





c0352790_08123265.jpg




さらに将軍から、険しい山岳地帯で勝利を収めるための最大の武器は、ほとんどの隊員が1度も乗ったことのない“馬”だと言い渡される──。





c0352790_08124544.jpg





本作はハリウッドのヒットメーカーである映画プロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーが、デンマークのCM界の鬼才でコソボ紛争を追った報道写真家でもあるニコライ・フルシーを監督に抜擢し製作された。



c0352790_08130365.jpg





ミッチ・ネルソン大尉を演じるのは『アベンジャーズ』シリーズのクリス・ヘムズワース。


c0352790_08132090.jpg






腹心の部下に『シェイプ・オブ・ウォーター』でも注目されるマイケル・シャノン。


c0352790_08133238.jpg







『フューリー』のマイケル・ペーニャ。



c0352790_08141876.jpg







『ムーンライト』での演技が記憶に新しいトレバンテ・ローズらが脇を固める。



c0352790_08143587.jpg




MEMO

監督:ニコライ・フルシー
製作:ジェリー・ブラッカイマーほか
脚本:テッド・タリー、ピーター・クレイグ
原作:ダグ・スタントン「ホース・ソルジャー」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
出演:クリス・ヘムズワース、マイケル・シャノン、マイケル・ペーニャ、トレバンテ・ローズ
原題:12 Strong / カラー / シネスコ / 5.1chデジタル /130分
字幕翻訳:風間綾平
提供:ギャガ、ポニーキャニオン
配給:ギャガ
(C)2018 BY HS FILM, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
5月4日(金・祝)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
ウェブサイト:gaga.ne.jp/horsesoldiers/





☆☆☆GGのつぶやき
久しく馬に乗っていない。馬上から眺める風景と馬のリズムが体幹の記憶をくすぐる。
記念日には、どこか近場の乗馬クラブで記念走行をやりたいものである。
そして、この映画もぜひとも観てみよう。










































































































































[PR]

by my8686 | 2018-04-22 08:16 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

映画『蝶の眠り』+ 名住宅『中心のある家』

今日は、休みをとり午後から口腔外科で小手術を受ける。右奥歯下に出来た膿の除去だが、痛みには耐えねばなるまい。



それはさておき、阿部勤設計の自邸「中心のある家」が映画のロケ地として登場するという。


あらためて、その内容を読み解いてみよう。

映画『蝶の眠り』は韓国のチョン・ジェウン監督の作品。中山美穂演じる50代の美貌の小説家、松村涼子と、キム・ジェウク演じる韓国からの留学生、チャネの人間模様を描く。




c0352790_10242083.jpg



この映画で、松村涼子の自宅兼仕事場として登場するのが阿部勤の自邸〈中心のある家〉。1974年から約44年の月日の経つ名建築である。





c0352790_10243659.jpg




阿部は坂倉準三の事務所で〈神奈川県庁舎〉などを担当した建築家。1966年から70年までタイで高校などの設計に携わり、71年に坂倉準三建築研究所を退所して室伏次郎とアーキヴィジョン建築研究所を設立。その後、84年にアルテックを設立、今も自邸〈中心のある家〉から事務所に通っているという。




c0352790_10245072.jpg





〈中心のある家〉は、この家が入れ子状になっていることから名付けられた。コンクリートでつくられた7.7メートル角の正方形の箱の中に、同じくコンクリートの3.5メートル四方の箱が入っている。その上に木の屋根が載っている。この家では、I字型のキッチンをペニンシュラ型に変えた以外は大きな改修はしていない。軒に守られたコンクリートの壁は今もすべすべとした美しい表情を保っている。





c0352790_10250491.jpg





不思議な心地よさが漂う空間。無垢の素材で構成されているからだろうか。表面に何も塗らない木や石やコンクリートが主材となり、経年の“味”が出ている。天井板やカウンターの木もエイジングされてしっとりとした色合いになっている。





c0352790_10252125.jpg





さらに、居心地のよさのもう一つの理由は、あいまいな空間が多くあることだという。

外側の箱の1階部分にはインナーテラスのような、内部とも外部とも言いがたいスペースがある。
2階の「デイベッド」と呼ばれる場所は昼寝をしてもいいし、大きなソファのようにも使える。
2階の内側の小さな箱には数段の階段を上って入るようになっている。





c0352790_10253756.jpg




この家の“中心”を阿部自身が寝室にしているが、ジャンベというアフリカの太鼓を叩いたり、音楽を聴いたりもするという。
空間の役割をきっちりと決めない融通無碍な在り方は、涼子とチャネの不思議な関係にふさわしい。

さまざまな“居場所”があるのも、この家の特徴である。デイベッド、小さな座敷のような2階の“中心”の他に、1階、2階を結ぶ階段に座ってもいいし、1階にはあちこちに椅子が置かれ、玄関の脇や1階の土間のようなスペースにはベンチや庭にはハンモックがある。

映画でもそんな“居場所”のあちこちに俳優たちが行き来して物語が進行する。




c0352790_10255385.jpg




二重になった大小の箱にはあちこちに窓が開き、2階の壁は半分以上が窓になっており、眺めもいいし明るい。

1階の“中心”部分や北側はやや暗いスペースだが、1階と2階をつなぐ吹き抜けを通じて光が入るところもある。
明から暗へ、暗から明へと行き来していると、この家が実際よりはるかに大きなものに感じられる。

太陽の動きにつれて光が動いていくと、同じ場所でもまったく違った表情を見せる。
二重になった箱から窓を通じて見る庭は樹木が大きく成長し、木漏れ日が落ちる。




c0352790_10260621.jpg




スクリーンでも松村涼子とチャネはさまざまな光の中で小説を書き、争い、戯れる。小さいけれど居心地のいい大小の箱に守られているように、二人は自分たちだけの世界を築いていく。

さらに映画では涼子が書き進めている、植物画を描く女性と彼女の元に通ってくる男性との物語が劇中劇の形で語られる。

〈中心のある家〉が入れ子構造になっているのと同じように、物語も入れ子の構造になっているという。






c0352790_10262425.jpg




涼子は遺伝性のアルツハイマー病を患っており、記憶障害を起こすようになる。
チャネに執筆を手伝わせている小説は彼女が最後の仕事だと考えているものだった。

病状が進行した彼女は療養所に入る。
韓国に戻っていたチャネが久しぶりに来日すると、主のいなくなった家は街の図書館として生まれ変わっていた。





c0352790_10263751.jpg



中山美穂、キム・ジェウクの他には勝村政信や永瀬正敏ら実力派俳優が脇を固める。

音楽はゴーストライター騒動で名を知られることになった新垣隆。
彼の音楽が俳優陣のどちらかというと抑えた演技に潜む心情や運命を暗示する。

空間と音楽も俳優とともに、さまざまなものを語る映画になっているという。





☆☆☆GGのつぶやき
建築設計事務所「アルテック」。懐かしい響きである。
阿部勤の自邸〈中心のある家〉は、たしかその昔「室内」誌で読んだ記憶がある。
融通無碍で素の素材の心地よさが伝わってきた。自邸を建てるなら、こんな空間が良いと思っていた。
久しぶりに、中山美穂りんの映画でも観るか・・・そんな気分になったのである。












































































[PR]

by my8686 | 2018-03-28 10:27 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

映画「日の名残り」を観賞する

昨晩金曜日の夜は、先週レンタルしたDVD「日の名残り」を観賞する。




c0352790_14495485.jpg





原題「The Remains of the Day」。1993年イギリス映画。
1993年にジェームズ・アイヴォリー監督で映画化された。

1989年のブッカー賞を受賞したカズオ・イシグロの同名の小説の映画化である。





c0352790_14502165.jpg





カズオ・イシグロの作品をひとつ読んでおきたいと思い、日本語訳の電子図書をタブレットで読みはじめたものの、執事が主人の車で旅行に出発したあたりで止まってしまっていた。

一人称視点によるバイアスを巧妙に利用した例としてしばしば取り上げられる作品。
語り手の執事スティーブンスの元主人は、第二次世界大戦前における対独宥和主義者であるが、スティーブンスはその点を意図的にぼかしている。
また女中頭のミス・ケントンとの淡いロマンスについても回想の中で理想化されている。






c0352790_14504573.jpg




アカデミー賞では、主演男優賞、主演女優賞、美術賞、衣装デザイン賞、監督賞、作曲賞、作品賞、脚本賞の8部門にノミネートされた。





あらためて、そのあらすじを読み解いてみよう。


物語は1956年の「現在」と1920年代から1930年代にかけての回想シーンを往復しつつ進められる。




c0352790_14510966.jpg





第二次世界大戦が終わって数年が経った「現在」のことである。
執事であるスティーブンスは、新しい主人ファラディ氏の勧めで、イギリス西岸のクリーヴトンへと小旅行に出かける。





c0352790_14513289.jpg





前の主人ダーリントン卿の死後、親族の誰も彼の屋敷ダーリントンホールを受け継ごうとしなかったが、それをアメリカ人の富豪ファラディ氏が買い取った。

ダーリントンホールでは、深刻なスタッフ不足を抱えていた。なぜなら、ダーリントン卿亡き後、屋敷がファラディ氏に売り渡される際に熟練のスタッフたちが辞めていったためだった。





c0352790_14521522.jpg





人手不足に悩むスティーブンスのもとに、かつてダーリントンホールでともに働いていたベン夫人から手紙が届く。
ベン夫人からの手紙には、現在の悩みとともに、昔を懐かしむ言葉が書かれていた。

ベン夫人に職場復帰してもらうことができれば、人手不足が解決する。
そう考えたスティーブンスは、彼女に会うために、ファラディ氏の勧めに従い、旅に出ることを思い立つ。

しかしながら、彼には、もうひとつ解決せねばならぬ問題があった。

彼のもうひとつの問題。それは、彼女がベン夫人ではなく、旧姓のケントンと呼ばれていた時代からのものだった。
旅の道すがら、スティーブンスは、ダーリントン卿がまだ健在で、ミス・ケントンとともに屋敷を切り盛りしていた時代を思い出していた。






c0352790_14524045.jpg





今は過去となってしまった時代、スティーブンスが心から敬愛する主人・ダーリントン卿は、ヨーロッパが再び第一次世界大戦のような惨禍を見ることがないように、戦後ヴェルサイユ条約の過酷な条件で経済的に混乱したドイツを救おうと、ドイツ政府とフランス政府・イギリス政府を宥和させるべく奔走していた。

やがて、ダーリントンホールでは、秘密裡に国際的な会合が繰り返されるようになるが、次第にダーリントン卿は、ナチス・ドイツによる対イギリス工作に巻き込まれていく。






c0352790_14530115.jpg





再び1956年。ベン夫人と再会を済ませたスティーブンスは、不遇のうちに世を去ったかつての主人や失われつつある伝統に思いを馳せ涙を流すが、やがて前向きに現在の主人に仕えるべく決意を新たにする。

屋敷へ戻ったら手始めに、アメリカ人であるファラディ氏を笑わせるようなジョークを練習しよう、と。








☆☆☆GGのつぶやき
執事スティーブンスの語り口が日本語でも美しく語りかけてくる。しかし、どこか滑稽さが漂う。
愚直なまでの高潔さと職業倫理と厳格な行動規範を持つ執事。
古き良き英国の田園風景が心をうつ。






































































[PR]

by my8686 | 2018-02-24 14:53 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

映画「ブレードランナー 2049」を観る

三連休の中日。午後から映画「ブレードランナー 2049」を観る。




c0352790_08513486.jpg



リドリー・スコット監督がフィリップ・K・ディックの小説をもとに生み出した1982年公開の傑作SF「ブレードランナー」から、35年の時を経て生み出された続編である。




c0352790_08515174.jpg



スコット監督は製作総指揮を務め、「メッセージ」「ボーダーライン」などで注目を集めるカナダ出身の俊英ドゥニ・ビルヌーブ監督が新たにメガホンをとったという。





c0352790_08520519.jpg


c0352790_08521579.jpg




脚本は、前作も手がけたハンプトン・ファンチャーと、「LOGAN ローガン」「エイリアン コヴェナント」のマイケル・グリーン。





c0352790_08523161.jpg


c0352790_08524365.jpg



前作から30年後の2049年の世界を舞台に、ブレードランナーの主人公“K”が、新たに起こった世界の危機を解決するため、30年前に行方不明となったブレードランナーのリック・デッカードを捜す物語が描かれる。




c0352790_08530526.jpg


c0352790_08531737.jpg





前作の主人公デッカードを演じたハリソン・フォードが同役で出演し、「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリングがデッカードを捜す“K”を演じる。





c0352790_08534075.jpg


c0352790_08534949.jpg







☆☆☆GGのつぶやき
久しぶりに見ごたえのあるSF映画であった。
ドゥニ・ビルヌーブ監督の前作「メッセージ」を数日前に観てその洗練さに興奮していた。
斬新なビジュアル感と人間の本質を問う姿勢。
単なる際物のSF映画に終わっていない点がよかった。
しかし、前作を踏襲し日本的なるものを取り入れたというが、なんとそれが「柿の種」とは恐れ入る。













































































[PR]

by my8686 | 2017-11-04 23:59 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

映画「渚にて」を読み解く

土曜深夜、借りてきたDVD映画「渚にて」を観る。

昨日通勤途中、愛車のラジオで聴いた解説に興味をそそられメモる。
北朝鮮核ミサイル危機の寄り道コメントながら、この映画が観たくなった。



c0352790_10433017.jpg






あらためて、その内容を読み解いてみよう。



ネヴィル・シュートの原作に基づき、「手錠のままの脱獄」のスタンリー・クレイマーが製作・脚本した人類の未来の物語。脚色はジョン・パクストン。撮影担当は、ジュゼッペ・ロトゥンノ。音楽はアーネスト・ゴールド。出演するのは「勝利なき戦い」のグレゴリー・ペック、フレッド・アステア、エヴァ・ガードナー、アンソニー・パーキンスなど。製作スタンリー・クレイマー。

1964年。第3次世界大戦の原水爆による戦闘のため、地球上の北半分は絶滅し、死の灰は南半球にも迫っていた。
タワーズ艦長(グレゴリー・ペック)指揮の米原子力潜水艦ソーフィッシュ号は、難を逃れてオーストラリアのメルボルンに入港した。





c0352790_10435043.jpg





オーストラリアの若い海軍士官ピーター(アンソニー・パーキンス)は、妻と赤ん坊を故国に残し、ソーフィッシュ号に同乗して北半球偵察に行くことを命じられた。
タワーズ艦長に会ったピーターは、艦長を自宅のパーティに招いた。

女友達モイラ(エヴァ・ガードナー)もその席に招かれた。
パーティの席上、原子科学者オスボーン(フレッド・アステア)の、原子力戦に関する口論で一同は雰囲気をそがれてしまった。

タワーズ艦長はモイラにひかれるものをおぼえ、2人はデイトした。
しかし、彼が故国の妻子の話ばかりするのでモイラはいらいらした。





c0352790_10440804.jpg





ソーフィッシュ号はやがて出航した。到着したサンフランシスコは死の町と化していた。サンディエゴで死滅したはずの町から発信されている無電を調査した乗組員は、それが風のいたずらであることを知った。艦はメルボルンに帰港した。オーストラリアの諸都市も次々と死滅していった。






c0352790_10443559.jpg





自動車レースが開かれ、自動車狂のオスボーンは大荒れに荒れるコースを乗り切って優勝した。

タワーズとモイラは山小屋で一夜を明かした。
いよいよ、メルボルンにも最後の時が近づいてきた。街では自殺用の薬が配給された。

ピーターは身を切られる思いで妻子を納得させ、薬を与えた。
オスボーンは車庫を密閉し、自動車の排気ガスで自殺した。





c0352790_10445173.jpg






一方、ソーフィッシュ号ではアメリカに帰国することが決定した。タワーズもモイラへの想いを断ち切って艦に乗った。
出航を知ったモイラは渚でいつまでも潜水艦を見送った。

艦は一路、死の海に向かって進んだ。





c0352790_10450985.jpg







さらに、制作当時の背景を見てみよう。

映画では言及されていないが、小説はアルバニアによるナポリ爆撃をきっかけとするエジプト軍のソビエト連邦製長距離爆撃機Il626型によるワシントンとロンドンへの爆撃を戦争の発端としており、執筆当時のスエズ動乱が類推される。




c0352790_10453536.jpg





映画では、中華人民共和国による台湾封鎖を引き金に第三次世界大戦が勃発し、アメリカ合衆国からのメッセージはモールス信号ではなく文字化けした電子メールとされている。

物語の大半はオーストラリア南端の都市メルボルンで展開されるが、映画は原作からさまざまな点が大幅に変更されたため、シュートには嫌われていた。本作は核兵器がもたらした放射性物質で被曝する人々を描いているが、放射線障害の描写や被曝の誤った認識も散見される。




c0352790_10455861.jpg




スコーピオン号は1957年1月31日に建造計画が発表され、1960年7月に就役した当時最新鋭の原潜だったが、1968年5月22日の事故で喪失している。











☆☆☆GGのつぶやき
第三次世界大戦勃発による核被曝後の世界をシリアスに描いた良い映画である。
往年の大スターたちの姿を懐かしく観る。
女友達モイラ役のエヴァ・ガードナーの存在感に「映画スター」の輝きを再認識する。
それにしても、「良い女」である。












































































[PR]

by my8686 | 2017-09-09 23:59 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)

「仏女優、ヌーベルバーグの象徴 ジャンヌ・モロー死去」を読み解く

フランス映画界を代表する女優ジャンヌ・モローがパリの自宅で死去した。89歳だった。AFP通信によると、代理人が31日、明らかにしたという。




c0352790_23153925.jpg



ジャンヌ・モローといえば、やはりルイ・マル監督の映画「死刑台のエレベーター」が強く記憶に残っている。
マイルス・デイビスのスリリングなクールジャズに痺れた時代でもある。




あらためて、振り返ってみよう。


1928年パリ生まれ。まだ20代半ばだったルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」(58年)に主演。愛人とともに夫を亡きものにしようとする社長夫人を演じた。




c0352790_23160694.jpg




この作品はマイルス・デイビスのジャズを使うなど斬新な手法が当時の観客を驚かせ、フランスの若手監督による映画改革運動“ヌーベルバーグ”の先陣を切ることになった。





c0352790_23162337.jpg





マル監督とは「恋人たち」「鬼火」「ビバ!マリア」でコンビを組む。62年、フランソワ・トリュフォー監督の「突然炎のごとく」では男性2人の間で揺れ動く女性の魅力を伸びやかに表現。知性と品格を兼ね備えたヌーベルバーグを代表する女優の一人に数えられた。







c0352790_23164539.jpg






スペイン出身のルイス・ブニュエル監督や米国のオーソン・ウェルズ監督など、海外の巨匠たちの作品にも出演。「雨のしのび逢い」では60年のカンヌ国際映画祭の最優秀女優賞を受けた。






c0352790_23170010.jpg






70年代には監督業にも進出。「ジャンヌ・モローの思春期」などを手がけた。






c0352790_23171539.jpg





「クロワッサンで朝食を」(12年)では、気難しい金持ちの老女を演じて日本でもヒットした。






c0352790_23174546.jpg







代表作はほかに「エヴァの匂い」「黒衣の花嫁」などがある。








c0352790_23180328.jpg








☆☆☆GGのつぶやき
フランスの若手監督による映画改革運動「ヌーベルバーグ」。
なんとも懐かしくも熱い言葉だ。
日本の若手映画監督にも多大な影響をあたえた「ヌーベルバーグ」。
ジャンヌ・モローの死にたいし謹んで哀悼の意を表したい。




























































[PR]

by my8686 | 2017-08-01 23:18 | たかが映画、されど映画 | Trackback | Comments(0)