昨日に引き続き、クリストファー・ノーラン映画を読み解いてみよう。
早朝起きだして、再びレンタルしたDVD映画「インターステラー」を観直す。
初めて観てからすでに6年の時間が経つ。
細部の記憶が蘇り、ある部分は欠落していることに気づく。
後半、ブラックホールを通過して「4次元超立方体テサラクトの空間」を想定した書棚の裏に辿り着いた主人公が、娘と交信するシーンはつい苦笑してしまう。
地球外惑星の存在を否定するものではないが、今の科学レベルでは往復できる可能性はない。
時空の重力を自由に操れなければ、「事象の地平線」を駆け抜けることはできまい。
あらためた、映画「インターステラー」のストーリーを「Wikipedia」から振り返ってみよう。
近未来。地球規模の植物の枯死、異常気象により、人類は滅亡の危機に晒されていた。
元宇宙飛行士クーパーは、義父と15歳の息子トム、10歳の娘マーフィー(マーフ)とともにトウモロコシ農場を営んでいる。
この田舎の風景の光線が良い。埃りと泥まみれのトラックがいい味を出している。
マーフは自分の部屋の本棚から本が勝手に落ちる現象を幽霊のせいだと信じていたが、ある日クーパーはそれが何者かによる重力波を使った二進数のメッセージではないかと気が付く。
クーパーとマーフはメッセージを解読し、それが指し示している秘密施設にたどり着くが、最高機密に触れたとして身柄を拘束される。
そこでクーパーはかつての仕事仲間のブランド教授と再会し、大昔に無くなったはずのNASAが秘密裏に復活し活動を続けていることを知らされる。
NASAは土星近傍のワームホールを通り抜けて、別の銀河に人類の新天地を求めるプロジェクト――ラザロ計画を遂行していたのだった。
48年前に”彼ら”と呼ばれる存在によって創造されたと考えられているワームホールを通過し、すでに三名の先駆者達が、入植が期待できる惑星から信号を送り返している。
教授は、第二の地球となり得る惑星を探すミッションにパイロットとして参加するようクーパーを説得する。
帰還できたとしてもそれがいつなのか不明なミッションに、マーフは激しく反対する。
クーパーはマーフとの和解の機会を得られないまま、出発の日を迎えてしまう。
クーパーはマーフに「必ず戻ってくる」とだけ言い残し、ブランド教授の娘のアメリア・ブランド博士らとともに宇宙船エンデュランスに搭乗し地球を後にする。
ブランド教授はイギリスの詩人ディラン・トマスの Do Not Go Gentle Into That Good Night(穏やかな夜に身を任せるな)を何度も引用する。
二年後、クーパー、アメリア、ロミリー、ドイルの四名と人工知能ロボットTARSとCASEの二体を乗せて、エンデュランスは土星近傍のワームホールに接近する。
エンデュランスはワームホールを通り抜け、ラザロ計画の先駆者の一人で、ミラー飛行士が待つ水の惑星を目指す。
水の惑星はエンデュランスから最も近い場所に存在するが、同時に超大質量ブラックホールガルガンチュアの最も内側を公転している。
物理学者のロミリーは、ガルガンチュアの超重力が時間の流れを遅くしており、水の惑星での一時間は地球の七年間に相当すると警告する。
クーパーは地球に残してきた家族を想い、水の惑星への接近を躊躇するが、他のクルーに公私の混同をたしなめられ、着陸は決行されることとなる。
地質学者のドイル、アメリア、クーパー、CASEは小型シャトルレインジャーで水の惑星に降り立つ。
アメリアは、惑星の表面を捜索するが、ミラー飛行士は見つからず、彼女の着陸船の残骸だけが見つかる。
間もなく山脈と見まごうほどの巨大な波が一行を襲う。
ガルガンチュアの強大な潮汐力により水の惑星の海水が引っ張られていたのだ。
アメリアはCASEの助けにより間一髪でレインジャーに帰還するも、ドイルは波に巻き込まれて死亡し、レインジャーのエンジン内部に水が侵入し、排水が完了するまで離陸出来なくなる。
なぜ何年もの間残骸から信号が発せられていたのかと問うクーパーに対し、アメリアはミラー飛行士が到着したのはこの惑星の時間としては数時間前、死んだのは数分前に違いないと話す。
数十分後、再び波が襲ってくるも排水が完了し危機一髪でクーパーらはエンデュランスに帰還するが、そこでは23年あまりが経過していた。
エンデュランスでクーパーらの帰りを待っていたロミリーはすでに壮年に差しかかっていた。
クーパーは受信はできるもののこちらからの送信は出来ない地球からの23年分のビデオレターによりトムとマーフの成長、そしてあまりに時間が過ぎてしまったため自分の生存が諦められている事を知る。
地球出発時点のクーパーと同い年に成長したマーフは、ブランド教授とともに重力の研究を行っていた。
重力の方程式に解を見つけられれば、巨大なスペースコロニーを宇宙に打ち上げ、地球に残された人間を宇宙に脱出させられると期待されている。
しかしブランド教授は老齢で死亡する間際にマーフに自身の罪を告白する。
実はブランド教授は何十年も前に重力方程式を解いており、重力制御は事実上不可能だとの結論を導いていたが、長年にわたって事実を隠蔽し続けてきたのだった。
真相を知ったマーフは愕然とするが、それでも研究は継続し、重力の本質を理解するためにはブラックホールの中心の特異点を観測して、データを持ち帰る必要があることに気付く。
もっとも、事象の地平面の外側から特異点を観測するのは絶対に不可能とされていて、それこそがブランド教授が重力制御を諦めた理由だった。
マーフはアメリアにブランド教授が安らかに死を迎えた事を報告するためのビデオレターを送信するが、ブランド教授がついていた嘘をクーパーが知った上で自分を見捨てていたのかと泣き出してしまう。
燃料が少なくなっているエンデュランスでは、乗組員が残る二つの候補惑星のどちらを探査するかの選択を迫られていた。
クーパーとロミリーは生存信号を発信し続けているラザロ計画の先駆者マン博士の惑星を推したが、アメリアは既に信号が途絶えているもう一方のエドマンズ飛行士の惑星がより良い条件であるとして強く推した。
クーパーはアメリアとエドマンズが恋人関係であることを見抜き、彼女こそ決断に私情を挟んでいると批判する。
結果、エンデュランスはマン博士の待つ、氷の惑星へ針路を取る事になる。
クーパー、アメリア、ロミリー、TARS、CASEはレインジャーで氷の惑星に降り立ち、マン博士の設営したキャンプに到着する。
冷凍睡眠から目覚めたマン博士は、マーフからのビデオレターを見て動揺するクーパーとアメリアに対し、ラザロ計画の本当の目的はプランB――すなわち人類の凍結受精卵を新天地の惑星で孵化させ、種を保存することだったと告白する。
エンデュランスにはそのための受精卵も搭載されている。ブランド教授が研究の結論を隠蔽したのは、地球の人間に真実を告げることが、ラザロ計画と、プランBの遂行の障害になりかねないと懸念してのことだった。
マン博士はクーパーを惑星表面探査に連れ出し、地球に帰還することを諦めていないクーパーを不意討ちし、彼の宇宙服のバイザーを破壊する。
マン博士は、氷の惑星に着陸してすぐこの惑星では人類は生存できないことを悟っていた。
彼は孤独に死にゆく運命だったが、それを受け入れることが出来ず、氷の惑星が人類の新天地であるかのような捏造データを地球に発信していたのだ。
クーパーは窒息死寸前でアメリアとCASEに救出されるが、キャンプで作業をしていたロミリーはマン博士が仕掛けた爆弾の犠牲になってしまう。
マン博士はレインジャーを奪って軌道上のエンデュランスを奪取しようと惑星外へ離脱する。
クーパーとアメリア、TARS、CASEは別の着陸船ランダーで彼を追跡する。
マン博士はクーパーらに先んじてエンデュランスにランデブーし、手動でドッキングを強行した上に再三の警告を受けたにも関わらず強制的にハッチを開放し、ドッキング・モジュールの気密が不完全だったため急激な減圧で死亡する。
エンデュランスも事故の衝撃で本来の軌道を外れ、回転しながら氷の惑星に落下しはじめる。クーパーとTARSは決死の操縦でランダーをエンデュランスにドッキングさせ、機体を惑星大気圏外まで押し上げる。
甚大な損傷を蒙ったエンデュランスは、燃料と酸素のほとんどを失っている。地球への帰還、マーフとの再会は叶わなくなった。
クーパーとアメリアはエンデュランスをガルガンチュアに接近させ、ペンローズ過程を応用してエドマンズの惑星に向かう運動量を獲得しようと目論む。
エドマンズの惑星でプランBを遂行し、人類の絶滅を阻止するのだ。
今度は五十年後の未来に飛ぶことになるが、もはやそれを気にするものは誰もいない。
クーパーは、エンデュランスをガルガンチュアに接近させ、アメリア一人をエンデュランスに残したまま、TARSを乗せたランダー、自分を乗せたレインジャーIIを切り離し、彼女一人にミッションの全てを託す。
死重量を捨てて身軽になったエンデュランスはガルガンチュアを脱出する軌道に乗るが、クーパーとTARSはガルガンチュアへ落下していく。
クーパーは、TARSにブラックホール内部のデータを取り続けるように命じる。
その後、クーパーとTARSは”彼ら”が創造した無数の立方体が幾重にも折り重なった 4次元超立方体テサラクトの空間に辿り着く。
クーパーはそこが、マーフの部屋を通じて地球の過去、現在、未来全ての時間と連結している空間であると気付く。
クーパーは重量波を操作して本棚から本を落とす等して過去のマーフと交信を試みるが、それでも娘を置いてミッションに出発する自分の過去を変えることはできない。
焦る中、TARSが放った一言により彼は自身が過去を変えるためではなく、未来を変えるためにこの空間に送られたことに気づく。
クーパーはTARSに収集させた特異点のデータを、現在のマーフのアナログ時計の秒針を使ったモールス信号で表現する。
彼女にそのデータの真意が理解できるのか?とTARSは疑うが、クーパーは「あいつはただの女の子じゃない。俺の娘だ」とだけ答えデータを送り続ける。
旧家に戻ったマーフは、幼い頃に部屋で起こった重力現象が父親からのメッセージだったことに気付く。
秒針の動きからそれをモールス信号だと紐解き、その特異点のデータを使い、マーフはブランド教授が成し得なかった重力問題に解を見つける。
その瞬間、テサラクトが閉鎖し始めクーパーは土星に着いたときに入ったワームホールの中に吸い込まれる。
クーパーは土星の軌道上に建造された巨大スペースコロニー内部の病室で目覚める。
そのコロニーの名前はクーパー・ステーション。
彼は宇宙に放り出され漂流中にたまたま探索中だった宇宙船に発見され、酸素の切れる直前にTARS共々救助されていた。
マーフの功績でスペースコロニーの建造と打ち上げが成功し地球の人類が救済されたのだ。
コロニーにはマーフの功績を称え、彼女がかつて地球に住んでいた頃の家が再現されていた。
クーパーはコロニーの病室で年老いたマーフと彼女の大勢の子や孫たちとともに再会を果たす。
マーフは約束を果たしたクーパーを、エドマンズの惑星へ一人で向かったアメリアを捜索しに行くよう、優しく諭す。
クーパーは修理したTARSとともに小型宇宙船に乗ってコロニーを後にする。
memo
■Interstellar - Timeline
■「Do Not Go Gentle Into That Good Night」 Dylan Thomas
Do not go gentle into that good night,
Old age should burn and rave at close of day;
Rage, rage against the dying of the light.
Though wise men at their end know dark is right,
Because their words have forked no lightning they
Do not go gentle into that good night.
Good men, the last wave by, crying how bright
Their frail deeds might have danced in a green bay,
Rage, rage against the dying of the light.
Wild men who caught and sang the sun in flight,
And learn, too late, they grieved it on its way,
Do not go gentle into that good night.
Grave men, near death, who see with blinding sight
Blind eyes could blaze like meteors and be gay,
Rage, rage against the dying of the light.
And you, my father, there on that sad height,
Curse, bless me now with your fierce tears, I pray.
Do not go gentle into that good night.
Rage, rage against the dying of the light.
「そのここちのよい夜の中におとなしく入りこんではいけない」
老年はその人生の終わりにこそ燃えあがり怒り狂うべきだ。
死に絶えゆく光に対して、怒れ!怒れ!
賢者たちは死のきわにあるときにこそ、その闇が正しいことを知りながらも
彼らの言葉が一度も閃光を切り裂くことがなかったからこそ
彼らはここちのよい夜の中におとなしく入っていきやしない。
善人たちよ。
碧(みどり)なす浜辺で、わたしたちは此処で儚なげな踊りを踊ったのかも知れぬと
泣き叫びながらも、最後に押し寄せてくる強大な波に打たれながら
怒れ!怒れ!
気の荒い人々よ。
天(あま)翔る太陽をしっかりと捉えて、貴方がたはそれを謳いあげそして学ぶことだろう。
太陽はあまりに遅いがゆえに貴方がたが深く悲しんだとしても
あのここちのよい夜の中におとなしく入りこんではいけない。
真面目な人たちよ。
見えなくなりつつある目がかつては流星のようにぎらついて明るくありえたことを
そのことをもう一度 もう一度思い出しながら、そして
死に絶えゆく光に対して 怒れ!怒れ!
そして貴方、わたしの父よ。
その悲しみの絶頂で どうか今 貴方の激烈な涙でわたしを呪い祝福してください。
あのここちのよい夜のなかにおとなしく入りこんではいけない。
死に絶えゆく光に向かって怒れ!怒れ!怒れ!!
☆☆☆GGのつぶやき
細かい映画の整合性はともかく、これが「ノーラン映画」の醍醐味なのだと愉しんだが勝ち。
もう一つの成果として、ディラン・トマスの詩集を読みたくなった点をあげておこう。
「Do Not Go Gentle Into That Good Night」
・そのここちよい夜の中におとなしく入りこんではいけない
・穏やかな夜に身を任せるな
どちらの訳も、琴線に触れるいい訳詞だ。