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F.Y.I レンゾ・ピアノの“リゾーム的転回”を読み解く

都市的リゾームとして読めるイタリアの新しい建築を読み解くうちに気になったのが、レンゾ・ピアノの“リゾーム的転回”である。

巨大な象徴建築の時代を終え、都市の繊維にそっと入り込み、点と点を結び、都市の“流れ”を変える方向へと確実にシフトしている。
彼のここ10〜15年の“分散的・軽量的・ネットワーク型”のプロジェクト群を読み取いてみよう。




■ レンゾ・ピアノの“リゾーム的転回”の特徴

1. 巨大建築から“都市の縫合”へ

初期のポンピドゥー・センターのような強烈なアイコン性から、近年は都市の裂け目・境界・余白を縫い合わせる方向へ。

・ジェノヴァ旧港再生
港・街・丘陵をつなぐ複数の動線をつくり、都市の断片を接続する。 → まさにリゾーム的な“水平のネットワーク”。

・パリのセーヌ川沿いの小規模介入
巨大建築ではなく、都市の“ほつれ”を丁寧に編み直す。



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2. “軽さ”と“可変性”を重視する建築

リゾームは固定的な中心を持たない。ピアノの近年の建築も、軽量・可変・透過的な構造が多い。

地域医療センター群(RPBW:Renzo Piano Building Workshop)
小さく、水平で、地域に点在する建築。 → 都市の“根茎”として機能するノード。

・Emergency Children’s Surgical Hospital(ウガンダ)
 自然光・通風・庭園を中心に据えた“治癒の村”

・Centro de Protonterapia(イタリア)
 高度医療と地域性を両立する“開かれた医療キャンパス”

・Kimbondo Pediatric Hospital(コンゴ)
 地域の生活圏と医療を接続する“パビリオン型医療”

・その他、イタリア各地の地域医療センター計画
 小規模・分散型・地域密着型の医療モデル

いずれも、医療を都市の生態系に組み込むという共通思想を持つ。

※巨大病院ではなく、地域の生活圏に溶け込み、医療を“都市の生態系”の一部として再編するというピアノ晩年の思想が最も明確に表れた領域。



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- 文化施設の増築・改修プロジェクト

既存構造に寄り添い、横から接続し、都市の意味を変える。
 既存建築を、都市のリゾームに接続し直すための“静かな変質プロジェクト”

•壊さない
•目立たない
•中心を作らない
•都市の流れを増殖させる
•建築を生態系の器官に変える

これが、ピアノの“化(変質)施設”の本質である。

●ポンピドゥー・センター(パリ)改修
 •外部エスカレーターの更新
 •透明性の強化
 •広場との関係を再調整
 → 建物を“都市の呼吸器官”として再構築。

● モルガン・ライブラリー(ニューヨーク)増築
 •3つの歴史建築を“軽いガラスのアトリウム”で接続
 → 都市の中に“新しい回路”を挿入する典型例。

● ハーバード大学美術館(ケンブリッジ)改修
 •光の導入と動線の再編
 •歴史建築を壊さずに“内部の流れ”だけを刷新
 → ピアノの“内科的建築手術”の代表。

● ジェノヴァ水族館の増築
 •既存施設を海と都市の流れに再接続
 → 都市生態系の一部として再編。


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3.“都市生態系”としての建築

ピアノは晩年に近づくほど、建築を都市の生態的循環の一部として扱うようになっている。

- 緑化・風・光・水の流れを都市スケールで扱う
- 建築を“環境の調停者”として配置する
- 都市の複数のレイヤー(交通・歴史・地形・文化)を横断的に接続する

これはデレーズ=ガタリ的なリゾームの思想と非常に親和性が高い。



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ピアノ晩年の建築が示す「都市生態系としての建築」は、都市を単一の中心やヒエラルキーで統御するのではなく、複数の流れ(風・光・水・歴史・文化)が横断的に接続され続ける“開いた生成”として扱う姿勢にある。これはデレーズ=ガタリのリゾーム論――中心を持たず、どこからでも接続し、増殖し、逸脱し続ける構造――と深く共鳴する。

一方、現在の米国によるイランへの攻撃準備や軍事的緊張の高まりは、中心化・境界化・分断の論理が極限まで強化されている状況といえる。米国は大規模な軍備増強を進め、イランへの圧力を強めており、地域全体が新たな衝突の危機に晒されている 。また、米国政府はイランに対し「時間切れ」を警告し、対立の構図をさらに固定化している 。

ピアノ的なリゾーム都市は、対立する要素を“接続”し、都市の流れを調停することで生態系としての共存を可能にする。しかし米国の対イラン政策は、接続ではなく“切断”を強化し、複雑な地域生態系を単純な敵対構造へと還元してしまう。リゾーム的建築が示すのは、分断を深める世界に対し、中心なき接続と調停による別の倫理があり得るということである。



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4. “中心を作らない”という倫理

ピアノはしばしば「建築は都市の主役ではなく、都市の一部であるべき」と語る。
この姿勢は、リゾームの反ヒエラルキー性と響き合う。

- 主役性を拒否する
- 都市の流れに寄り添う
- 既存の文脈に“接続”することで新しい意味を生む



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レンゾ・ピアノが晩年に強調する「中心を作らない」という倫理は、都市を単一の核で支配するのではなく、複数の流れが共存し続ける開かれた場として扱う姿勢に根ざしている。建築は主役ではなく、都市の文脈に寄り添い、既存の流れに接続することで新しい意味を生む。この態度は、ドゥルーズ=ガタリのリゾーム的思考――反ヒエラルキー、反中心化、横断的接続――と深く共鳴する。

一方、米国がイランとの緊張を高め、軍事的圧力を強める状況は、中心化と境界化の論理が前面化した状態といえる。国家が単一の中心から敵を定義し、力で秩序を再構築しようとする構図は、都市を“ひとつの中心”で統御しようとする旧来のモデルに近い。

ピアノの倫理はその対極にあり、対立を強化するのではなく、異質なもの同士が接続される余白をつくり、複数の流れが共存する環境を育てる方向に向かう。分断が中心化によって固定化される世界に対し、ピアノの建築は“中心なき調停”という別の倫理の可能性を示している。



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5. 建築を「未完のプロセス」として都市に開く態度 (=非完結性・開放性・都市への委譲) 


建築を「未完のプロセス」として都市に委ねるというピアノ晩年の態度は、ドゥルーズ=ガタリのリゾーム論に最も近い地点に位置する。
そこでは建築はもはや閉じた作品ではなく、都市という生成変化の場に接続され続ける“開いた機械”となる。

リゾームが中心も階層も持たず、どこからでも伸び、どこへでも接続し、常に変化し続けるように、ピアノの建築もまた、都市の風・光・人流・歴史・地形といった異質なレイヤーを横断しながら、固定的な意味を拒否し、都市の側に変化の主導権を委ねる。

ここで建築家は作者ではなく、接続の条件を整える“触媒”へと変わる。
建築は完成を目指すのではなく、都市の生態系の中で増殖し、逸脱し、更新され続けるプロセスそのものとなる。

これは建築を「作品」から「生成」へと転回させる、ドゥルーズ的な倫理である。



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フランス現代哲学の視点から読むなら、ピアノ晩年の「未完のプロセスとしての建築」は、ドゥルーズ=ガタリのリゾーム論だけでなく、フーコー、ラトゥール、ナンシーらが提示した「開かれた存在論」と深く共鳴する。建築はもはや主体の表現ではなく、都市という複数性の場に埋め込まれた関係の編成体となる。

フーコー的に言えば、建築は権力の中心を形成するのではなく、都市の微細な力学を調整する“装置(dispositif)”へと変質する。

ラトゥールのアクターネットワーク論から見れば、建築は人間・風・光・歴史・地形といった異質なアクターを接続し続ける媒介者であり、固定的な意味を持たない。

ナンシーの「共存在」の思想に照らせば、建築は都市の中で他者と共に生成し続ける“開いた縁”として働く。

こうして建築は作品ではなく、都市の生態系の中で更新され続ける生成のプロセスとして理解される。



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memo

ミシェル・フーコー

権力や知が「中心」から発生するのではなく、社会のあらゆる場に散在し、人々の行為や思考を形づくる分散的な力のネットワークとして働くことを明らかにした思想家。
監獄・病院・学校などの制度を分析し、近代社会が人間を“規律化しながら生産する”仕組みを示した。
主体は自律的に存在するのではなく、権力=知の布置の中で生成されるという点が彼の核心である。



ブルーノ・ラトゥール

近代が前提としてきた「自然/社会」「主体/客体」「人間/非人間」といった二項対立を根本から問い直し、世界を異質な存在同士が結びつき続けるネットワークとして捉えた思想家。
彼のアクターネットワーク理論(ANT)では、人間だけでなく、建物・技術・微生物・制度・文書など、あらゆるものが等価な“アクター”として行為し、世界を構成する。
社会とは固定的な構造ではなく、アクター同士の連鎖的な接続によって絶えず生成される動的な編成体である。
科学も客観的真理の発見ではなく、ネットワークの構築過程として理解される。
ラトゥールは、世界を中心や本質ではなく関係・媒介・生成として捉える視点を提示し、政治・科学・環境問題の理解を大きく転換させた。



ジャン=リュック・ナンシー

「存在とは単独で完結するものではなく、つねに他者とのあいだで開かれ続ける」という共存在(être-avec)の哲学を中心に据えた思想家。
彼にとって世界は、固有の本質や中心を持つ閉じた体系ではなく、無数の存在が互いに触れ合い、すれ違い、影響し合うことで立ち上がる関係の網目として理解される。
存在は“内側”に本質を持つのではなく、他者との接触によって絶えず生成される“開かれた縁”であり、共同体もまた同質性や統一性ではなく、差異が共にあることによって成立する。
ナンシーは、近代的主体や共同体の中心化を批判し、世界を分有・接続・共振として捉える新しい存在論を提示した。



この3人の関係性

フーコー、ラトゥール、ナンシーの三者は異なる領域から出発しながら、「中心なき世界をどう記述するか」という一点で深く連なっている。
フーコーは権力を主体の外側にある構造ではなく、社会の微細な実践に浸透する分散的な力のネットワークとして捉えた。
権力は中心から発されるのではなく、関係の中で生成され続ける。

ラトゥールはこの視点をさらに押し広げ、人間・物質・制度・技術が等価なアクターとして結びつくアクターネットワークを提示した。
世界は固定的な構造ではなく、異質な存在が接続され続ける動的な編成体として理解される。

ナンシーは「共存在」という概念を通じ、存在そのものが他者との開かれた関係性の網目として立ち現れると論じた。存在は単独ではなく、常に他者との“あいだ”で生成する。
三者を貫くのは、中心・本質・主体といった近代的枠組みを解体し、世界を関係・接続・共存のプロセスとして捉える思想である。



レンゾ・ピアノのリゾーム的建築を、フーコー/ドゥルーズ/ラトゥール/ナンシーの思想と接続すると

都市が人類を救う条件はきわめて明確になる。

フーコーが示したように、都市は中心から支配されるのではなく、無数の実践が交差する分散的な力の場である。
ドゥルーズはその場を、固定的な秩序ではなく、異質な流れが接続し続ける生成のリゾームとして捉えた。
ラトゥールはさらに、人間・建築・インフラ・自然が等価なアクターとして関係を結ぶ都市ネットワークとして世界を再構成する。
ナンシーは都市を、差異を抱えたまま共に存在する共存在の場として読み替える。

ピアノの建築はこれらの思想を空間的に具現化し、都市を中心化ではなく接続と調停のプロセスへと転換する。
都市が人類を救う条件とは、都市そのものが“開かれた関係の生態系”として機能することである。




☆☆☆GGのつぶやき
レンゾ・ピアノの“根茎的”都市観は、中心をつくらず、複数の流れを横断的につなぎ直すという思想に貫かれている。イタリアの若い建築家たちがこの姿勢を受け継ぎ、都市を単一の核ではなく、多様な回路が増殖する生態系として再編し始めている点は象徴的だ。興味深いのは、この視点が米国の深い分断状況と対照的であることだ。米国の都市はしばしば“中心の奪い合い”や“境界の強化”によって空間的にも社会的にも断裂を深めてきた。一方、ピアノ的なリゾーム都市は、中心を設定せず、異質なもの同士が接続される余白をつくることで、対立ではなく“共存の回路”を生み出す。分断が固定化される社会に対し、ピアノの建築は、都市を開かれた生成の場として再構築する可能性を示している。




# by my8686 | 2026-02-11 11:11 | 気になる建築&空間 | Trackback

F.Y.I 都市的リゾームとして読めるイタリアの新しい建築

都市を「リゾーム」として読む、という視点はとても大切だ。

イタリアの近年の建築には、まさにデレーズ=ガタリ的なリゾーム性――中心を持たず、複数の接続点を生み、都市の流れに寄り添う構造――として理解できる動きがいくつもある。
いくつか代表的な方向性をみてみよう。


■ 1. 拡散的ネットワークとしての公共空間再編

イタリアでは、巨大なモニュメント型建築よりも、都市の隙間や既存の構造を編み直すプロジェクトが増えている。
これはリゾーム的で、単一の中心を作らず、都市の複数のレイヤーを横断的につなぐ発想である。


ex.ジェノヴァ旧港再生(レンゾ・ピアノ)
港・街・丘陵を結ぶ複数の動線をつくり、都市の「根茎的」接続を強化した計画。

Calata Molo Vecchio, 15, 16128 Genova, Italy




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レンゾ・ピアノが1992年のコロンブス新大陸到達500周年に合わせて行った大規模再生。

都市の“根茎的”接続を強化したポイント

・旧市街(Centro Storico)と港(Porto Antico)の分断を解消し、歩行者動線を再編成
・港から丘陵へと連続する視線軸・動線を複数設定
・歴史建築の再生(Magazzini del Cotone、Porta Siberia など)と新しい都市装置(Bigo、Biosfera、Acquario)を結節点として配置
・港湾エリアを「都市の広場」として再定義し、海・街・丘陵が相互にアクセスしやすい“多中心的”都市構造を形成



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ex.ミラノの公共空間ネットワーク(Piano City, BAMなど)
音楽・緑地・文化を点在させ、都市全体をゆるやかに接続する「分散型都市文化」。

Piano City の音の点在、
BAM の緑と文化の交差、
Porta Nuova の歩行者ネットワーク、
Navigli の水辺空間、
Brera の文化ゾーン…


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■ 2.既存構造への寄生・接続としての建築

リゾーム的建築は、既存の幹に従属するのではなく、横から接続し、増殖し、都市の意味を変える。
イタリアの若い建築家たちは、歴史都市の「重さ」を逆に利用して、軽やかな接続を試みている。



ex.Piuarch や Stefano Boeri の小規模都市介入
歴史的街区に小さな増築・緑化・回廊を差し込み、都市の流れを変える。


Piuarch

・ミラノ中心部(Duomo 周辺の屋上・街区)
・Porta Nuova / Isola
・Bicocca
・旧工場地帯の再生エリア


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Stefano Boeri

・Isola(Bosco Verticale 周辺)
・Porta Nuova(BAM 周辺の小規模緑化)
・ミラノ郊外の住宅地
・イタリア各地の小規模緑化プロジェクト



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ex.ボローニャのポルティコ再解釈プロジェクト
既存のアーケードを新しい文化動線として再接続。

・ROCK Project(EU 都市再生プログラム)
・Portici di Bologna(UNESCO 登録に向けた保全・再生)
・Portico Project(市・大学・文化機関による再生)

複数の取り組みの総称としてボローニャ市内の12のポルティコ群(UNESCO 登録対象) を中心に展開されいる。


■ Portico del Pavaglione(パヴァリオーネ回廊)
 住所:Piazza Maggiore 付近、Via dell’Archiginnasio
 ボローニャ中心部の象徴的ポルティコ
 再解釈・修復の事例として頻繁に取り上げられる

■ Portico di San Luca(サン・ルーカ回廊)
 住所:Via di San Luca(約3.8kmの長大ポルティコ)
 UNESCO 登録の中心
 近年大規模修復が完了

■ Portici di Via Zamboni(大学地区)
 住所:Via Zamboni
 ROCK Project の主要フィールド
 大学・文化施設と連携した“公共空間の再解釈”が行われた



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■ 3. 垂直的中心を拒否する「水平の建築」

リゾームは垂直的ヒエラルキーを拒否する。
イタリアの新しい建築も、タワー型の象徴性より、水平的・分散的な構造を重視する傾向がある。

ex.ボスコ・ヴェルティカーレ(Boeri)
一見タワーだが、都市生態系を「分散的に」都市へ接続するネットワーク装置として読める。

Bosco Verticale
 住所:Via Gaetano de Castillia 11, 20124 Milano, Italy
 地区:Isola(イゾラ)/Porta Nuova(ポルタ・ヌオーヴァ)
 最寄り駅:Gioia(M2 緑線)、Garibaldi FS(M2/M5)

2棟のタワーで構成されており、Torre E(110m)と Torre D(76m)が並んで立っている。
Bosco Verticale は単体の建築というより、Porta Nuova の歩行者ネットワーク・BAM(Biblioteca degli Alberi)・Isola の街区再生と連動した“都市生態系ノード”として機能している。



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ex.レンゾ・ピアノの地域医療センター群
小規模で水平的な建築を点在させ、地域を網状に結ぶ。


1.ミラノ:Emergency 本部(Via Santa Croce)を核とした医療・福祉のノード

・小さな医療・福祉拠点が市内に散らばり、大病院ではなく市民に近い“まちの医療”を形成
・ピアノはこのネットワークの中心的な拠点を設計→ 都市の繊維に入り込む医療ノード
・Via Santa Croce 19, 20122 Milano, Italy



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2. ジェノヴァ:Gaslini 小児病院の分棟型キャンパス

・巨大な病院棟ではなく、複数の低層棟が緑地の中に点在
・それぞれが回廊・庭・歩行者動線でつながる
・ピアノの故郷ジェノヴァで長期的に続く再編→ 水平的で、環境と連続する医療キャンパス
・Via Gerolamo Gaslini 5, 16147 Genova, Italy



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■ なぜピアノは“点在する水平建築”へ向かったのか

理由はとてもシンプルで深い。

● ① 中心を作らず、地域全体を支えるため
巨大病院は象徴的だが、地域の生活動線から切り離される。
小規模拠点は **生活圏の中に入り込み、都市の流れと接続する。

● ② 光・風・緑を取り込みやすい
水平建築は環境と連続し、自然と医療・福祉を統合するピアノの哲学に合う。


● ③ 都市の“網状構造”を強化できる
点在する拠点が、歩行者動線、公園、住宅地、公共交通と結びつき、都市のリゾーム(根茎)を形成する。



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■ 4. 都市を「生態系」として扱うアプローチ

リゾーム的都市観は、生態系的都市観と親和性が高い。
イタリアでは、建築を「都市の生態的ノード」として扱うプロジェクトが増えている。

ex.ミラノの都市緑化ネットワーク

緑の回廊(Green Corridors)が都市を横断し、建築がそのノードとして機能する。

・BAM(Biblioteca degli Alberi Milano) × Bosco Verticale(Boeri)
・Navigli(運河)沿いの Green Corridor × Darsena 再生



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ex.パレルモの社会的エコロジー再生
移民・市場・公共空間を結ぶ「社会的リゾーム」。

・Ballarò(バッラロ市場)
・Piazza Casa Professa(カーザ・プロフェッサ広場)
・Piazza Mediterraneo(ピアッツァ・メディテラネオ)



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☆☆☆GGのつぶやき
イタリアの新しい建築は、ドゥルーズ=ガタリが語るリゾームの論理を都市空間の実践として体現している。そこでは建築は中心や象徴性を志向せず、むしろ歴史・地形・移民文化・生態系といった異質なレイヤー同士を横断的に接続する“媒質”として働く。BAM や Bosco Verticale、Ballarò の公共空間再生、Piuarch の街区介入などは、単体の建築ではなく、都市の繊維に入り込み、点在するノードを増殖させることで、都市そのものを開かれたネットワークへと変換する。

これはリゾームの特徴である非中心性・多様性・接続性・増殖性が都市スケールで展開している状態であり、建築はもはや形態ではなく、都市の流れを変え、関係を生み、社会的・生態的エコロジーを更新する“生成の装置”として機能する。こうしてイタリアの都市は、固定的な構造物ではなく、絶えず接続し変化し続ける生きた根茎として立ち上がっている。

その中でも、レンゾ・ピアノの最近の動きが気にかかった。明日は彼の最近の動きを読み解いてみよう。



# by my8686 | 2026-02-10 10:10 | 気になる建築&空間 | Trackback

F.Y.I 都市的リゾーム「The Lowline」を読み解く

「The Lowline」
ニューヨーク・マンハッタンのロウアーイーストサイドにある旧ウィリアムズバーグ橋トロリーターミナルを再利用し、世界初の本格的な地下公園をつくろうとした都市再生プロジェクト。

・Delancey Street(デランシー・ストリート)東側の地下
・Essex Street Station(地下鉄 J/M/Z 線)に隣接
・旧 Williamsburg Bridge Trolley Terminal(ウィリアムズバーグ橋トロリーターミナル)跡


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2011年にDan BaraschとJames Ramseyが構想を立ち上げ、2012年にはクラウドファンディングで注目を集め、2016年には市から条件付き許可を得るなど、実現に向けて大きく動いた。しかし、資金難などにより2020年に建設は停止している。

ただし、Lowlineの価値は「実現したかどうか」ではなく、その概念が都市デザインにもたらした示唆にこそあるとも言える。


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Lowline のデザインと技術的コンセプトを主導したのは James Ramsey 。

彼はニューヨークの建築・デザイン事務所 RAAD Studio の創設者であり、Lowline の核となる「太陽光を地下に導く技術(remote skylight)」の発案者でもある。


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あらためて、その内容を読み解いてみよう。



1. プロジェクトの核心:地下に「自然光」を届ける技術

Lowlineの革新性は、単なる地下空間の緑化ではなく、太陽光を地下に導く高度な集光・反射システムにある。

- 地上の集光装置で太陽光を集める
- 特殊な光ファイバーや反射パネルで地下へ導く
- 地下空間で植物が光合成できるレベルの自然光を再現する

この技術により、地下でも本物の植物が育つ「自然環境」を成立させようとした点が画期的である。



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2. 都市の「未利用インフラ」を再生するという思想

Lowlineは、ニューヨークで成功した高架公園「High Line」の“地下版”として語られることが多いが、単なる模倣ではない。

High Lineは、使われなくなった高架鉄道を再生し、都市に新しい公共空間を生み出した。それに対し、Lowline は、地下の放置インフラを再生し、都市の三次元的な空間資源の再評価を促した。よりラディカルな都市再生の提案でもある。



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3. 都市における「光と自然」の再定義

ニューヨークのような高密度都市では、公園面積の不足、冬季の厳しい気候、建設需要の増大などにより、自然に触れる機会が限られている。
Lowlineは、自然光と植物を地下に持ち込むという逆転の発想で、都市生活者に新しい「自然との接点」を提供しようとした。

これは、都市の自然環境を「水平面」だけで考えるのではなく、垂直方向に拡張するという思想の象徴でもある。



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4. 社会的・文化的意義

Lowlineの概念は、次のような広い意義を持つ。


● ① 都市の「見えない資源」を可視化

地下空間はしばしば忘れられたインフラだが、Lowlineはそこに新しい公共性を見出した。


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● ② テクノロジーと自然の融合

自然光を人工的に制御し、地下に生態系をつくるという試みは、“自然とは何か”“公共空間とは何か”という問いを投げかけた。



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● ③ コミュニティ主導の都市デザイン

Kickstarterでの資金調達やLowline Labでの公開実験など、市民参加型の都市プロジェクトとしても重要である。



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5. 計画停止の意味:概念は生き続ける

2020年に資金難で建設は停止したが、Lowlineの思想は世界の都市計画に影響を与え続けている。

- 地下空間の再利用
- 自然光技術の応用
- 公共空間の三次元的拡張
- コミュニティ主導の都市再生

これらは、今後の都市デザインにおいて避けて通れないテーマである。

Lowlineは、実現しなかったからこそ、都市の未来を考えるための“概念装置”としての価値が際立つと言える。



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memo

raad HP より


Lowline は、ニューヨークに隠された秘密のひとつ──マンハッタンのロウアー・イースト・サイドにある放棄されたトロリーターミナル──の発見から始まったのである。RAAD Studio の創設者ジェームズ・ラムジーは、この都市の遺構こそ、自身が発明した「太陽光を思いがけない場所へ届ける技術」を展開するのに最適な場所であると見抜いた。



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都市考古学と未来的な太陽光技術を結びつけることで Lowline は創出され、公共空間の新たなパラダイムを世界に提示すると同時に、気候危機の時代における都市化への革新的な解決策を示したのである。

Lowline は急速に草の根のムーブメントへと成長し、ニューヨーカーたちが自らの街の新しい未来を想像し、構築する力を得る契機となった。
また、世界中の都市における緑地の可能性を大きく広げる存在でもあった。



ニューヨーク・タイムズ紙は Lowline を「世界初の地下公園」と呼び、都市環境における「より多くの公園用地を切り開くための最新のフロンティア」であると評した。

※ ニューヨーク・タイムズ(NYT)は1851年創刊の米国を代表する高品質報道紙で、正確性・独立性・公平性を使命とする“新聞の記録”として知られる。国内外に記者を配置し、調査報道や国際報道で多くの功績を残してきた。オックス=サルツバーガー家が1896年以降経営を担い、現在はデジタル購読者を中心に世界的影響力を持つ。


ニューヨーカー誌は、Lowline のテスト施設を訪れる体験を「アリスが地底深くへ長い落下をした後に見回したときのようだ」と形容した。

※ニューヨーカー誌は1925年にハロルド・ロスらが創刊した米国の代表的文芸・ジャーナリズム誌で、洗練されたユーモア、精密なファクトチェック、文学性の高い短編やエッセイ、社会・政治批評を特徴とする。ニューヨークの文化を起点にしつつ全国的・国際的視野を持ち、独自の漫画や批評で高い評価を受けてきた。


ニューヨーク・マガジンは Lowline を「この街で最も寛大な新しい緑地」であると称賛した。

※ニューヨーク・マガジンは1968年にクレイ・フェルカーとミルトン・グレイザーが創刊した隔週誌で、生活・文化・政治・スタイルを大胆かつ都会的な視点で扱う。ニュー・ジャーナリズムの拠点として知られ、当初はニューヨーク市に特化していたが、次第に全米的な文化・政治報道へと拡大。多くの著名記者が寄稿し、全米雑誌賞を多数受賞する影響力ある雑誌へ成長した。


☆三誌を並べると、NYT=信頼性重視の広範な知識層、New Yorker=文化・思想志向の知的エリート、NY Mag=都市的でトレンド感度の高い層という構図が見えてくる。




☆☆☆GGのつぶやき
原弘司の視点から見れば、Lowline は都市の忘却された地下空間を「光」によって反転させた点で高く評価されるだろう。地下という負の層に公共性を成立させる操作は、原が重視した都市の多層性の読み替えに通じる。また、歴史的遺構と先端技術を結びつけ、過去を未来へと接続する姿勢も、原の建築観と響き合う。一方で、地下公園という象徴が独り歩きし、建築が記号化される危険には慎重な姿勢を示したはずである。それでもなお、Lowline が示した公共空間の垂直的拡張という視点は、都市の未来に対する重要な示唆として肯定的に受け止められたに違いない。

さらに、Lowline をドゥルーズ的に読むなら、それは都市の地下という固定化された層を「光」によってほぐし、新たな接続を生み出す生成の出来事として理解できる。忘却されたインフラに光を導く操作は、都市のストラタを脱領土化し、地下をリゾーム的な関係の場へと変える試みである。また、歴史的遺構・光学技術・コミュニティが結びつく構造は、異質な要素が寄り集まり新しい機能を生むアセンブラージュとして捉えられる。一方で、「地下公園」という記号が生成を固定化し、運動を停止させる危険も孕む。それでもなお、Lowline が開いた垂直方向への逃走線は、都市を別の次元へと差異化する契機として重要である、となるだろう。



# by my8686 | 2026-02-09 09:09 | 気になる建築&空間 | Trackback

F.Y.I 都市的リゾーム「The Brooklyn Navy Yard Redevelopment(ongoing)」を読み解く

ブルックリン・ネイビー・ヤード再開発(進行中)の全体像

ブルックリン・ネイビー・ヤード(Brooklyn Navy Yard, BNY)は、かつて米海軍の造船所として機能していた300エーカー規模の産業地区で、現在はニューヨーク市が主導する大規模かつ長期的な再開発プロジェクトの中心地になっている。

再開発は段階的に進行しており、製造業の復活、雇用創出、スタートアップ支援、都市レジリエンス強化など、多層的な目的を持っている。



主要な住所
・63 Flushing Ave, Brooklyn, NY 11205
・141 Flushing Avenue, Brooklyn, NY 11205(Building 77 などの拠点住所)



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1. マスタープランの核心

BNY のマスタープランは、総額25億ドル規模の投資を前提とした長期構想で、以下のような目標を掲げている。



● 垂直型製造スペースの拡充
- 510万平方フィート(約47万㎡)の新規製造スペースを建設
- 都市型製造業のモデル地区としての地位を強化
- 中間層向けの安定した雇用を創出する都市モデルを目指す



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● 雇用創出
- 現在の約13,000人から、最終的に30,000人規模の雇用を見込む


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● オープンスペースと周辺地域との接続性向上
- 300エーカーの敷地を周辺コミュニティ(Clinton Hill、DUMBO、Williamsburg など)とつなぐ歩行者動線の改善
- 公共空間の整備による「閉ざされた軍事施設」から「開かれた産業都市」への転換


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2. 進行中の主要プロジェクト

◆ Building 303(ディープテック拠点化)

BNY の中でも特に注目されているのが Building 303 の最終フロア(9階)再開発である。


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Brooklyn Navy Yard – Building 303
299 Sands Street(Sands Street Gate 経由)
Brooklyn, NY 11205, USA


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- NYCEDC と BNYDC が共同で設計事務所を公募


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- ライフサイエンス、グリーンエコノミー、医療技術、先端製造などのディープテック企業向けスイートを整備


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- スタートアップから成長企業までを収容する「深技術のハブ」化を目指す



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このフロアは Building 303 の中で唯一未整備だった産業スペースであり、完成すれば同ビルの機能がフルに稼働することになる。



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3. 周辺地域の再開発との連動

BNY の再開発は敷地内だけでなく、周辺エリアの都市再編とも密接に結びついている。


● Clinton Hill の大規模再開発(RXR 主導)

- BNY 向かいの 2.6 エーカーの商業地を住宅・商業・小売の複合開発へ転換
- 現在は市の土地利用審査(ULURP)プロセスに入っている

これにより、BNY と周辺コミュニティの関係がより密接になり、産業地区と居住地区の新しい都市的共存が期待されている。

※RXR Realty :ニューヨーク州を中心に活動する、都市再開発・オフィス・住宅・インフラ投資に強い大手デベロッパー。



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4. EB-5 投資プログラムとの関係

BNY 再開発は、海外投資家による EB-5 プログラム(投資による永住権取得制度)も活用している。

- 「Brooklyn Navy Yard Redevelopment Project III」で I-829(条件解除)承認が進行
- 1,991件の I-829 承認により、5,665人が永住権を取得

これは、BNY 再開発が国際投資の受け皿としても機能していることを示している。

※I-829 承認とは、EB-5 投資家が条件付き永住権(2年間)から条件のない永住権へ移行する最終ステップが認められた状態を指す。EB-5 プログラムにおける「ゴール地点」と言ってよい重要な承認。



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5. 都市政策としての意義

● ① 都市型製造業の再生モデル

ニューヨークのような大都市で製造業を維持・発展させるための「垂直型製造スペース」は、全米でも先駆的な試みである。

※ブルックリン・ネイビーヤードでは、Building 77 や Building 303 が代表例として知られている。
・16階建ての製造ビル
・大型貨物エレベーター
・高床荷重
・都市型製造・食品加工・クリエイティブ企業が入居
 都市の中で製造業を成立させるための“新しい工場のかたち”として注目されている。



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● ② 気候変動へのレジリエンス強化

海沿いの立地を踏まえ、洪水対策やインフラ強化を含むレジリエンス戦略が進行中。



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● ③ 多様な産業の集積

- 映像制作(Steiner Studios)
- ロボティクス
- 食品製造
- クリーンテック
- ライフサイエンス

など、産業の多様性が高く、イノベーションのエコシステムが形成されつつある。



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6. 今後の展望

BNY の再開発は「完成」というより、継続的に進化する都市産業エコシステムとして位置づけられている。

- 新たな製造ビルの建設
- 研究開発拠点の誘致
- 周辺地域との一体的な都市再編
- 交通アクセス改善(フェリー、バス、自転車道)

これらが今後10〜20年のスパンで進むと見られる。



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memo

原広司がブルックリン・ネイビー・ヤード再開発をどう評価したか――もちろん実際に語った記録はない。
ただ、彼の理論(「集落の教え」「離散的都市」「空間の多義性」「関係の建築」など)を踏まえると、こう評価しただろうという像はかなり明確に立ち上がる。

「記憶」「公共性」「都市の倫理」とも深く響き合う視点で読み解いてみよう。




原広司ならこう語ったであろう評価

1. 離散的都市」としての評価:
 “巨大な連続体をつくらず、断片の集合として都市を再構成している”

BNY の再開発は、ひとつの巨大な建築物ではなく、
- 既存の造船所建築
- 新しい製造ビル
- スタジオ、研究施設、倉庫
- コミュニティ施設

といった異質な断片の集合で構成されている。

原広司はこれを肯定的に捉えたはずである。

都市は均質な連続体ではなく、異質な断片が共存することで豊かさを獲得する。
BNY はまさにその「離散的都市」の実践例に近い。



2. 「集落の教え」からの評価:
 “人間の営みの痕跡を消さずに、新しい活動を重ねている”

原は世界中の集落を調査し、“人間の営みの層が重なり続けることが空間の本質”と考えた。

BNY は軍事造船所という歴史を消去せず、
- クレーン
- ドック
- レンガ倉庫
- 軍事インフラの痕跡

を残したまま、新しい産業を重ねている。

これは原が重視した「集落の重層性」に極めて近く、かつての機能の痕跡が、新しい機能の背景として生き続けている。
彼はこの点を高く評価したであろう。




3. 「関係の建築」からの批評
 “建築そのものより、関係のネットワークをどう生成しているかが重要だ”

BNY の再開発は、建物単体の造形よりも
- 産業のネットワーク
- コミュニティとの接続
- 都市動線の再編
- 企業・研究者・職人の関係性

といった関係の生成に重心がある。

原広司は建築を「関係の装置」と見なしていたので、BNY のような“関係を編む都市プロジェクト”には強い関心を示したはずである。

ただし、こうも言っただろう。

「関係が経済合理性だけに偏ると、都市は再び均質化する。」

つまり、BNY の「産業振興」一辺倒の部分には批判も向けたはずである。




4. 「多義性」への評価:
 “用途が固定されず、未来の変化を受け入れる余白がある”

BNY の建物は多くが、高い天井・大スパン・可変的な床・将来の用途変更を前提とした構造を持っている。

原広司は「空間の多義性」を重視した建築家なので、この“未来に開かれた構造”を評価したであろう。
都市は固定化されるべきではなく、変化を受け入れる余白を持つべきだ。

BNY の柔軟性は、彼の思想と一致する。





5. 批判的視点:
 “公共性がどこまで確保されているのか”

原広司は、都市開発が「公共性」を失うことを強く警戒していた。

BNY は基本的に産業地区であり、一般市民が自由に入れるエリアは限定的である。

ここに対して原はこう批評した可能性が高い。

・都市の記憶を継承する場所が、特定の産業のためだけに閉じてしまうのは危うい
・記憶は共有されることで公共性を獲得する

つまり、歴史の痛みや労働の記憶を、どれだけ市民に開いているかという点で、BNY に改善の余地を見たであろう。




◆ 総合すると

原広司なら、BNY をこう総括したはずである。

● 高く評価する点
- 異質な断片の集合としての都市構造
- 歴史の痕跡を残す重層性
- 関係性を生む産業エコシステム
- 用途の多義性と未来への開放性

● 批判する点
- 公共性の不足
- 経済合理性が前面に出すぎる危険
- 記憶の共有が限定的であること





☆☆☆GGのつぶやき
ブルックリン・ネイビー・ヤードの再開発を原広司の視点で捉えるなら、まず評価されるのはその「断片性」と「重層性」だろう。かつての造船所の痕跡を消し去らず、異質な建物や機能が寄り合うように配置されている点は、原が説いた「離散的都市」の実践に近い。

都市は均質な連続体ではなく、異なる時間と営みが重なり合うことで豊かさを獲得するという彼の思想に、この場所はよく響く。また、用途を固定しない大スパン空間や可変性の高い構造は、未来の変化を受け入れる「多義性」を備えており、原が重視した開放性を体現している。

一方で、産業振興を中心に据えた再開発であるがゆえに、公共性が限定され、市民が歴史の記憶に触れる機会が十分に確保されていない点には批判が向けられただろう。記憶は共有されてこそ都市の倫理となる。原なら、関係性を編む装置としての潜在力を認めつつ、より広い公共への開放を求めたはずだ。




# by my8686 | 2026-02-08 08:08 | 気になる建築&空間 | Trackback

F.Y.I 都市的リゾーム「The Gilder Center for Science, Education, and Innovation」を読み解く

ギルダー・センター(The Richard Gilder Center for Science, Education, and Innovation)について読み解いてみよう。
アメリカ自然史博物館(AMNH)の新しい中核施設として2023年に完成した。
科学教育・研究・展示を一体化した革新的な拠点。
建築はStudio Gangが手がけ、自然の地形を思わせる有機的な空間構成が特徴になっている。


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1. 建築コンセプトとデザイン

面積:約230,000平方フィート(約2.1万㎡)
階数:地上6階(うち4階が一般公開)、地下1階
LEED Gold 認証のサステナブル建築
設計:Studio Gang


内部は“洞窟のような空間”をイメージした連続的な吹き抜け構造で、来館者が自然の中を探検するように科学へ没入できる設計。
建物全体が博物館の各展示エリアをつなぐ新しいハブ(中心動線)として機能する。


Studio Gang(ジャンヌ・ギャング率いる建築事務所)が手がけたギルダー・センターは、「科学への探究心を空間そのものが喚起する建築」として世界的に高く評価されている。



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□ 全体コンセプト:“洞窟のような空間”と“流動性”

Studio Gangは、自然界の侵食地形や洞窟の内部を思わせる連続的で有機的な空間を建物全体に採用している。
- 巨大な吹き抜けアトリウムは“キャニオン(峡谷)”のように彫り込まれた形状
- 壁・天井・階段が滑らかに連続し、来館者が自然の中を探検するような体験を生む
- 科学の「発見のプロセス」を空間で体現する設計思想



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□ 建物の役割:博物館の“ハブ”としての接続性

ギルダー・センターは、AMNHの歴史的建物群(26棟、または10棟と表現されることもある)を視覚的・動線的に結びつける新しい中心として設計されている。
- 33の新しい接続ルートをつくり、博物館全体の回遊性を改善
- 西側(コロンバス通り側)に新しいエントランスを設置
- 既存のロマネスク建築との高さ・スケールを揃え、街並みとの調和を図る



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□ 外装デザイン:石とガラスによる“地層”の表現
外装は、ミルフォードピンク花崗岩と鳥衝突防止ガラス(フリットガラス)で構成されている。
- 花崗岩の斜めのストライプ模様は、地層の堆積や侵食を想起させる
- ガラスはセントラルパーク側の既存建物と調和する色調
- 巨大な“メガパネル”石材システムを採用し、隣接する歴史建築の幾何学性を参照



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□ 内部空間:構造と形態が一体化した“彫刻的建築”
内部の洞窟のような形状は単なる意匠ではなく、構造体そのものが空間を形づくる点が特徴。

- 吹き抜けを貫く柱・梁が“流れるような曲面”として露出
- 4階へと続くブリッジや階段が、空間の立体的な回遊性を強化
- コンクリートの吹付け仕上げにより、自然の岩肌のような質感を表現
- 光が上部から降り注ぎ、時間帯によって陰影が変化する“自然光の劇場”



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□ 機能とデザインの融合:科学教育のための“体験型建築”
建築は展示と研究の境界を曖昧にし、科学のプロセスを可視化するために設計されている。
- 1〜4階を貫く「Collections Core」は、400万点の標本を“見える化”
- 動線が自然に展示へ誘導するように設計
- 子どもから研究者まで、異なるレベルの学びが同じ空間で共存



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□ サステナビリティ:LEED Gold 認証の環境配慮型建築
- 高性能ガラスと自然光の活用による省エネ
- 既存建物との接続により、キャンパス全体のエネルギー効率を改善
- 長寿命の石材と再生可能素材の活用



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2. 主な展示・施設

● Louis V. Gerstner, Jr. Collections Core

- 1階から4階まで貫く巨大な標本展示エリア。
- 約400万点(AMNHコレクションの約12%)が可視化され、研究の裏側を一般に公開する画期的な試み。



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● Susan and Peter J. Solomon Family Insectarium(昆虫館)

- AMNH初の本格的な昆虫専門ギャラリー。
- 昆虫の生態、進化、環境との関係をインタラクティブに学べる。



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● Davis Family Butterfly Vivarium(蝶のビバリウム)

- 生きた蝶が舞う温室型展示。
- 入場には追加チケットが必要。


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● Invisible Worlds(没入型インスタレーション)

- データビジュアライゼーションと映像技術を融合した体験型展示。
- 微生物から宇宙規模の現象まで、目に見えない世界を体感できる。



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● Gottesman Research Library and Learning Center

- 既存図書館を大幅に拡張した研究・学習拠点。
- 貴重書展示、デジタル資料、学習ゾーンを備える。



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3. 目的と理念

ギルダー・センターは、現代社会における科学リテラシーの向上と科学教育へのアクセス拡大を使命として設計されている。
Studio Gangは、この施設を「すべての人が科学の発見に参加できるようにする“体験型建築”」と位置づけている。



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4. 体験の特徴

- 建築そのものが展示の一部として機能し、空間を歩くことが学びにつながる。
- 研究と展示の境界をなくすことで、科学のプロセスを“見える化”。
- 子どもから研究者まで、幅広い層が科学に触れられるように設計。
- AMNH全体の動線を再構築し、博物館体験をより直感的にする。



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5. まとめ

ギルダー・センターは、「科学を学ぶ場所」から「科学を体験し、発見し、共有する場所」へという博物館の進化を象徴する施設。
建築、展示、教育、研究が一体化したこのセンターは、現代の科学館の新しいモデルと言える存在になっている。



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memo


原弘司がもし生きていて、Studio Gangの **Gilder Center(American Museum of Natural History, 2023)を見たとしたら、彼がどのように読み解いたかを、彼の思想・作品・批評姿勢から推測してみよう。
もちろんこれは「推測」であって、原本人の言葉ではない。
ただ、彼の建築観の特徴を踏まえると、かなり説得力のある読みが立ち上がってくる。


原弘司がGilder Centerをどう評価した可能性があるか


1.「自然の力学を空間化する試み」として高く評価した可能性

原は、自然の力学・地形・風景の生成原理を建築に翻訳することに強い関心を持っていた。
Gilder Centerの内部空間は、まさに「浸食地形」「洞窟」「風による削り」を思わせる連続的な空洞の構成である。

原の言葉で言えば、
「自然の生成力を建築の内部にまで浸透させた空間」として、強い共感を示した可能性がある。

特に、構造体と空間が分離せず、ひとつの「地形」として立ち上がる点は、彼の地形的建築観と響き合う。



2. 「構造と空間の一体化」への関心

原は、構造を単なる技術ではなく、空間の本質的な生成原理として扱った。
Gilder Centerの吹き抜け空間は、構造体がそのまま空間の形態をつくり、装飾や仕上げがほとんど排除されている。

これは原が好んだ「構造=空間」という思想に近い。

彼はおそらくこう言ったであろう。
「これは構造体が空間を彫り出している。建築が“つくられる”のではなく“生まれる”瞬間だ」


3. 「公共性の身体性」への評価

原は、公共建築において「身体的な経験」を非常に重視していた。
Gilder Centerは、科学教育施設でありながら、来訪者が身体で空間を感じ、歩きながら学び、迷い、発見するように設計されている。

これは原の公共建築観と一致する。

彼はおそらく、「知識を身体化する空間」として評価したはずである。


4.「過剰な象徴性」には慎重な批評をした可能性もある

原は、象徴性や過度な造形的演出には距離を置く傾向があった。
Gilder Centerの有機的な造形は、強い視覚的インパクトを持つ。

そのため、彼は次のような批評もしたかもしれない。

- 造形が「自然の模倣」に近づきすぎていないか
- 形態が自己目的化していないか
- 都市との関係性が十分に開かれているか

つまり、空間の生成原理が本質的であるかどうかを厳しく見たはずである。


5. 総合的には「現代の地形的建築」として高く評価した可能性が高い

原弘司の建築観を総合すると、Gilder Centerは彼の関心と非常に相性が良い。

- 自然の生成原理
- 構造と空間の一体化
- 身体的経験
- 公共性
- 都市と自然の接続

これらはすべて原が生涯追求したテーマである。






☆☆☆GGのつぶやき
原弘司がGilder Centerを見たとしたら、その評価は複雑でありながら、全体として深い共感を帯びたものになったはずである。彼が生涯追求したのは、自然の生成原理を建築に翻訳し、構造と空間を不可分のものとして立ち上げる姿勢だった。Gilder Centerの内部に広がる浸食地形のような連続空間は、自然の力学がそのまま建築化したかのような強度をもち、原が重視した「建築が生まれる」という感覚に響き合うものである。また、来訪者が歩きながら学び、身体で知識を獲得していく空間構成は、彼が公共建築に求めた身体性と公共性の理念に合致している。一方で、強い造形性が自然の模倣に傾きすぎていないか、都市との関係が十分に開かれているかといった点には、慎重な批評を向けた可能性もある。それでもなお、Gilder Centerは自然・構造・身体・公共性を統合し、建築を地形として再定義する試みとして、原弘司の思想と深く共鳴する「現代の地形的建築の到達点」であったと考えられる。



# by my8686 | 2026-02-07 07:07 | 気になる建築&空間 | Trackback